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ルイス・アクレナイト 1

 ここはオルカ国サンドロ教会の解告室。


 黒いベールで顔を覆った女が解告室へ入って行った。

 仕切りの向こうの神官にぼそぼそと話をする。

「……では、リエッサの祖母、ルシールには右手の中指と人差し指が無いのだな?」

 神官の衣装を着けた男が言った。

「はい。ルシールの世話を受け持つ侍女が言っておりました。それに月に一度、どこからか薬が届くそうです」

「薬? 何の薬だ?」

「今、探りを入れている所で御座いますれば暫しお待ちを」

 女は言った。


「リエッサ王妃はルシール婆を頻繁に尋ねるのか?」

「その侍女が言っておりました。この所かなり頻繁だと」

「ふうん……」

 神官は頭から頭巾を被っていて顔の半分が見えない。

「その他には?」

「ジィド辺境伯がゼノン信徒や農民を引き連れ王都に向かっております。アクレナイト侯はそれに対応する様にリエッサ王妃に命じられたと」

「ジィド辺境伯が?」

「はい」

「何故?」

「真意は分かり兼ねますが、リエッサ王妃に苦情申し立てでは無いかとの噂は」

「そうか。ハアロ大将軍は?」

「様子見の状態かと」

「成程な。ところで父上からの伝言は?」

「特別承っておりません」

「シンジノアは領地へ戻ったのか?」

「はい。お戻りになられました。すぐに王都の方へ」

「シンジノアにルシール婆さんに近寄るなと言って置いてくれ」

「御意に御座ります」



 ルイスは立ち上がった。

 懐から金の入った小袋を取り出すと、それを解告窓の隙間から差し出した。

「エル。はるばるオルカ国まで済まなかった。続けてリエッサとルシール婆の動向を探ってくれ。それから父に伝言を頼む。そろそろ領地の方へ帰る積りだと。ルシール婆さんに接触はするな。遠くから見ているんだ。無理はするなよ」

 ベールを付けた女性は金を懐に仕舞うと、立ち上がって頭を下げた。

「お気遣いを有難う御座います。ルイス様。父がリエッサ王妃の馬車に轢かれて死んでしまい、それ以来まともに食事をする事すら出来ませんでした。餓死寸前で路頭に迷っていた私達親子を助けてくださったご恩は決して忘れません。あなた様のお役に立つ事が母と私の生き甲斐で御座います。イエローフォレストにお帰りになるとの事。どうかお気を付けてくださいまし」

 そう言うと女は解告室を出て行った。


 解告室を出たルイスは神官に衣服を返した。

「シンジ、いえ、ルイス様。それで確証は取れましたか?」

 神官は言った。

「ああ。取れたよ。魔女ははやりリエッサ王妃の祖母だった。ルシール婆だ。右手の中指と薬指が無かったそうだ」

 ルイスは言った。


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