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おいでやす京都、モフモフ大パニック 4

唐突なデュエル回

 来週に修学旅行を控えた11月中旬のこの日、いよいよ零士たちはピラミッドダンジョンのボスへ挑もうとしていた。

 大量の分身たちによる大捜索のおかげでマップの完成度は七割ほどにまで達し、零士たちのレベルも全員が48まで上がっている。


 超巨大な八面体のほぼ中心部。入り組んだ迷路を右へ左へと何度も遠回りさせられた先にあったのは、青い光のラインが脈打つように迸る黒曜石の大扉。

 扉の先で腕を組んで待つのは、古代エジプトのファラオの装いに身を包んだ独創的な髪形のミイラ男。その名も『名も無き決闘者』。



 このボスとの戦闘には特殊なルール、『カードバトルシステム』が適応される。

 まず、ボス部屋に入った時点で誰が『名も無き決闘者』に挑むかを決めなければならない。

 挑戦者が一人の場合はそのままバトルが開始され、仲間がいる場合は、その中から代表者を一人選び、代表者が戦う。

 他の仲間たちはカードに閉じ込められ、代表者が使う『カードデッキ』へ組み込まれる。

 カードにされた仲間は、バトル中に破壊されても死ぬことはなく、チャレンジャーが勝てばそのまま全員が解放され、負ければその中の誰かがランダムで選ばれて次のチャレンジャーになる。


 自分のデッキの内容は、自分や仲間たちの所有スキルや魔法、所持している道具、今まで倒してきたモンスターなどがカード一覧として表示され、バトル前に挑戦者がそれらの中から自由に選択してデッキを組むことができる。



 今回はボスが特殊なルールを強いてくる相手という事で、事前にダンジョン・ザ・ギャザリング(このボスの特殊ルールをモデルにしたトレーディングカードゲーム)で、仲間内で予習がてらトーナメントを行い、優勝者の零士がボスに挑むことになった。


 円形のバトルフィールドへ零士たちが足を踏み入れると、背後で扉が閉まり、名も無き決闘者が不敵な笑みを浮かべて話しかけてきた。


『待ちくたびれたZE()☆ どいつが俺に挑むチャレンジャーだ?』

「俺だ」


 零士が一歩前へ出る。

 すると、仲間たちの身体をオレンジ色の光が包み、一瞬にして彼ら彼女らの身体は5枚のカードへと変わった。


『さあ、デッキを組むといい』


 名も無き決闘者が指を鳴らすと、零士の周囲を大量のカードがズラリと囲んだ。

 仲間たちのカードとしての性能を確認し、それらを活かすためのデッキを組んでいく。

 零士がデッキを組み終えると、彼の周囲を囲んでいた大量のカードが消えて、両者の前にカードを置くための台が床からせり上がってくる。


『先手は譲るZE☆ かかってきな!』


 ボスに先手を譲られてバトル開始。デッキの上から手札を5枚引く。

 互いのライフポイントは10ずつ。先に相手のライフを0にした方が勝ちだ。


「俺のターン! ドローッ!」


 手札の阿修羅(あしゅら)案山子(かかし)(人・物質属性)をマナゾーンへ。


「俺は手札からゴブリンを攻撃表示で召喚! ゴブリンの特殊効果発動! デッキ内に存在する同じ名前のモンスターを1体、フィールド上に特殊召喚する! 特殊召喚ゴブリンで攻撃!」

『ぐッ!』


 ゴブリンの特殊効果でさらにもう1体のゴブリン(人属性 召喚コスト1 攻撃力1)がフィールド上に現れ、棍棒を振り上げて名もなき決闘者に襲い掛かる。

 これで名もなき決闘者のライフは9になった。


 モンスターは召喚されたターンは基本的には攻撃できない(特殊召喚されたモンスターは即時行動できる)ため、このターンはこれ以上なにもできないが、次のターンには一気に2ポイントもボスのライフを削り取れる。

