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南の島のバーニングラブ! 12

ネタを、ネタを挟まなきゃ(持病の発作)


 飛行場の建物から島のどこかに飛ばされてすでに数時間。

 日もだんだんと暮れてきて、島を覆い隠す霧も夕暮れの紅に染まっている。

 そんなちょっぴり幻想的な島の片隅で……


「あははははは! NO! NO! やめ、やめろぉぉぉ! し、死ぬあははははは!」


 僕はローパーに捕まって、ドリルみたいな触手の先端で、執拗に乳首を攻められ続けていた。

 僕がコイツに捕まってしまったのは、ほんの10分くらい前の事。3回目の砲撃で強制転移させられた直後だった。


 突然霧の中から現れた大量の触手に武器を奪われてしまい、あっという間に手首を縛り上げられてこのザマってわけさ。ガッデム!


 大体、どうして僕なのさ!? こういうのって、普通、可愛い女の子が捕まるのが日本のお約束でしょ!?

 僕みたいなマッチョメンを拘束したって、マイノリティな人たちにしか需要なんて無いだろ畜生め!


 と、腹がよじれそうなほど笑いながら心の中で悪態を吐いていた、そんな時だった。

 突然、脳裏に電流が閃いて僕の身体が意志に反して勝手に動き出す。


「すな、すな、乳首ドリルすな。すな、すな、すな、すな……」


「(シーン……)」


「いや、せぇへんのかーい! 乳首ドリルせぇへんのかい! ってあはははは! やめ、マジやめて! ちょ、まっ、やめろっつってんだろォ!」


 ローパーがピタリと動きを止め……たと思ったら、また乳首ドリルしだす。


「すな、すな、すな、乳首ドリルすな。つま先やめろ、アゴやめろ、脇やめろ脇やめろ脇やめろ毛細血管いっぱい詰まっとるとこわーきーっ!」


 触手が「?」の形にぐにゃりと曲がる。


「だから毛細血管いっぱい詰まっとるとこわーきーッ!」


「(?)」


「なんで聞こえへんねん! この距離やぞ!」


「いや『毛細血管いっぱい詰まっとるとこ脇』ゆうとこがちょっと聞こえなくて」


「いやそう言うたんや。……って、喋ったぁぁぁぁぁ!?」


「………………」


「いや、もう黙っても無駄だからな? お前、ホントは喋れるくらい頭いいんだろ? 僕の事おちょくって遊んでんだろ? なあ、オイ」


 そしてまた無言で乳首ドリル。

 もしかして僕は死ぬまで永遠にこのくだりを繰り返さなきゃいけないのか?

 でも、止めようと思っても、身体が勝手に繰り返してしまう。なんだこれ、何かの呪いか!?


「すな、すな、すな、乳首ドリルすな……」


「ああ、そんな……っ、マックスまで……」


「いやせぇへんのかーい! …………違うんだミカ。これは、僕の意思じゃない」


 よりにもよってこのタイミングで、霧の向こうからふらりとミカが現れて、僕の醜態を見てその場に膝から崩れ落ちた。

 装備に乱れた跡は無く、彼女の身体にも傷らしい傷は無いけど、その目は疲れ切って完全にいつもの輝きを失っている。


 ピュアな彼女の事だ。きっと、あのHENTAIモンスターどもに追い回されて心を痛めてしまったに違いない。くそっ、なんて日だ!

 ……その上、こんなバカな姿を彼女に晒して、絶対変な奴って思われた。

 畜生いっそ殺せ!


