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第1話 小さくも幸せを感じた者は、また覚悟して笑う

 真っ暗な空間で、私はまばゆい光に向いている。ワクワクする感情や、前に経験した事で生まれた覚悟が顔をひきつらせるが、どうしても口は笑みをこぼす。


「今一度聞きますが、本当によろしいですか? 」


 問いただす者の姿は見えないが、三度目の同じ質問に喰い気味に答えた。


「もちろんだよ。覚悟だろ? できている」


 私が想うのは先立った妻と波瀾万丈だったらしい息子二人のことだ。息子達は今も元気だろうか、もしかしたら妻とまた暮らせるのではないか。

そんな思いを募らせながら、光に向かって前へ進む。


「では、行ってらっしゃい。あなたには幸せなことも辛いこともあるでしょうが、せっかくですから楽しんでくdーー」

「わかったわかった。もう行くよ」


 まばゆい光に包まれて一気に感情は高まるが、次の瞬間にはそれが消えた。


「……。」

 

 いつからこうだったのか、真っ暗で温かい。無性に心地いいので、少し眠る。


「あなたはッ! なんでそんなに! 」


 なんだか騒がしくて目が覚めた。何か、近くで大きな音が聞こえる。一つは真上で、もう一つはーー。


「止めて! 」


 とても強い衝撃があった。痛い。とても痛い。


「俺は育てねぇぞ。お前があの男と寝てできた子供だろ!

 ふざけるな! 」

「痛い! 止めて! 」


 また強い衝撃だ。痛いし、少し寒い。


「誰か助けて! 」

「待てマオ! 何故戻ってきた! 何故おろさない! 何で俺にこんな事……。」


 痛いし寒いし、色々な音が聞こえて、それに振動が激しい。落ち着かない。心地よくない。

無性に怒りがこみ上げて、この不快な場所からでたくなった。


「お前ら離せ! マオ! 」

「あの人が、私のお腹を殴ってきたんです! 」

「すぐ病院に行きましょう。……どうしました? 大丈夫ですか? 」

「えぇ。お腹の子が暴れてて。……何事もなくてよかった」


 不快で仕方がない。痛くて寒くて、今まで感覚があったところもなくなって、怒りと悲しみに暴れた。


 いつからか痛みもなくなって温かさを取り戻し、心地のいい場所に戻った。大きな音も衝撃もなく、変な振動も少ない。

でも時おり圧迫感があったりちょっと冷えたりしたけど、不快ではない。

 安心して眠っていた時に、強い衝撃で目を覚ました。

圧迫が強くて寒く、心地よかった所は細かな振動を繰り返している。周りの音もうるさく、また不快になった。

 しかし不快なのは周期的に起こるのか、その時がきたら暴れるが、それ以外は静かなもので安心できる。ただ、最近はその頻度が短い気がするのだ。


「明日ですねー赤ちゃん。」

「えぇ。ただ、この子の足が……」


 頭に響く高い音はなくなったが、時おり静かに音が聞こえる。

それにまた眠くなって、幸せな気持ちになる。

 どれほど経ったのか、またなにやら音が聞こえる。落ち着いた音ではなく、どこか騒がしい感じだ。


「逆さ子だから後半辛いけど、お母さんいくよ! 」

「はいいいいいッ! 」


 上から圧迫される。だけどいつもの感じじゃない。全体的に力強く縮むように周りが動き、いつもより熱く感じる。だけど……。


「足でたでた! ……ていうかその、右の太ももでた! 」


 ……明らかにいつもと違う。下がとても冷たい寒い。寒い。あと苦しい。


「踏ん張れ! もう一気に出しちゃおう! ほらもっと頑張ってお母さん! 」

「頑張ってんだよちくしょうがあああああッ!! 」

「おぉすっげ! 頭一気にーー」


 光が見える。とてもまぶしく寒い、そして痛い。あ、とても不快。


「でたーッ!! 」

「オギャさっぶ!寒いギャァアアア! さっむいちくしょうオギャアアアアアア! いってぇまぶしいオギャアアアアアア!」

「元気な女の子ですよお母さん! よし。緒切っちゃいますねー」


 寒くて痛くてもうよくわからないけど、とりあえずピリピリと何かわからない焦りを感じた。

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