出発
翌日
精霊界 スピリル王国 スピリルパレス とある部屋
中央に四角い転移装置とそれを中心に魔法陣の描かれている部屋に4人の精霊がいた。
「いいか。あちらに行ったら波浦と名乗る男と合流するんだ」
「ナミウラ?」
最初騎士服で向かおうとしたらジルドとイオズに速攻で却下されて花模様のあるグレーのパーカーとデニムに着替えさせられた。なんで持ってるんだろう…。と思いつつもセルトの説明を聞いている。
「事情により数年ほど前からあちらに居住を構えている魔術師団長だ。彼が暫くお前の保護者として協力してくれることになった」
魔術師団長?!たしか100年以上生きている精霊じゃなかったっけ、そんなすごい精霊が私の保護者…。
「あ、身体的特徴は?」
今までの公的行事に魔術師団長は式神を使いとして出席していた。だから私は会ったことがなく、人間界に居住していることも初耳だった。まあ基本的に出張や遠征している騎士団と防衛魔法結界や改良実験を行っている魔術師団はあまり関わる機会がないから仕方ない。だから当然のことを質問しただけのはずだ。
(…あれ?)
何とも言えない様子のセルトとイオズ。渋い顔をするジルド。みんな私から目をそらして小声で話し始めた。なんで?
「三人ともどうしたの?」
しばらくしてセルトがどこか悟ったような目でポンっと両手を私の両肩に置く。
「……………………とりあえず桃色系統の長髪で女性姿だが声が低いやつだ。わかったな?分かったと言え」
「わ、わかった!」
念押しするように言われ、頷くとセルトは私の頭を撫でる。
「気をつけろよ」
「今度の休みに遊びに行くからね!」
「俺もたまに顔を出す」
「ーうん!」
激励を貰った私は陣に立つと振り返って大きく手を振る。
「セルト、ジルド、イオズ!行ってきまー」
バチバチッ!
「へ?!」
「バグダウンか…!」
突如転移陣の周りを黒い稲妻が私を囲うように現れる。咄嗟に抜け出そうとしても何故か足が固定されたように動かせない。
(バグダウン…。スキルメカを使う際に時々反発や予想外のことが起こる現象…。なぜ重要職に着く精霊が使用する機械に起こるんだ…)
ジルドはイオズと共にバグダウンを抑えようとしながらも考察をする。
通常、バグダウンが発生するのは市販に売られている霊力電化製品や魔力電化製品だ。宮殿に設置されている異界転移装置は基本的に精霊長などの職についている精霊のみが使える。
(リートが今日人間界へ渡ることを知っているのは俺達と騎士団の者だけ…細工をするならば騎士団の奴らか…)
「リート、早くこちらに」
「行こうとしてるけどなぜか足が動かせない!」
「足止めのスキルか…!」
未だバチバチと黒い稲妻が転移陣の周りを囲っていてジルドとイオズがスキルで抑えようとしているのが狭まる視界の中に映り込む。
「ユウ!」
私はセルトが伸ばした手を掴もうとしたが、転移装置が作動して掴めなかった。
精霊界は自然が多く、発電所などはない。
その代わりの動力源は魔力と霊力である。
人間界で発明されたものを改造して精霊用にしている(これがスキルメカ)
端末もあるが、音楽か連絡以外使えない。が、人間界の二次創作好きな精霊がちゃんねるも作ったから一部の精霊たちの溜まり場になってる。
人間界のネットにもつながるが視聴だけで書き込んだりはできない。