「すな、すな、すな、乳首ドリルすな。つま先やめろ、アゴやめろ、脇やめろ脇やめろ脇やめろ毛細血管いっぱい詰まっとるとこわーきーッ! ……助けて」


「……う、うん。そ、そうだよね……助けなきゃ」


 そう言って彼女はミスリルの剣を杖にしてよろよろと立ち上がると、


「魔剣【氷砕斬(ひょうさいざん)】!」


 剣に青い魔力を纏わせて、ドリルローパーの本体を切り裂いた。

 傷口からバキバキと音を立ててドリルローパーの身体が凍ってゆく。

 やがてその触手の先端まで全てが凍り付くと、ローパーの氷像がバキンッ! と砕けて魔力へ還った。


 ポトリと、ドロップ品のビンが地面に落ちる。

 ラベルを見ると、ブラックオイルと書いてあった。うつぶせになったビキニの女性の絵を見る限りでは、どうやらサンオイルのようだ。


「……忘れよう。お互いに」


「う、うん……」


 気まずい。

 ……忘れよう。変なローパーなんていなかったし、ビッグマグナムをぶら下げた魚たちなんていなかった。そうでも思わないと耐えられない。

 ドロップ品のサンオイル(?)と、奪われた武器を拾うと、ここで僕は周囲の霧が完全に晴れている事に気が付いた。


「霧が……晴れた?」


「ね、ねえ! マックスあれ!」


「なっ……!」


 ミカが青ざめた顔で空を指差したので、そちらを向く。

 するとそこにあったのは……


「バトルシップが……飛んでる……!?」


 禍々しく捻じれた砲塔に絡まった海藻を靡かせながら、夕暮れの空をゆっくりと飛行する巨大な戦艦の影がそこにあった。




 ◇ ◇ ◇




【現在レベル28。全てのレベルを『星』にチャージしますか?】


 なんだ、これは。

 突然腕輪が喋り出したかと思えば、レベルをチャージだと?


「……チャージすると、どうなるのだ。私は、弱くなるのか?」


【『星』に現在のレベルをチャージすると、肉体的な強化及び外見的な変化はレベル1相当の状態に戻ります。また、チャージしたレベルは元に戻すことはできず、次のレベルアップまでに必要な経験値は、チャージする前と変わりません】


 ふむ、つまりコイツにレベルをチャージしてしまえば、私はレベル1相当まで弱くなるらしい。

 しかも、次のレベルに上がるには今と同じだけの経験値が必要で、一度チャージしたレベルは元に戻せない、と。

 なんとおあつらえ向きな装備だろう。


「チャージだ。全てチャージするぞ」


【レベルチャージを行います。肉体の弱体化による感覚の変化にご注意ください】


 すると、腕輪の星がキラリと瞬き、私の身体から一気に力が抜けて行くのが分かった。

 むぅ……っ。やはり相当強くなってしまっていたらしいな。身体が重い。

 ともあれ、これで私の身体は元通りだ。やったぞ剛!


【チャージ完了。チャージしたレベルを永久に消費して願いを叶えることができます】


「何ィッ!?」


 願いを、叶える……だとッ!? そ、そんな事ができるならもっと早く言え‼

 私の願いはただ一つ。私の愛と筋力を受け止めきれるほど強い男と結婚して、幸せな家庭を築く事だッ‼


「……仮にだが、もし、私より強い男と結婚したいと願ったら、それは叶うのか?」


【その願いは私の力を越えています。実現不可能です】


「クソがッ!」


 私は腕輪を外して思い切り地面に叩き付けた。

 しかし、思いのほか頑丈な腕輪は欠けたり傷ついたりすることも無く、依然としてキラキラと輝いたままだ。

 何が願いを叶えるだ。私のほんのささやかな願いすら叶えられないなんて、詐欺もいいところだ。


「……ちっ、まあいい。なら、これならどうだ。私を普通の人間並みに弱くしてくれ」


【その願いは私の力を越えています。実現不可能です】


「もういい、分かった。貴様には何も頼まん」


 どうやら私はどうやっても今以上に弱くはなれないらしい。

 それなら剛の修業に付き合ってやった方が、よっぽど早く結婚できそうなものだ。

 くだらない事に時間を費やしてしまった。さっさとコアをぶっ壊してここから出よう。


 探すと、コアは高座に敷かれた座布団の裏、梯子を下りたその先に隠されていた。

 妙にSFチックな台座の上でキラキラと輝く忌々しい大きな金平糖を、私は渾身の力で握りつぶして粉砕する。悪は滅びた。

 さあ、あとはここから脱出するだけ……。



 コアロスト。艦内の魔力を元にコアを再構築……失敗。


 外部からの不明なアクセスを確認。ダンジョンを構築する全ての魔力を素体に投与、モンスター化開始……成功。


 飛行戦艦ヤ()ト、発進。



 突然、脳内に直接、謎のアナウンスが聞こえてきた、その直後。

 世界が歪み、崩れ、SFチックなコアルームは跡形も無く消え去る。

 広がっていた空間が元のサイズに戻る衝撃で吹き飛ばされた私は、ギラギラと照明が輝く武骨な鉄の舞台の上に放り出された。


 ……って、いつの間にか服がサンバ衣装になってる!?

