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幕間 リザルト

やっぱりリザルトやっとかないと気持ち悪いから投稿

 文化祭から早くも一週間が経ち、今年も残すところあと三か月を切った。

 高校生活最後の一大イベントを終えて三年生が受験や就職に向けて次々と部活を引退していく中、奈々も休学から復帰した那奈に部長の座を引き継いで軽音部を引退した。

 その際、トミーは奈々から軽音部を支えてやってほしいと頼まれ、副部長に就任している。


 事故の怪我が完治した那奈は1年生からの再スタートとなり、軽音部には文化祭で大活躍した臨時の美少女バンドメンバー目当ての入部希望者が殺到したが、部長を含む全員がすでに引退(?)していると知り、殆どが残念そうに去っていった。

 しかし、中には本気でバンドをやってみたいという熱意ある者もいて、最終的には新メンバーを5人迎えて軽音部は無事活動を再開することとなった。


 ところで、(UMA)の城から持ち帰った数々のアイテムだが、どれもかなりのレアアイテムで、中には全くの新発見の物もあった。

 ひとまずライブラリで詳細を確認できたアイテムは次の四つ。



 髑髏(どくろ)のシルバーリング


 『シルバー・オブ・デス』

 これを装備した者の攻撃に低確率の即死属性を付与する。100分の1



 エメラルド色の片手剣


 『エメラルドソード』:風属性

 レア度☆☆☆☆☆☆☆☆

 この剣を装備している間は強力な風の加護(※)を得る。

 ※狙撃耐性(大) 炎・冷気耐性(大) 移動速度上昇(大) 跳躍力アップ(大)



 見るからに高そうな壺


 『強欲な壺』

 アイテムを入れるとそのアイテムを増やすことができる。

 ただし、増やすためにはそのアイテムを購入するのと同じだけのお金も一緒に入れなければならない。

 アイテムは入れた金額分だけ増えるが、価値の定まっていない物はどれだけ金を入れても増やせない。



 猫耳カチューシャ


 『にゃんこ耳』

 装着すると猫の尻尾が生える。耳と尻尾は自由に動かすことが可能。

 猫のような身体能力を得られ、猫の言葉がわかるようになるが、あまり長く着けていると完全に身体の一部になってしまうので注意が必要。

 なお身体に定着してしまった場合、子供にも遺伝することが確認されている。



 これらのアイテムは相談の結果、エメラルドソードは美香が予備の剣として装備することになり、壺とカチューシャは華恋のアイテムボックスで保管。髑髏のシルバーリングは、トミーが装備することになった。


 というのも、トミーの演奏は敵に対しては一音ごとに能力低下や状態異常判定を及ぼす『攻撃』扱いになっているらしく、圧倒的手数による連続即死判定で耐性持ちの敵以外は一分と持たず即死することが判明したからである。

 これから先さらに敵が強くなり、即死耐性を持つ敵も増えるだろうが、それでも強力な手札が一つ増えたのは間違いない。


 残る『金のスキルキューブ』『禍々しい闇色の宝玉』『一眼レフカメラ』については、どれも新発見のアイテムだったため、次の日曜日にまちゅみに鑑定してもらいにいくことになった。



