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朝議

朝議である。


重大な決議があるらしく、宰相を始め国の重臣達が集まって来ていた。

ハアロ大将軍とジョージ・アクレナイトもいる。

皆難しい顔をしていた。

ルシールは面々を見渡して、ぎょっとする。

一体何を話し合おうと言うのか。


「では、重臣達が昨日一堂に会して決議致しましたことをお伝えいたします」

宰相が言った。


「えー。ごほん。リエッサ様には暫くご休養を頂いてその間の国務は私と重臣達で執り行った方が良いという事になりました。これはもう決定事項です。あなた様のお父上であるハアロ大将軍の了承も得ております」

ルシールはまさかと思い将軍を見る。

将軍は苦い顔で頷く。


「つきましては王宮医の勧める薬餌療法及び鍼灸療法を以ってその物忘れの病を治療すると同時にゼノン神殿で悪魔払いを実施するという事に決まりました」

宰相はすらすらと言った。

「はあ?」

ルシールは驚いた。

「な、何を馬鹿な事を言っている。どうして私が悪魔祓いなど」

「あなた様の物忘れの原因はきっとジィド伯の呪いであろうと……」

宰相は深刻な顔で言う。

「ふ、ふざけるな!!」


「ふざけてはおりません。重臣の名前も忘れて仕舞うなどあり得ません! それが呪いで無くて何だと言うのですか!」

国務大臣が言った。

「失礼な! 覚えておる! 其方の名前はエイドリアン・イェールであろう!」

「リエッサ王妃、誠に失礼ながらイェールは私で御座います」

財務大臣が言った。

「国務大臣はイェーツ侯爵で御座います」

「くっ……。ええい!!紛らわしい!」


ハアロ大将軍は労わる様に我が娘を見る。

「……リエッサ王妃。儂もその方がいいのではと思った次第じゃ。最近の王妃はおかしい。その健忘はいくら何でも有り得ない。これはやはりジィド伯の呪いであろうと、いや、それ以外考えられぬ。それに王宮医が言っておったが、何やら原因不明の湿疹も出来ているという事ではないか」

ルシールは首元に手をやる。


「お父上……」

「大丈夫じゃ。呪いを解いて貰って養生すれば良くなる。国政の事は儂らに任せてゆっくりと休養をするが良い」

「……」


「えー。ごほん。リエッサ王妃。これ以降、リエッサ王妃のお決めになる事は、全て我々が目を通してからという事になりますので、ご了承の程を」

「ええい! うるさい! 私は王妃じゃ!! 私が決めるのじゃ」

王妃がいくらぎゃあぎゃあ騒いでも重臣達は「では、次の議題を」などと言って取り合わなかった。

リエッサ王妃の余りの見苦しさにハアロ大将軍の我慢が限界に近付く。

「王妃!!いい加減にされよ!」

将軍が大喝する。


 辺りはしんとなる。

ルシールはわなわなと震えながら唇を噛んだ。

「リエッサ王妃。あまり騒がれますと、退位勧告と言う事にもなりますれば……ここはひとつ我らが申し出を御受けになり」

宰相がこっそりと耳打ちした。

「うるさい! ブラックフォレスト王国侵攻はどうした?! アクレナイトは何をやっておる!」

ジョージは困惑した顔でリエッサを見る。

「何故、侵攻など?」

「金を」

「金?」

「王妃! いい加減にしなさい! おい!王妃を連れて行け! 部屋に閉じ込めて置け! 後で儂が行く!」

ハアロ大将軍が叫んで、衛兵が「はっ」と駆け寄る。



「では皆様。次の議題はカーラ地方の現状報告について視察を終えたヤクーツク司令官からの報告が……」

宰相は平静な顔でサクサクと話を進める。


 ドアから出るとルシールは衛兵の腕を振り解いた。

「触るな!無礼であろう!」

「申し訳が御座いません。しかし、ハアロ将軍から王妃を部屋へと」

「自分で行くわ! 胸糞悪い!」

王妃はそう言うとさっさと歩いて行ってしまった。


そんな王妃の姿を物陰からじっと見ているひとりの男がいた。

男は王妃が一人になった所を見計らって、彼女を追い掛け声を掛けた。

「リエッサ王妃。何かお困りで御座いますか?」

ルシールは後ろを振り返る。

そこには若い近衛兵が立っていた。


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