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フロレス武官 3

 トントンとドアがノックされた。

フロレスは「はい」と答えた。

「失礼します」と言って入って来たのはサツキナ姫だった。

フロレスは慌てて立ち上がった。

「どうそ。座ってください」

サツキナはそう言った。そして自分も椅子に座った。


「さっきのあなたの言葉から、きっとあなたなら分かってくれると思って。あなたにお願いがあって来たの」

サツキナは言った。

「私がオルカ国のシャーク宰相の次男様と結婚すると言うのはリエッサ王妃に伝えて貰っても構いませんが、シンジノア様の名前をお出しするのは止めて欲しいのです。お名前は知らないと言ってください」

フロレス武官は黙ってサツキナ姫を見詰めた。


「何故ならシンジノア・シャーク様とシンジノア・アクレナイト様は同一人物だからです」

「……」

「ジョージ様やルイス様、シンジノア様にご迷惑が掛かってしまいます」

「……」



 随分時間が過ぎてフロレス武官は言った。

「何故、シンジノア様には2つも名前があるのですか?」

「それは私からはご説明できません。直接アクレナイト侯にお聞きください。本当はリエッサ王妃とルイス様の結婚式があるまでは黙っていてくれと言われたのですが、先程、もう結婚式は無くなったと伺いましたから。アクレナイト侯が難しい立場にお立ちになる事はどうしても避けたいと思います。いずれはばれてしまうのですが、今暫くは」

そう言ってサツキナは深々と頭を下げた。


フロレス武官は慌てて止めた。

「頭を上げてください。私になど頭を下げられてはいけません。

……分かりました。私からは言いません。絶対に言いません。それを御約束致します。

……そうですか。サツキナ姫がシンシノア様と……」

「心からお祝いを申し上げます。……我が国の王妃が愚かな事をしてしまい、私からお詫びの言葉を申し上げます。側近の私が至らない所為で……あの様な事を……」

フロレス武官は涙が込み上げて来た。

ぽろぽろと泣きながら「良かった。シンジノア殿が……。本当に良かった。本当に彼は可哀想で……あんな王妃の思い込みに巻き込まれて……ずっと我慢して……」と言った。


フロレスは泣きながら自分はそーとーやられているのだと感じたのだった。



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