 ◇ ◇ ◇



 日曜日。

 零士、華恋、美香、トミーの四人はまちゅみの店を訪れていた。

 なおマックスは剛に誘われて武尊流の道場で組手稽古をしているため、ここにはいない。


「それじゃ鑑定お願いします」


 零士が目配せして華恋がアイテムボックスからモノを取り出す。


「はいはーい。鑑定料3つで300万になりまーす」

「300万を安いと思ってしまった自分が怖い……」

「だから最初に言ったでしょう? 探索者やってりゃ百万以下なんてはした金になるって」


 などと言いつつもカウンターの下からルーペを取り出したまちゅみが、鼻の下を伸ばしたり唇をビロビロさせたりしながら依頼の品を鑑定していく。

 メスになってもやっぱりチンパンジーなので、こういう基本的な仕草は変わらないようだ。


「ふーん? なーるほどね。またアンタたち、とんでもないモノ拾ってきたわねぇ」


 ルーペをカウンターに置いて一息ついたまちゅみが、鑑定結果を紙に書いていく。器用な猿だ。

 差し出された紙に書かれた鑑定結果を全員で集まって見る。意外と字は綺麗だった。




 金色に輝くスキルキューブ


 『神格』 未発見スキル


 神格を得る。

 神格を得たものは神となり、すでに神格を得ている存在はその格が上がる。



 禍々しい闇色の宝玉


 『混沌の宝玉』 未発見アイテム


 鑑定不能。



 一眼レフカメラ。


 『あの時をもう一度』 未発見アイテム


 撮影した被写体の時間を切り取り『写真』として保存するカメラ。

 被写体となった人物が『あの時をもう一度』と唱えると、被写体は写真を撮影した時間まで時を遡ることができる。

 ただし、保存できる『写真』は1枚だけで、時間を遡ると写真は消去され、その後24時間の間使用できなくなる。

 写真は後から撮ったものが上書きされて保存される。




「つまりセーブポイントですねわかります」

「かなり限定的だけどな」


 トミーの言葉に零士が頷く。

 やろうと思えば宝くじを当てまくったり、テスト内容を事前に知ったりなどもできそうだが、幸いにも金には困っていないし、ズルをしなければいけないほど頭の出来も悪くない。

 レベルアップすると学習能力も徐々に上がっていくため、ここ最近では学校の授業がすんなりと頭に入ってきて、小テストの成績も上々だった。


「一応聞くけど、ソレ、売る気はある?」


 全員が首を横に振る。


「ま、そりゃそうよね。アンタたちなら大丈夫とは思うけど、使い方には注意しなさいよね。ソレ、はっきり言って相当ヤバい代物よ?」

「はい、気を付けます」


 全員で頷き、カメラはアイテムボックスへと仕舞われた。

 また一つひみつ道具が増えたなと全員が思ったが、口には出さなかった。


「……で、なんなんですか、このスキル」

「知らないわよ。ワタシの鑑定じゃそこまでしか見れなかったもの」


 まちゅみがバナナを頬張りながら投げやりに答える。


「神格を得たものは神になるって……なったらどうなんの?」

「さぁ? 気になるなら使ってみれば~?」

「うーわ、ちょー無責任」


 美香がアイテム屋の店長がそんなんでいいのかと呆れたような視線を向けるが、「だって猿だもーん」とまちゅみはキーキー笑う。


《だったら、拙者たちに使わせてほしいでごじゃる!》

《パワーアップ》


 狭い店内がパッと輝き、華恋と零士の頭の上に二匹の白黒毛玉が現れて言った。


「あらぁ! 可愛いキツネさん! どうしたのよその子たち」

「こっちの白い子が日向で、そっちの黒い子が朔夜です。あの卵から生まれたんですよ」


 華恋が日向を撫でながら二匹を紹介した。


「あら、()()()()まともなのが出てきたのね」

「今度? ってことはまさかまちゅみも!?」


 まさかこの猿はタイムリープまでできるのかと零士たちが目を剥くが、


「いーえ、残念だけどワタシはぎーちゃんから聞いただけ。でも、卵から出てくるものは毎回ランダムだったみたいよ? くっさい芋虫とか、お下品な触手とか、ドロドロの不定形とか」


 どうやら違ったらしい。

 想像しただけで正気を失いそうな生物群に全員の顔が青ざめる。


「ま、何が生まれてきても、どれもそれなりに可愛がってもらってたみたいだし、あんまり気にしない方がいいわよ。今となっては可能性の話なんだしさ」

「「うん……」」


 自分たちがそんなゲテモノに生まれていたかもしれないと知って、二匹は複雑な気持ちになった。

 それでも唯一の救いは、どんな姿で生まれてもそれなりに可愛がってもらえていたらしいということだろうか。


「そ、それより! コレ、日向たちで使いたいって言ってたけど、どっちが使うの?」


 空気を読んだ華恋が話題を戻す。


「ふふん! そーれーはー、こうするでごじゃる!」

「変身」


 二匹がドロンッ! と、可愛いだけの子供形態へ化けると、


「「フュ~ジョンッ! はぁっ!」」


 息の合った左右対称の動きで指先を合わせる。

 すると二人の身体が一際強く光り輝き……


「どう? 凄いでしょ! 日向と朔夜で、さしずめ『白夜(びゃくや)』ってとこかな」


 光が治まるとそこに立っていたのは中学生くらいにまで成長した、灰色のおかっぱ頭の中性的な美貌の少女(少年?)。

 頭には狐の耳が生えていて、陰陽師のような式服も色が混ざったように灰色になっている。


「おお! 光と闇が合わさった最強モード的な!?」

「ううん? 見た目通りの力しかないよ? この姿だとお互いの属性が反発して変身以外の能力全く使えなくなっちゃうし」

「見掛け倒しすぎる……」


 期待が外れてがっかりするトミー。

 零士と華恋は「そんなことだろうと思った」と苦笑いして、美香は磨けばさらに光りそうな極上の素材をどう調理してやろうかと一人思案を巡らせている。


「まあまあ、それより、こうして合体しちゃえば一個しかなくても問題ないよね」


 そう言って白夜が黄金に輝くスキルキューブを強く握りしめる。

 すると内部で光の粒子が渦巻いていた透明なガラス質の直方体がサラサラと砂のように溶けて、内部で渦巻いていた粒子が白夜の周囲をぐるりと回り、その身体へと吸い込まれていく。