 ゴブリンと言えど、数が揃えば恐ろしいのだ。


「さらに俺は手札のカードを1枚、場に伏せてターンエンド」

『ゴブリン速攻か。ベターだが侮れないな。俺のターン! ドロー!』


 名も無き決闘者が手札のカードをマナゾーンに置き、そのマナでスライム(魔属性 召喚コスト1 攻撃力1)を場に呼び出す。


『スライムの特殊効果発動! フィールド上に存在する全ての伏せカードを捕食して、その枚数分デッキ内から同名のモンスターを特殊召喚だ!』

「かかったな! (トラップ)カード発動! 【石灰まみれのモンスターマーカー!】。このカードはスライムに捕食されたときに効果を発動する! このカードを捕食しようとしたスライムを破壊して、逆に俺は手札から【世紀末ギタリスト・トミー】をノーコストで特殊召喚だ!」

『くっ、しまった!?』


 石灰を捕食したスライムが魔力の塵と消え、逆に零士側のフィールド上にトミー(人属性 召喚コスト5 攻撃力3)が特殊召喚される。


「おぉ! 召喚されるときってこんな感じなんだな。なんかちょっと感動」

『一筋縄ではいかない相手みたいだな。俺は手札のカードを1枚、場に伏せてターンエンドだ』


 再び零士のターン。

 カードをデッキから一枚ドローして、ライカン(人・獣属性)をマナゾーンへ。


「俺は手札からスキルカード【罠解除】を発動! 相手フィールド上の伏せカードを全て表側表示に変更して、それが罠カードなら破壊する!」

『ちっ』


 敵の伏せカードは罠カード【錯乱ガス】。ガスを吸い込んだモンスターは錯乱してしまい、召喚主を攻撃してしまう。えげつない罠だ。

 だがどんな罠も解除してしまえば怖くない。


「トミーの特殊効果発動! 攻撃時に自分の場にいる全てのモンスターの攻撃力をプラス1する! 全てのモンスターでダイレクトアタックだ!」

『ぐわぁーーーーッ!?』


 勇ましいBGMに力を貰ったゴブリンたちが名も無き決闘者に襲い掛かる。

 合計8ポイントのダメージ。名も無き決闘者の残るライフは1ポイント。

 次のターンを凌げば零士の勝利はほぼ確定。だが、ダンジョンのボスがこの程度で終わるはずがなかった。


『俺のターン! ドローッ……‼』


 名も無き決闘者がデッキからカードを引き……勝利を確信したように不敵な笑みを浮かべた。


『ふっ、どうやら勝利の女神は俺に微笑んだようだZE☆』

「やっべ! 残りライフ2以下は逆転フラグだ!」

「おいこらトミー! 滅多なこと言うんじゃねぇ!」


 名も無き決闘者が手札を掲げ高らかに宣言する。


『俺は手札から『異常個体スライム』を召喚! 『異常個体スライム』の特殊効果発動! 俺は一度手札を全てデッキに戻し、デッキをシャッフル! スライム系のモンスターカードを3枚引くまでカードを引き続け、それ以外のカードは全て墓地へ。そして、引いたスライム系カードを全て場に特殊召喚する!』


 名も無き決闘者が5枚カードを引いたところで、3枚のスライム系カードが揃った。

 スライム以外のカードを墓地に捨て、場にポイズンスライム(魔属性 攻撃力2)、グランスライム(魔属性 攻撃力4)、パラライズスライム(魔属性 攻撃力3)の3体が特殊召喚される。


