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夏休みダンジョンウォーズ 13

 再び移動を開始した巨大怪獣を前にして、第1機甲科大隊は後退を余儀なくされる。

 その様子は急遽設立された国家異常事態特別対策本部へとリアルタイムの映像で伝えられた。


「くそっ! 600発のミサイルを撃ち込まれてもまだ倒れないのか!? 魔法薬の製造状況はどうなっている!?」


 映像を見ていた防衛大臣が苛立ちも顕わにテーブルに拳を叩き付ける。

 頼みの綱の藤堂儀十郎は現在、アラスカの超級ダンジョンに潜っている最中で、連絡が取れない。

 数少ないAランク探索者たちも海外にいたり、ダンジョンに挑戦中だったりと、すぐに現場に駆け付けられる状況では無かった。

 そのため、今回はなんとしても自衛隊の力だけで対象を討伐する必要があった。


「現在急ピッチで増産中です。しかし、敵の体積があまりにも巨大ですので、奴を枯らしきるだけの量を準備するには最低でもあと32時間は掛かります」


 大臣からの問いかけに横で控えていた統合幕僚長が答えた。

 32時間もあれば巨大怪獣は市街地を通り過ぎてしまう。被害を最小限に抑えるためにも、魔法薬の製造を待つというのは現実的とは言えなかった。

 しかし、彼の回答はこの数秒後、悪い方へ覆される事となる。


「な、なんか大きくなってないかコイツ!?」

「現地より連絡! 目標がさらに巨大化を開始! 現在、体長200メートル!」

「えっ、何!? まだ成長するのアレ!?」


 現地から上がってきた情報を報告する自衛官の言葉に、総理が目を丸くして素っ頓狂な声を上げた。


「……こうなってはやむを得ません。総理、()()を使いましょう」


 防衛大臣が真剣な面持ちで総理に向き直る。


「いや、だがアレはまだ一度も動かしたことが無かっただろう? 本当に動くのかね?」

「何としても動かします。市街地はすぐ目の前です! これ以上進ませれば確実に大きな被害が出ます! 総理、ご決断を!」


 大臣以下この場に集まった全員から迫られるような視線を向けられて総理は一瞬たじろいだが、すぐに誤魔化すように咳払いしてから頷いた。


「……分かった。特殊決戦兵装の使用を許可する」



 ◇ ◇ ◇



 さらに巨大化した怪獣がゆっくりと、しかし確実に上田の市街地へ向けて侵攻する中、()()()は突如、快晴の夏空を突き破るように日本各地の建造ドッグから転送されてきた。


 一つは、全面に超巨大なドリルを搭載した無限軌道の重戦車。


 一つは、まさしく飛行戦艦と呼ぶべき巨大な飛行機。


 そして最後に、全長100メートルはあろうかという規格外のマシンアーマー。


 巨大MAには専用のパイロットが搭乗しており、それらは転送が完了すると同時に、空中で搭載されたサポートAIの誘導に従って変形していく。


『超電磁連結システム起動』


『相互リンクによる誘導開始』


 飛行機の両翼下に取り付けられていた巨大なアームが射出され、超電磁誘導システムにより、規格外マシンアーマーの両腕にドッキング。

 固定ボルトが回転してガッチリと結合して、合体時に発生する高熱を冷却するための冷却液が蒸気を噴き上げる。


 続いて重戦車が左右に割れて巨大な脚部パーツへと変形し、MAの両足がそこへ吸い寄せられるように誘導されて、ガッチリと連結。

 再び固定ボルトが回転して蒸気が噴き出す。


 最後に、飛行機の機体底面が大きく開いてジョイントパーツがせり出てくると、両腕と両足を継ぎ足されて巨大化したMA(マシンアーマー)の背中に連結。


 その頭に覆いかぶさるように飛行機の全面が大きく前倒しになり、胴体を守る装甲になった。

 そして、メインカメラを搭載した頭部が肥大化した胴体からせり上がってきて、鋭い眼光をギラリと輝かせる。


『合体完了。各機能オールグリーン』


 空中で無事に合体を完了させた鋼鉄の巨人が、重力制御システムによって軽やかに怪獣の前へと着地する。

 これなる巨人の名は『タケミカヅチ』。神話に語られる雷神の名を冠した、日本が秘密裏に建造していた対巨大モンスター用特殊決戦兵器である。


 ダンジョンより発見された超技術の粋を結集し、総製作費600兆円もの予算をつぎこんで、10年の歳月を費やして開発された。

 制作プロジェクトの発案者は藤堂儀十郎で、その膨大な制作費の殆どは、彼の出資によるものだ。

 氏曰く『巨大合体ロボは男のロマン!』との事で、半分以上彼の道楽であったのは言うまでもない。


 だが、その性能は間違いなく本物だった。


 合体時の全長は130メートル。総重量2900トン。

 ボディはアダマンタイト合金製で、物理的な強靭性も凄まじいが、魔法や各種宇宙線も完全に遮断する。

 動力源には常温核融合炉が採用されており、重力制御システム他、超電磁誘導システムを搭載。

 全システムをフル稼働させた際に発揮される最大瞬間出力は、6000万馬力を誇る正真正銘のスーパーロボットだ。


 そんな日本国が誇る最強のスーパーロボをしてもまだ見上げるほどの巨体へと成長した怪獣は、目の前を塞ぐ障害物を前に進行を停止。

 直後、タケミカヅチのボディに大量の木の幹が絡みつき、そのアダマンタイト合金製の身体を引き裂こうと力が掛かった。


 だが、タケミカヅチはその凄まじいパワーで木の幹による拘束を引きちぎると、お返しとばかりに怪獣の胴体に向けて、右腕に搭載された武器を炸裂させた!