 そこまでは普通のスキルキューブを使用した時と同じ。

 だが、全ての粒子が白夜へ吸い込まれた瞬間、変化は起きた。


 ご来光を思わせる温かな光のオーラが白夜の身体から立ち昇り、太く長い狐の尾が九本、キラキラと燐光を散らしながらぶわりと広がった。


『……うん。イイ感じだ。力が満ちてくる』


 長い睫毛を伏せつつ、内側から湧き出る神力を確かめるように手を握りしめる白夜。

 新宿二丁目というあまりにも場違いな場所で発生した神秘体験に、その場に居合わせた全員の開いた口が塞がらない。


「な、なんかすごい神秘的な感じだけど、具体的に何がどう変わったんだ?」


 確かに、尻尾が生えて身体が光っている以外の外見的な変化は特に見られない。

 零士が訊くと白夜が神秘的な笑みを浮かべて指折り答える。


『光と闇を操る力がパワーアップしたのもそうだし、この姿でも両方の力を使えるようになったりとか、色々かな』

「成程、ようやく見掛け倒しじゃなくなったと」

『成長したって言ってほしいな。あ、そうそう、他にももう一つ、面白い力が使えるようになったよ!』

「面白い力って?」


 華恋が首を傾げる。


『ふふふ、まだ秘密! でも二人とも気に入ってくれると思うよ』


 桜色の唇に人差し指を当ててウインクして答える白夜。

 こんなあざとい仕草、いったいどこで覚えたのか。

 ともあれ、日向と朔夜の二人(二匹)が共に大きく成長したことは確かなようだった。

 そのまま白夜が目を閉じてふっと力を抜くと、混ざり合っていた灰色が白と黒、二つの球体に分離して、それぞれが中型犬サイズの九尾の狐へと変わった。


「また一気に大きくなったなぁ」

「サイズ変更可」


 零士が大きくなった朔夜を抱き上げると、しゅるるるるっとサイズが縮小して元の手のひらサイズの黒毛玉に戻った。

 尻尾が増えたことでさらにもこもこのモッフモフである。


「にゅふーん! 変身能力の応用でごじゃる。ついでに結構大きなものにも化けられるようになったでごじゃる。自動車とか」

「じゃあタケミカヅチに変身してドカーンみたいな事も!?」

「なんてもんに変身させようとしてるでごじゃるかお前は!? せいぜい小型のプロペラ機くらいまでが今の限界でごじゃる!」

「なんだ、がっかり」


 期待が外れて残念そうに肩を落とすトミー。

 この男は愛すべきマスコットをスーパーロボに変身させてなにをさせようというのか。


「別にいいじゃん。それより尻尾増えてモフみマシマシの方が重要っしょ」

「ふふん! 存分に愛でていいでごじゃるよ?」

「あぁ~、しあわせ~」


 モフみ十割増しの日向を抱き寄せ、心なしかさらに艶々になった毛並みを堪能する美香。

 モフモフに夢中のギャルを放置して零士が話を戻す。


「で、この宝玉は? 鑑定不能ってなんなんですか。金返してくださいよ」

「そういうクレームは受け付けてませーん! こんなもんまともに鑑定したらワタシの頭がパーンしてたわよ」

「いや、パーンて……」

「……これは、そうね。例えるなら、新しい宇宙だって生み出せるくらいのとんでもない可能性の塊ってトコかしら」

「可能性……」

「そ。要するに、人間が触れてはならない一種の禁忌ってやつね」

「…………」


 いつになく真剣なまちゅみに気圧されて、零士たちは言葉に詰まってしまう。


「まあ、そんでも使い方も使い道もわかんない謎アイテムってことに変わりはないから、とりあえずアンタの彼女の四次元ポケットの中にでも封印しときなさいな。そこなら万が一って事もないだろうし」

「私ドラ●もんじゃないです!」

「はいはい。ほら、もう用は済んだでしょ。悪いけどこの後大事な予定があるの。またのご来店をお待ちしてま~す」

「あ、ちょ!?」


 店の奥に潜む幽霊バイトの念力に身体を掴まれた零士たちはそのまま店の外へ放り出されてしまう。相変わらず客の扱いが雑な店だ。

 店から追い出されてしまった零士たちは、仕方ないので帰りに何か食べていこうかと相談しながら駅の方へと歩き出した。



続きは予定通り5月12日、日曜日からの再開予定です。



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