『グランスライムの特殊効果発動! 場に存在する全てのスライム系モンスターを吸収して合体! 攻撃力と能力を統合した究極スライムへ進化だ!』


 猛毒と液体魔法金属のボディが巨大なスライムへと飲み込まれ、毒性の強い液体魔法金属製の巨大なスライムが誕生する。


『統合したポイズンスライムの効果発動! 場にいるスライム系以外の全てのモンスターの攻撃力をマイナス2!』

「うげぇ、気持ちわりぃ……」


 猛毒の液体金属を浴びせかけられ、攻撃力が0になったゴブリンたちがジュワっと溶けて消滅。

 トミーも猛毒を浴びてフラフラだ。


『特殊召喚されたモンスターは召喚したターンに即行動できる! デッドポイズンメタルでトミーを攻撃!』

「ひでぶっ!?」

「ぐぅッッ!?」


 液体金属の身体に呑み込まれたトミーの身体がジュワっと蒸発した。

 せめてもの救いは痛みを感じる間もなく蒸発してしまったことだろうか。

 トミーの攻撃力の分を差し引いたダメージが零士に貫通する。8ポイントのダメージ。

 ボス部屋の特殊効果で肉体へのダメージは全て魔力ダメージへ変換されるので見た目に傷こそないが、急激に魔力が減ったことで精神的疲労がどっと押し寄せてきて足元がふらつく。


 こちらは場にいた全てのモンスターが消え、逆に敵は恐ろしく強いモンスターに守られている。完全に形勢を逆転された。

 やれることをやりつくした名も無き決闘者がターンエンドを宣言する。


 まさに絶対絶命のピンチ。


「俺のターン……ッ、ドロー…………ッ!?」


 だが、残りライフ2が逆転フラグになるのは、どうやら敵だけではなかったらしい。

 僅かに繋がった希望の光。零士の瞳に闘志が宿る。


「俺は手札からアイテムカード【強欲な壺】を発動! デッキの下から4枚をゲームから除外して、上から4枚カードを引く!」


 これで再び零士の手札は5枚。勝利への道筋は整った。


「……さっきのお前のセリフ、そっくりそのまま返してやるよ」

『何……?』

「俺は手札から『忍者トークン』を召喚! 『忍者トークン』の特殊効果発動! 手札の枚数分、デッキからカードを引き、引いたカードを全て忍者トークンとして場に特殊召喚する!」


 ボボボボン! と計5体の忍者トークン(人属性 召喚コスト2 攻撃力1)がフィールド上に現れる。


「フゥン! お前に神を見せてやる。フィールド上の忍者トークン3体を生贄に捧げ、手札から『九尾稲荷神・白夜』を特殊召喚!」


 3体のトークンが光の中へ消え、光の中から九尾稲荷神・白夜(神属性 特殊召喚 攻撃力???)が降臨した!


「白夜の特殊効果発動! このカードの攻撃力は手札と場にいる全てのモンスターの数によって決定する!」


 現在、フィールド上にいるモンスターは敵も含めて合計4体。零士の手札は3枚なので、白夜の攻撃力は7になった。


『ふっ、残念だが、俺のデッドポイズンメタルの攻撃力は9だZE。そのモフモフした神サマの攻撃力は7! どうあがいても俺のモンスターには勝てない!』

「それはどうかな? 白夜の特殊効果その2発動! 俺の墓地にいる全てのモンスターをフィールド上に再召喚する!」

『なにぃ!?』


 2体のゴブリンとトミーが再び場に再召喚され、これで白夜の攻撃力は10になった。


『だ、だが、忘れてもらっちゃ困るZE! デッドポイズンメタルは場のスライム系以外の全てのモンスターの攻撃力を下げる!』

「白夜の特殊効果その3発動! 癒しの光が俺たちの陣営に降りかかるあらゆるマイナス効果を打ち消す! さらにトミーの特殊効果! 攻撃時に味方全体の攻撃力をプラス1して、逆に全ての敵の攻撃力をマイナス1する!」

『な、なにぃ!?』


 これで敵のモンスターの攻撃力は8に、白夜の攻撃力は11になった。


「さあ神の前にひれ伏すがいい! カオスバーストストリーム! 粉砕☆玉砕☆大・喝・采ッ! ハーッハッハァーッ!」

「パパったらノリノリだなぁ。よいしょーっ!」

『ぐわぁぁーーーーーーーーーーーーっ!?』


 右手に光を、左手に闇を。それぞれの手に宿った本来交わることのない相反するエネルギーを神の力で無理やり混ぜ合わせ、宇宙誕生前の原初の混沌エネルギーがバチバチと渦を巻く。

 溢れ出した混沌の波動はデッドポイズンメタルもろとも、名も無き決闘者を飲み込んで跡形もなく消し飛ばした!


