EP.14 operation:strike
とある司令室…
緊迫した空気が部屋中を満たし、人々が間髪入れずに声を上げる。床に散らばった資料なんかはお構い無しに、次々と口頭で文字が飛び交う。
???「状況は?」
???「ゲイツらからの報告で、ザッケハルトが計画の最終段階へと移行したようです。」
リアルタイムで発生中の緊急事態がこの状況をつくりだしていたようだ。そして、あちら側の情報がこちらにも伝えられてたということだろう。あちら側の通信者はゲイツという者らしい。
???「最近の定期報告から怪しいとは思っていたが、よもや計画を早回ししやがったとはな。各員に告ぐ。当初の指針通り、operation:STRIKEを発令する。空軍に爆撃機の要請をしろ。繰り返す、operation:STRIKEを発令する。」
彼は、予定通りとは行かなかったものの、万が一に備えて用意していた作戦を発令した。彼自身も、この決定には少々苦虫を噛んだような顔をしている。と、その時だった。
???「司令長、ゲイツから通信です。」
件の通信者ゲイツがこちらに向けて再び通信を送ったらしい。司令長と呼ばれた男は通信を受け取った司令官に、通信を繋ぐよう指示する。少しの間の後、ジジジというノイズが流れ、次第に音声がはっきりと聞こえてくる。
司令長と呼ばれた男「聞こえるか、ゲイツ」
???「司令長。報告通り、奴らに動きがありました。」
司令長と呼ばれた男「確認した。すでに潜伏させてある工作員には指令を出してある。お前たちはマニュアル通り、被験体を回収し、避難しろ。空軍に要請して、帰還用のヘリを向かわせる。時間はあまりないぞ。」
ゲイツと呼ばれた者「了解。」
司令長と呼ばれた男は通信を切る。そうして、司令室内の各員に指示を出していくのであった。
・・・・・
一方、無線の相手であるゲイツと呼ばれた者は通信機を切り、出された指示通りに動こうとしていた。しかして、その者の正体は…
アスラナ「本部からの連絡は?」
ゼンク「operation:STRIKEだ。」
アスラナ「やっぱりか。ゼンク、他の奴らに指示しろ。道中で、あの子たちの保護も行う。間に合ってくれ!」
整えられていない緑髪に、クマのひどい目。局長の一人ゼンクだった。彼は指示の内容をアスラナに共有していたのだった。そして、アスラナは指示の把握後、作戦通りに被験体を回収するために動き出そうとした。
しかし、現実は無常にも、試練なしでは越えられない。目的地を目指して歩いている最中であった。突如、彼らの足取りは止まる。何故か。彼らの視線の先には、ぞろぞろと守衛と現れる。その中から、異質にも白衣に身を包んだ男が出てくる。
研究員「おやおや?こんなところで珍しいですね。何かようですか?ここはお二方の管轄ではないはずですが?」
アスラナ「緊急の用があって来た。通してもらうぞ。」
研究員「残念ながら、それはできません。ザッケハルト局長からお二方の侵入を許可しないと。」
そう言って、研究員は二人の立ち入る隙を一切無くした。彼らは、余裕のない状況で、焦る気持ちを抑えることができない。
ゼンク「侵入って、随分なこと言ってくれるじゃないか。まるで、僕たちが敵みたいな言い方をするんだね。」
研究員「ええ、そう言っているのです。」
その言葉の後、研究員は手を挙げる。すると、冷たい鉄の音が、一斉にこちらに向けられた。彼らは固唾を飲む。危機的状況を乗り越えるために、必死に頭を動かすが、一縷ほども解決の糸口が見えてこない。
ゼンク「どういうことだい?僕たちが敵って。」
研究員「ザッケハルト支局長はすでに気づいておられましたよ。あなたたちがプロジェクトに参加する5年前から。」
アスラナ「何だと?」
研究員「逆にそちらはお気づきになっておられなかったようですね。"猟犬"の名は伊達ですか?」
アスラナ「何の話だ、猟犬って?」
