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サンドラ王女 2

シンジノア達が部屋を下がって、サンドラ王女は一人物思いに沈んだ。


 あのルイス・アクレナイトが私を妻に……。

何度もそう思い返した。

おじい様に許可を頂きに行ったなんて嘘みたい……。

私の思いが神様に通じたのかしらと思った。

サンドラは人知れず頬を染める。



 長く病に臥せっていた父王が亡くなって、サンドラはいつリエッサに塔へ幽閉されるのかと生きた心地がしなかった。だが、盲目の身ではどこに逃げるにも困難は付き纏った。

自分は正にまな板の上の鯉だと思った。

生かすも殺すもリエッサの考え一つで決まる。


 そんなある日、リエッサがサンドラの部屋を訪れた。

「サンドラ王女。あなたには城を出て頂きます。あなたを引き取って面倒を見てくれるという貴族が見付かったの。あなたはそこで一生を過ごします。あなたの生活費はあなたのおじい様であるレンドル候がその貴族に支払ってくれるわ。

 あなたが城を出る事と引き換えにレンドル候は軍を分割し縮小する事に同意しました。じゃあね。さようなら。言って置くけれど大人しく静かに暮らすのよ。余計な事をしたらすぐに塔へ連れ戻して幽閉するわ。明日にでもその貴族が馬車で迎えに来るわ。その馬車に乗って行くのよ。荷物をまとめて置いてください」


「あなたを城から出す提案をしたのはルイスだから。ああ、ルイスは私の婚約者よ。すごく素敵で頭がいいの。レンドルの牙を抜くのにあなたを利用させてもらったのよ。……あなたもこの先ずっと私に怯えて暮らさなくて済むのだから、あなたにとってもいい提案よね」


 彼女は一方的にそう言って去って行った。

息を詰めて彼女の言葉を聞いていたサンドラはばたんとドアが閉まると大きな息を吐いた。


元々リエッサはサンドラ王女など眼中に無かった。いても何の役にも立たないし毒にも薬にもならないと感じていたのである。

無能な王女。

リエッサはそう公言して憚らなかった。

サンドラ王女はそれを甘んじて受けていた。



 数日後の夜、

その貴族の寄越した数人の兵士に守られて城をこっそりと出た。

馬車の内装はとても上質だった。ビロードで覆われた椅子はしっかりとしていて快適だった。

「外見は質素な辻馬車みたいなのに中身はすごく上等ですね」

ナンシーが言った。

侍女と乳母と家庭教師を連れて2日間馬車に揺られた。

辿り着いた場所がノニ子爵の屋敷だった。



一度、ルイス・アクレナイトがサンドラ王女の様子を見にノニ子爵を訪ねた事があった。

サンドラ王女は部屋へ入って来た大きな騎士を見上げた。ぼんやりとした光の加減でそこに人がいる事が分かった。その騎士の周囲に光のオーラが見えた。明るくて温かい光だった。

 思わず光の騎士だと思った。



「サンドラ王女様。ご機嫌麗しゅう。私はルイス・アクレナイトです」

光の騎士はそう言った。

「ああ、この方がリエッサ王妃の婚約者なのね」

そう思った。


 ぽつぽつと話をした。

 彼はリエッサ王妃の婚約者だから警戒を怠らなかった。いつのも様に無表情で愚鈍な振りをした。そんな自分にルイスは温かい言葉を掛けてくれた。

 帰る間際にルイスはサンドラの手を取り、大きな手で包んでくれた。

とても温かい手だった。


「いつまでもお元気で。サンドラ王女」

 そう言葉を残して光の騎士は去って行った。

 その言葉が忘れられない。

 

彼が王になったなら、この国も少しは変わるかも知れないと感じた。

ルイスが次期国王になる事を祈ろうと思った。何故なら彼のお陰で自分はあの城から逃げる事が出来たのだから。リエッサ王妃の機嫌を伺い、命の心配をしながらびくびくと暮らす事をしなくて済むのだから。

そう思った。



 開いた窓から新しい風が吹き込んで来た。

ようやく私の風がやって来たのだと感じた。

風は冷たい。けれど、風を掴んで私はしぶとく生きて行く。

御父上、御母上、見ていてください。

仇はきっと取ります。


サンドラは小さく呟いた。



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