 私が着ていた服が空中で洗濯されて干されていく。何時の間に脱がされたんだ。全く気付かなかったぞ。


 部屋には大音量でサンバミュージックが流れており、それを意識した瞬間、私の身体は勝手にサンバを踊り出す。

 な、なんだ!? 身体が勝手に!?


「あれ!? 涼さん、何でここに!? う~、サンバッ!」


「じいちゃんが言ってた気配って、涼さんだったのかよ!? う~、サンバッ!」


「加苅くんと花沢さんじゃないか!? 君たちこそ何故こんな場所に、う~、サンバッ! それにその格好はなんだ!? う~、サンバッ! ええい! 鬱陶しい! う~、サンバッ!」


 見ると、舞台の上で見知った二人がやはり女性用のサンバ衣装を着て、陽気なリズムに合わせて踊り狂っていた。

 ……前々から思っていたが、やはり花沢さん、胸デカイな。本当に高校生か?


 私のも彼女のも、随分と激しく揺れているが、全然痛くない。この衣装のお陰だろうか。

 踊れば踊るほど身体の底から魔力が沸き上がり、沸き上がった魔力はすぐさま頭上で輝くミラーボールに吸い取られていく。これがどうして、中々キツイ。


「うほぉ! ばるんばるんじゃねぇか! いやぁ眼福眼福! ありがたや~。う~っ、サンバッ!」


 と、溌溂とした美丈夫が、私たちの胸を見て鼻の下を伸ばしながらキレッキレのサンバを踊る。


「おいこらジジイ! 俺の彼女の胸ジロジロ見てんじゃねぇ‼」


「ほほぅ? 『俺の』か。ちょっと目ぇ離した隙に随分と吹っ切れたみてぇじゃねぇか? え?」


「おかげさまでな!」


「そいつぁ重畳! お嬢さんや、馬鹿で頑固な孫だが、どうかコイツの事よろしくたのむぜ?」


「え、孫? え……? えぇーっ!? う~、サンバっ!」


 花沢さんがおっぱいを揺らしながら、もとい、踊りながら驚いている。

 どうやら、あのスケベおやじは加苅くんの祖父のようだ。って、随分若いな!? 探索者なのだろうか。


「あれ、カレン、あなた外に出たんじゃなかったの!?」


「あ、あはは、出る前にこうなっちゃって……」


「そんなぁ! 私嫌よ! こんな所で死ぬまでサンバ踊るなんて!?」


「私だって嫌だよ! でも、身体が勝手にう~、サンバっ!」


 赤髪の少女が花沢さんに英語で何か話しかけている。が、学生時代に英語の成績がイマイチよくなかった私には、殆ど理解できない。

 よくよく周囲を見れば、性別も人種も年齢も様々な人々が女性用のサンバ衣装で踊り狂っていた。

 もしかして彼らは私が来る前からここに囚われて、ずっとサンバを踊っていたのだろうか。


「ところで、このサンバはいつ終わるんだ。何度も魔力を吸われて疲れてきたんだが……」


「終わらねぇ」


 私の独り言に、スケベおやじが答える。


「……は?」


「だから終わらねぇんだよ。多分、俺たちゃ死ぬまでこのままだ。さっきの放送聞いてた限りじゃ、多分この船自体がモンスター化してやがる。恐らく、手始めに近くの国襲って()()かっぱらって、それをさらに繰り返すはずだ」


「なっ!?」


 するとここで、天井から一枚の大型パネルが下りてきて、そこに外の様子が映し出された。

 画面の下の方には藤堂さんの島が映っており、水平線に夕日が沈んでいく。

 私がここに突入した時、外はまだ午前中だったはずだ。

 あれから30分くらいしか経っていないのに、日が沈みかけているという事は、ここは外と時間の流れが違うのか……?


 などと考えていた、その時だ。



 ビュン!



 禍々しく変形した戦艦の砲塔から島に向けてビームが発射された。

 ビームは島に当たる直前に半透明の障壁に妨害されて狙いが逸れて、水平線の向こうに飛んで行き……。



 ────ッッドォォォォォォォォン!!!!



 ビームが直撃したあたりが大爆発して、キノコ雲ができた。

 な、なんて威力だ……! こんなものを野放しにしたら世界が滅茶苦茶になってしまう!

 すると、画面の中央に三つの影が飛来する。藤堂夫妻とウィルソン大統領だ。

 しかし、戦艦を覆うバリアが邪魔して、三人はこちらに近づけないでいる。


 くそっ、あのバリアさえなければこんなポンコツ、すぐにでもあの三人なら……!