研究員「とぼけるのはよしてください。アースクウェン共和連邦/連邦特務機関Hounds Of Nation/通称:猟犬。まさか、自分たちの所属している組織の通り名をご存じないわけではないですよね。」
思わず、彼らの心臓がドクリと跳ねる。自分たちの素性も把握されてしまっていたのだ。これ以上の御託は通用しない。と、何か注意をそらそうとした時だった。おかしい。だとしたら、なぜ自分たちを生かしておいたのか。邪魔にしかならないのであれば消すのが妥当。にも関わらず、あまつさえ彼らを局長のポストにまで就かせた。その目的が理解できない。そこで、ゼンクは研究員に問うた。
ゼンク「どうして、僕たちを生かした?」
すると、意外にもあっさり答えは返ってくるもので
研究員「簡単な話、あなた方は疑われないためにもこちらのプロジェクトに協力せざるを得なかった。あなた方は優秀だ。見事にプロトタイプを短期間で作り上げてみせた。結論、私はあなた方の立場を利用して、プロジェクトを進めていただけなのです。それに、局長の座にまで就かせればこちらがあなた方の対策をしていないとおもいこませることができた。お陰で、まんまと私たちのやりたいように動かせてもらいましたよ。」
現に、彼らはその点に関して全くの不注意だった。被検体の研究にうつつを抜かしていたのか、そんなことは今となってはもうどうにもならない。それにしても、局長の座にまで就かせることを許容するとは。いや、それでも気になる点はある。彼らが、そこまで心臓部に接近してもたどり着くことのできなかった謎。
研究員「さあ、おしゃべりはもういいでしょう。さっさと死んでください。」
アスラナ「最後に一つ聞かせてくれ。」
研究員「時間稼ぎは嫌いです。」
アスラナ「最後だからいいだろう。」
そうして尋ねる。
アスラナ「私たちはこの計画に依頼主がいることまでは把握している。けど、その正体までは掴めなかった。答えろ、お前らを動かしている頭目は誰だ。」
研究員は深くため息をつく。張り詰めた空気が肩にどっしりと覆い被さり、鼓動は早くなる。すると、研究員は鬱陶しそうに口を開く。
研究員「教えるわけないでしょう。利用するため、ある程度の情報は教えたとはいえ、心臓とも言える情報を渡してしまってはいけませんからね。」
ゼンク「やっぱり、どれだけ探してもあと一歩のところで詰んでたわけだ。」
研究員「そんなことはどうでもいいんです。私たちはあなた方に死んで欲しいだけなのです。」
アスラナ「まあ、こんだけやれば、十分だろ。」
その瞬間、耳をつんざくような爆発音。それとほぼ同時、前の守衛一人の頭が赤いものを噴き出して倒れる。守衛たちは狼狽えている。が、どういうわけか二人は無表情を保っている。そして、研究員は見えていた。わずかながら、曲がり角から鈍く光る銃口が覗いていたことに。アスラナはゼンクに対し、目配せを行う。その意図を汲んだゼンクがコクリと頷いた。
アスラナ「総員、射撃用意!」
その合図を皮切りに、曲がり角から別の守衛たちが現れる。一様に小銃を構えて、照準は敵の方を捉えている。突然の刺客の出現は、相手を動揺させるには十分すぎた。そうしている間に、とうとう戦いの火蓋が切られた。猛々しく、女性の声が空間を震わせた。
アスラナ「撃て!」
コンマ0秒にも等しい。無数の小規模炸裂が鼓膜を揺らした。肉を貫き、骨を砕き、内臓が潰れる。悲痛な断末魔は踏み躙られ、次の的へと銃口が向けられる。鉄と肉の焼ける臭いが鼻をつくまで、そう時間はかからなかった。あたりは血をぶち撒けて、 生気なく倒れる死骸ばかりが残った。と、二人の元に一人の守衛が駆け寄ってくる。
守衛「ゲイツ三等官。」
ゼンク「全員、司令はすでに伝わっているな。」
守衛「現在、各員を被験体奪取に向かわせております。」
ゼンク「よし、ならばこの部隊はゼロ・ポイントの奪取に向かう。」
守衛「は。」
すると、二人は別の守衛からそれぞれ装備を受け取った。そして、作戦開始のため、行動するのであった。