 戦闘終了。

 

 デッキから仲間たちのカードが飛び出して、パンッ! とクラッカーのように弾けて、仲間たちが元の姿に戻る。

 今回は特殊なボス戦だったため、仲間たち全員に経験値が配分されて、全員のレベルが1上がった。


「あれ、もう終わったの?」


 と、周囲を見渡しながら零士に訊いたのは出番の無かったマックスだ。


「ああ。速攻デッキ組んだからな。上手いこと回ってくれてよかった」

「零士くん、怪我してない?」

「大丈夫。どこも怪我してないよ。……けど、ちょっと疲れた」


 華恋から魔力ポーションを受け取ると、それを一気に飲み干して少し楽になった零士は緊張から解放されたように苦笑した。


 するとここで、毎度の如くボス部屋の中央に宝箱が出現した。

 今回の宝箱は謎の象形文字が彫られた石棺型だ。

 ミイラの呪い罠(周囲の水分を全て奪いあらゆるものを干からびさせる)を解除して蓋を開ける。

 すると、中に入っていたのは……


「ロボッ……ト?」


 胸元に大きな赤いブローチとリボンが付いた、白い魔法少女風の衣装に身を包んだ少女型のアンドロイド。

 外見の年齢は9~10歳くらいだろうか。オレンジ色の髪をツインテールにしており、顔の造形は美術品のように美しい。

 ロボットだとすぐにわかったのは、耳元がヘッドホンのような装置と一体化していたからだ。

 今は完全に停止しているのか、死んだように動かない。


「……起きないね」

「あ、ああ……」


 しばらく全員で眺めていたが、一向に起きる気配がない。

 見つけてしまった以上、放置しておくのも忍びないし、形が形だけに置き去りもかわいそうだ。

 なのでここは一旦、零士がおんぶして外まで持ち出すことになった。


 だが、零士が謎のアンドロイド少女に触れた、その瞬間――――――


『――――――ガ、ガガガ、ビーーーーーーー! ガガガガガガガ! ……棒。相……棒。AIBOOOOOOOOOOOOOOOO!』

「うぉあッ!?」


 ビュン! と、少女の目と口からビームが発射された。

 零士がその攻撃を避けられたのは、1秒先の未来を見通す剛がギリギリのタイミングで首根っこを引っ張ってくれたからだ。

 零士の鼻先数センチの距離を光の速さで通過した殺人光線は、そのまま天井にぶち当たって大爆発を起こした!


「みんな離れろ! こいつ、ただのアイテムじゃない! モンスターアイテムだ!」


 咄嗟に謎の少女型ロボットの正体を見破った零士が仲間たちに距離をとるように指示を出す。

 モンスターアイテムとは、人類に対して敵対行動をとる超レアアイテムのことだ。

 その形や姿は様々だが、総じて破格の性能を誇り、実力を認めさせることができれば、倒した相手に恭順して多大な利益をもたらす。


 仲間たちが武器を構えてお互いをカバーできる位置に陣取ると、アンドロイド少女が機械じみた動きでギギギと棺から起き上がった。



『AIBOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO‼』



 少女が相棒だったボスを倒された悲しみを叫ぶと、両腕を禍々しい武器の塊へと変形させて、いきりたって襲い掛かってきた!


なぞの アンドロイドしょうじょが おそいかかってきた!▼

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