 ……ん? バリアさえ、無ければ……? そうか!


「おい、腕輪! 私たち全員をあの島に転移させることは可能か!?」


【その願いを叶えるには5レベルを永久に消費します。実行しますか?】


「実行だ! すぐにやれ!」


【了解。願いを実行します】


 次の瞬間、私たち全員の身体が光に包まれた。



 ◇ ◇ ◇



 沈みゆく夕日を背に、藤堂は目の前を飛行する巨大戦艦の堅牢さに歯噛みする。

 突如として戦艦がモンスター化するなど、今まで体験してきたどの未来でも無かったことだ。

 それは即ち、混沌神が歴史の修正にかかったという事であり、逆に言えば、それは自分たちが混沌神を滅ぼす未来へと着実に近づいているという証拠でもある。


 だが、肝心要の特異点である二人が戦艦内部に囚われていては、流石の藤堂であっても手も足も出なかった。

 戦艦の周囲には常に魔法・物理攻撃を反射するバリアが展開しているが、この程度であれば、彼ら三人が力を合わせれば容易に破壊できる。

 しかし、そうすると手加減が出来ず、中に囚われている人たち諸共、戦艦は消滅してしまう。それでは意味が無いのだ。


 人質を取られてしまい、三人がどうすることもできないでいると、突然、戦艦を覆っていたバリアが解除された。

 藤堂の『生体感知』スキルが、戦艦内部に囚われていた人々の気配がそっくり島の屋敷へと移動していることを察知する。

 よく分からないが、とりあえずこれで心置きなく攻撃できる!


「二人とも、感じたな?」


「ええ」


「勿論だぜブラザー! 特大の花火をブチ上げようZE☆」


 三人が頷き合う。

 バリアと動力源を失った戦艦は、(いたち)の最後っ屁とばかりに、艦内に残った全ての魔力をオーバーフローさせて自爆しようとしている。

 船体のあちこちから魔力光が漏れ出して、今にも崩壊しそうな戦艦の真下へと移動した三人は、頭上の戦艦に向けて攻撃を繰り出す。


「「「レッツ☆パーリィィィ────!」」」


 マイクが両肩のミサイルポットから発射した多連装ドリルミサイルが、藤堂とメアリーの風の超級魔法によって加速し、戦艦の船底に突き刺さって上へ上へと押し上げる!

 ロケット噴射と神威の暴風によってその船体を持ち上げられた戦艦は、そのまま大気圏を突破して宇宙空間へと放り出され、



 ドッッッッッッカ────────ン!!!!



 夕闇迫る空の向こうで爆発。巨大な火の玉となって夜空を飾った。

 こうして、世界最強の探索者、藤堂儀十郎と、その妻メアリー・ウィルソンの世界の運命を掛けた結婚式は、特大の花火に飾られて幕を閉じたのである。

我慢できなかった……! おっぱいぷるーんぷるん!

今回、きまぐれに少しだけ三人称視点で書いてみましたが、いかがだったでしょうか?


海のゆかいな仲間たち


その3 ドリルローパー

触手の先端がドリルになっているローパー。ドリルはソフト感触でお肌に優しいぞ!

捕まえた人間の脳に電流を流して、強制的に「乳首ドリル」のくだりをやらせてくる「お約束」を心得たローパーさんだ!

ただし、彼は紳士♂なので、女の子は絶対に襲わないぞ! 


アイテム紹介


「星に願いを」

チャージしたレベルを永久に消費して願いを叶える腕輪。


1:チャージする時は必ず、装備している人間のレベルが全てチャージされる。

2:レベルをチャージすると、レベルアップで変化していた身体能力や外見はレベル1の状態へ戻る。

3:ただし、次のレベルアップに必要な経験値は、レベルをチャージする前と変わらない。

4:腕輪には最大99レベル分のチャージが可能。一度チャージしたレベルは永久に戻ってこない。

6:合計99レベル分の願いを叶えた瞬間、腕輪は砕け散りその力を失う。

7:大抵の願いは叶えられるが、あまりにも大きな願いは叶えられない。


叶えられない願いの例「混沌神を倒して」「私を弱くしてくれ!(※特定の個人に限る)」「無敵になりたい」「世界一可愛くなりたい」「ワシをぴちぴちギャルにしてくれんかのぅ?」など。


大きなズルはできないけど、こまごました所に手が届く、そんなチートアイテム。

通称「劣化版ドラ〇ンボール」

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