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12話 君臨せし忌み子たち Part.2

「じゃあ、私いいかしら?」


 次はベティ。甘い芳香と艶めく髪,端正な顔立ち,透き通った声。以前よりもさらに磨きがかかったように思える。


「私のランクは+Aで、名前はハニエル。」


 ハニエル。美を司る天使。「神の栄光」や「神の優雅」と称され、飴と鞭を兼ね備えた存在だとも言えるだろう。彼女の性格も実際にはそれと同じだ。


「えっとね、私ね、地球上で生きてる五感の一つでも持つ生物すべてを魅了することができるらしいの。」

「何、その面白い異能!?」

「え〜、そんなに面白いかな〜?」

「いや、これかなりすげぇ異能じゃねぇか?」

「どういうこと?」

「つまりよぉ、実質何でも使役し放題なんじゃねぇか?」

「うん、大人の人に聞いたらそうだって。哺乳類に限らず、魚とかトカゲ,カニとかもいけるんだって。」


 つまりは、一種の洗脳なのではないのだろうか。そう考えると、ベティの持つ異能は実はとても危険なものだったりするのかもしれない。能ある鷹は爪を隠すと言うが、まさかこんなにも鋭い爪を隠していたとは。


「じ、じゃあ、次僕の番だね。」

 

 そう言って、少し不安そうに声をあげたのはマスラー。気のせいだろうか。彼の体格に厚みが増したような…。


「僕は、同じく+Aで、な、名前がミカエル。」


 ミカエルとはまた随分なビッグネームだが、果たしてその共通点とは一体…。


「ぼ、僕は単純にもっと、筋力が上がっただけだって、言われて。」

「たしかに、言われてみりゃ随分とデカくなってるな。」

「それにガッチリしてるみたいな?バスケットボールに空気をパンパンにいれたみたいな感じ。おもしろ〜。」


 と、皆それぞれ彼の体をまじまじと見ては触ったりしていて、興味深そうにしている。そんな中、彼は緊張と恥ずかしさで今にも倒れそうだ。なんだか可哀想に見えたので、俺は一つ咳払いを挟む。


「こらこらこら。あまり、マスラーを困らせてはいけないよ。」


 そう言うと、ハッと我に返ったかのように皆がその手を止め、彼に謝った。彼の顔がとてつもなく赤くなり、ヒーラが慌てて駆け寄ってしまうといった始末だ。

 少し時間を経て、落ち着きを取り戻した頃。ウェプノが口を開く。


「じゃあ、まぁ、俺行くか?」

「次はウェプノ兄さんか。」

「何々?」


 羨望の眼差しを向けられた彼は、頬を指で軽く搔き、照れたように頬を赤らめる。そして、同じように咳払いをした後、言葉を続けた。


「俺はランクS、名前はカマエルになった。」

「カマエルか。ウェプノ兄さんに似てるような気がするわ。」

「そうね。全部が全部ってわけじゃないけど、まぁ、こいつが名乗るに問題にはならないくらいじゃないかしら。」

「おいテラ姉、少し辛辣じゃねぇか?」

「さっきまで泣いてたやつが、文句言うんじゃないわよ、まったく…。」


 揚げ足を取られた彼は、少しムスッとした表情でインテラの方を見る。その様子はまさに姉に叱られた弟だった。


「でまぁ、話に戻るが、俺もマスラーと大体はおんなじ感じ、能力がただ単に向上したってとこだ。違う点で言えば…」


 そう言うと、彼の髪や瞳がだんだんと赤みを帯びていくのが分かる。それは、あの実験で見たウェプノの姿。今は制御できているらしく、前のような獰猛さはない。


「安心しな。あれから俺も少しずつこの状態に慣れていったんだ。前みたいなヘマはしねぇよ。」

「それならいいんだけどね。」


 すると、その話に興味を持ったのかサイコルが尋ねてくる。


「ん、なんの話?」

「気にすんな。」

「別に大したことじゃないよ。」


 あれはもう終わったことであり、そこまでして言うことでもないだろう。それに言ってしまえば殺し合いのようなことをしていたのだ。もしかしたら、サイコルが怒ってしまうかもしれない。


「なら、いいけど…。」


 サイコルはどこか腑に落ちないような視線を向けている。それは果たして、俺たちの心の中を覗いているからなのかは分からない。


「とまあ、髪とか目が紅くなっちまうんだ。理由はよく分かんねーけど、なんか血流が良くなりすぎて滲んじまう?らしい。」

「ちょっと、カッコええな。」

「でも、ウェプノ兄さんに紅って合ってない。」


 そう言われて、少ししょぼんとしてしまう。ちなみに言った張本人はクロだった。無表情に冷たく言い放つ彼女の言葉は心にくるものがある。ウェプノを見てみれば、何やら呟いている。


「俺だって、別に好きで紅いわけじゃねぇんだし。もともと緑が好きなんだし。」


 とそんな彼を横目にインテラが話を続け出した。


「じゃあ、次は私の番ね。」

「待ってましたテラ姉!」

「私もランクはS。名前はラジエル。私、どっちかって言ったら記憶の方が得意だったみたい。だから、そっちを中心に向上させられた。今は前みたいに情報処理が遅れることも無くなったわ。つまり、脳への疲労が軽減されたってところかしら。」

「それは良かったです。以前はとても辛そうでしたし、私も心配していました。」

「そうだよ、いつもフラフラで。」

「心配かけたみたいでごめんなさいね。」


 インテラは、あれこれと叱ったり、説教したりと厳しいところが多い。けれども、それ以上に俺たちを想ってくれていると分かるほど、優しいのだ。だからこそ、みんなインテラのまるで母親のように慕っている。今、この場で誰もがそれに喜びを感じずにはいられないだろう。かく言う俺もその1人だ。


「じゃあ、次僕が行こうか。」


 そう言ったのはヒーラ。落ち着いた表情で淡々と話し始める。


「僕はランクB、ラファエル。基本は変わらないかな。医療器具なしで治療ができるようになってたらよかったんだけど。ああ、パッと見て病気や症状が分かるようにはなったかな。」

「それってすごいことじゃないかしら?」

「う、うん。普通じゃできないことだと、思う。」

「そう言ってくれると嬉しいよ。」


 彼は穏やかな表情を浮かべていた。大人の余裕を感じさせる。ふと、白衣が似合うと思った。デスクに向かってカルテを書く。そんな医者の姿を彼に重ねた。


「じゃ、次私。」


 相変わらずの無表情で声を発したのはクロ。一見何も変わっていないように見える。でも、気のせいだろうか。彼女の目の奥にはノイズがかかっているように見えた。


「私はランクI、ルシファーだって。」

「ランクI?」

「ここにきて初めてのランク!」

「Sは分かりますが、Iとは聞いたことがありません。」

「確かに、俺も見たことも聞いたこともないね。」


 その位置付けが一体何を意味するのだろうか。クロには何か俺たちの知り得ない秘密があるような。


「私のできることは…」


 そう言って、少しの沈黙が続く。皆は固唾を飲んで、今か今かと待ち望む。そして、彼女は告げる。その驚愕の真実を…

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