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12話 君臨せし忌み子たち Part.3

「あんまり変わってない。」


 とその言葉を言った瞬間、俺を含めた皆がその言葉に拍子抜けした。あのケイトでさえも「ほへぇ?」と素っ頓狂な声を漏らした。


「あんまり変わってないってどういうことなんクロ姉?」

「そのままの意味。対してできるようになったこともないし、何も変わってないってこと。」

「なんか、肩の力が一気に抜けた気がしたんだけど〜。」

「何と言うか、期待して損したって言うのは違うけど〜ね?」

「みんな変わっちまってるからなぁ。逆に変わってないに違和感があるんだよなぁ。」


 俺も、みんなと同じことを思っている。謎のランクIと言う位置付け。彼女の言う通りであれば、何も変わらなかったと言う意味なのだろうか。何にせよ、変わっていないなら変わっていないで安心する。ほっと胸を撫で下ろし、息をついた。


「じゃあ、最後パパの番だね。」

「そうだね。」


 俺だけ1人何も言わないと言う道理はない。人影のことは伏せておきながら、自分の変化について語った。自分の名前や身体能力,炎,電気の制御に至るまで、知る限りのことを話した。


「ちょっと引くね。」

「1人だけやたらにバケモノがいるじゃない。」

「以前から父さんだけ並外れてたけど、今回のはそう言う次元じゃないわね。」

「あ、あはは…。」


 皆は呆けていたり、混乱していたりと反応はそれぞれ。少し整理するには情報が多すぎたらしい。こうなる予想はついていたものの、実際に目の当たりにすると不思議なものだ。


「でも不思議ね。父さんだけ、ランクが分からないだなんて。私たちは知らされて、父さんは知らされないなんてことあるのかしら。」

「そりゃ俺も思ったけどよぉ、こんなにもヤバくなったってことでランクがつけられてねぇってのが妥当じゃねぇか?」

「確かにそれなら納得できるわね。」

「単純に言うのを忘れてるだけやったりせんの?」

「たぶんそんなことない。」

「僕たちと父さんの違いってウェプノ兄さんが言ったことぐらいだし、考えられるとしたらそれしか…。」

「すまない、ゼロ。局長がランクを言うのを忘れていたそうだ。」


 突然、研究員が食堂の方に入ってきたと思えば、タイミングよく答えがやってきた。それに対して、またしても拍子抜けした全員が思わず、ツッコミを入れたくなった。今日は…とても賑やかだなぁとそんなことがふと頭の中に浮かんだ。


「ゼロ、君のランクはIだ。」


 突如として、辺りは静まり返り、驚愕した。そんな俺たちを横目に研究員は去っていった。


「じゃあ、なんでクロはランクIなの?」


 当然の疑問だ。自画自賛することになるが、俺の異能はこの場にいる皆のものと比べれば異様すぎる。そして、インテラは言っていた。超越率と異能の使用精度を基準にランクはつけられる。俺の超越率は100%以上。ならば、クロは一体どのくらいなのだろうか。


「クロ、本当に何も知らないんだね?」

「うん。改良はされてるけど、具体的に何がどうなったかまでは分からない。」


 そんなことあるのだろうか。彼女の言葉は無表情と淡々とした物言いからか、嘘偽りないように思える。口止めされていると言う様子もない。であれば、ただ単に知らされていないだけと言うことになるが…。やはり腑に落ちない。彼女のことは昔から見てきたが、しばしば掴みどころのないように感じていた。それは、あのザッケハルトのものと少し似ていた。考えても、今は結論が出ない。


「とりあえず、ご飯食べようか。」

「そうね、私たち食堂に来たのに何も食べてなかったわね。」


 そうして、俺たちはおのおの朝食をとって食べ始める。その様子を見て、日常が戻ってきたのだと実感した。ご飯を食べて、喋り合って、笑い合う。そんないつもの光景。でも、今の俺にとっては、スープを飲んだ時よりも心が温まるものになっている。


「パパ、何でそんなにニコニコしてるの?」


 そう言われて、俺は自分の顔を触った。自分でも気づかない内に、笑顔が溢れていたのだ。その様子を皆は不思議そうに見ている。長い間、ここまで感情を表に出すことがなかったもので、新鮮ささえ感じてしまう。


「いや、いつもの光景って良いなって。」

「え、どうしたの、本当に?」

「何だか怖いわ、お父さんがそんなこと言うだなんて。」

「何かあったの?」

「いや、別に。」


 そう言って、食事を続ける。今はこの思いを享受していたい。噛み締めて、味わうように。舌の上で味が踊るみたいに、感情が心の中で満たされる。心地いい瞬間を逃さないように、ゆっくりと丁寧に。最後の一口まで味わい尽くすとそんな幸せな食事を終えた。

 今日は、本当に賑やかだ。

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