『超電磁パイルバンカー‼』


 電磁加速によって超高速で打ち出された巨大な杭が怪獣の腹部に大穴を穿つ。

 すぐさま再生を試みる怪獣に、続く左腕の攻撃が振り下ろされる。


『斥力破断剣‼』


 左腕に搭載されたブレードが展開し、重力制御システムが発生させた斥力が、怪獣の身体を幹竹割りに引き裂いた!

 続けざまに連続で振るわれたブレードによって怪獣の身体がバラバラに解体されていく。

 本体から切り離された巨大な幹や枝が足元の国道沿いに落下して、僅かに建つ建物や何も植わっていない畑を押しつぶしながら魔力の塵と消える。


 一方的な展開に、戦闘の様子を見ていた特別対策本部の面々も「いけるぞ!」「がんばれ!」と、年甲斐もなく目をキラキラさせながら声援を送る。


 そうして怪獣の身体がタケミカヅチの半分ほどにまで小さくなったその時、いよいよ必殺兵器の使用に必要なエネルギーが充填されたことを知らせるグリーンの表示が、コックピットの画面に表示された。


『総理! グラビティキャノン、いつでも発射可能です! 撃つなら今しかありません。使用許可を!』


 タケミカヅチを操縦する児玉(こだま)一等陸尉から、対策本部の総理へ必殺兵器の使用許可を求める通信が入る。


「許可する! ただし周囲にこれ以上被害は出すな! 何も植わっていなくとも、大事な畑を荒らされて喜ぶ農家さんなんていないからな」

『了解!』


 国民を守るためとは言え、自衛隊のMAによって踏み荒らされた畑に心を痛めていた農家出身の総理からの命令に、同じく地元出身の児玉一尉が威勢よく応えた。


『重力制御システムフル稼働!』


 半分以下になっても尚巨大な怪獣の身体を両腕でがっちりと掴んだタケミカヅチが、重力制御システムの力で星の引力からぶわりと解き放たれて、ぐんぐん高度を上げて行く。

 6000万馬力のパワーで拘束された怪獣は、その長く伸びた尻尾を地面からベりべりと引きはがされながら、一緒に空高くまで持ち上げられていった。


 このままではヤバいと本能で悟ったのか、怪獣が尻尾から送られてくる地力を使い、急激にその体積を増やしてタケミカヅチの拘束を振りほどこうともがく。

 しかし、怪獣の抵抗よりも、タケミカヅチが目標高度に到達するほうが早かった。

 腕の中で暴れる怪獣を空中で蹴り上げて身体から引きはがすと、必殺技の発射体勢に入る。


『発射システムオールグリーン! エネルギー充填率120%! グラビティキャノン発射ァッ!』


 タケミカヅチの腹部装甲が開放され、体内の重力制御装置がむき出しになる。

 次の瞬間、重力制御装置内で生成されたマイクロブラックホールが勢いよく発射され、怪獣の身体を捉えた。


 超重力に捕まった怪獣はメキメキと音を立てながら潰れてゆき、最後は派手に大 爆 発!

 欠片も残さず吹き飛んだ怪獣は、その巨体をこの世から完全に消滅させた。


 『かがくのちから』の勝利に、映像を見ていた特別対策室の面々と、テレビの映像を見ていた全国のちびっ子たちが一斉に歓声を上げた。



 ◇ ◇ ◇



 三人が窓の割れたビルの中へ入ると、そこは巨大な複合商業施設のようだった。

 ひとまずエスカレーター横のベンチに腰を下ろして、魔力回復ポーションを飲んで一休みする。

 それからしばらく深呼吸して体内の気を整えると、5分ほどで二人は問題なく動ける程度に回復した。


 回復した一行はすぐに探索を再開し、より強い気配を感じる地下へと下りて行く。

 自分たち以外の人間の反応は遠くの方に散らばっており、どうやら零士たちが最もボスに近いエリアに飛ばされたようだった。


 止まったエスカレーターを階段代わりに歩いて進み、2階ほど下ると、そこは広いエントランスになっていた。

 中央には巨大な昇降盤のようなものがあるだけで、それ以外には何もない。


 気配はここよりさらに下から感じる。

 三人は意を決して昇降盤の上に立った。すると……


「うおぉっ!?」


 床が縦方向に回転し始めた。龍之介が驚いて声を上げる。

 だが、重力はしっかりと三人の足元に作用しており、三人の身体が落ちることは無い。

 そしてそのまま上下が反転して、床の裏側へと出た。


 表側と全く同じ飾りっ気のないエントランスから続く動かないエスカレーターを地上(?)の方へと上っていくと、そこにあったのは……


「こりゃまたなんとまぁ……」

「うげぇ……」

「うぅ……気持ち悪い」


 見渡す限りを埋め尽くす大量のエイリアンの卵と、触手をうねらせる異形の植物たちに浸食された町並みがどこまでも広がっていた。



かがくのちからってすげー‼


スーパーロボの必殺技だから物理法則とかこまけぇことはいいんだよ! って事で。

多分パイロットの気合とか根性を力に変えるすげーダンジョン産の魔導機関的なもの搭載してんだよ!(適当)



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