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閑話 劇的、私のビフォーアフター

 最近、周囲からの自分に対する視線が変わったのを感じる。

 なんというか、以前は道端のゴミでも見た時のような視線だったのが、最近はもっとこう柔らかくて好意的な感じになった。


 男子からのそれは特に顕著で、クラスの男子たちが私(特に胸の辺り!)へエロい視線を向けてくるようになったのは、今まで見向きもされなかった身としては嬉しいような恥ずかしいような、でもやっぱりちょっと嫌なような、なんとも複雑な心境である。


 胸なんて大きくても肩凝るばっかりで、いい事なんてないのにね。

 Iカップにもなるとブラ探すだけでも大変だし。


 ところで、ここ1ヵ月で私は私服を含めて、全ての服を新調しなければならなくなった。綺麗になりたい、痩せたい、という思いが強すぎて、痩せた後の事を何も考えていなかったのだ。


 ダンジョンに挑み始めて半月もすると、今まで着ていた服が着られなくなってしまい、制服を買い替えるために1日学校を休まなければならなかったほどだ。

 既製のサイズが着られると分かった時は本当に痩せて良かったと思った。

 


 朝、新しく買ってもらった制服に着替えた私は、ボスを倒したことでまたちょっと可愛くなった自分の姿を鏡の前に立って確認する。


 大きな姿見に映る少女が微笑みを返す。

 この『普通に』可愛い少女が自分だなんて、未だにちょっと信じられない。

 まだけっこうぽちゃっとしてるし、チビだけど、それでも顔は前とは比べ物にならない。

 この姿見も、つい最近物置の中から引っ張り出してきたものだ。

 だって、今までの私は鏡を見るのも辛いくらい、とんでもないブスだったから。


 パンパンに膨れ上がっていた顔は、丸顔だけどごく普通の可愛らしいサイズに。

 ニキビで荒れ放題だった肌は、綺麗なつるつるのたまご肌へ。

 厚ぼったい一重の目元も、まつげの長いぱっちりとした大きな二重に変わった。



 コンプレックスだった豚みたいな団子鼻もすっきりと小さくなって、ついでにベタベタだった髪の毛もシャンプーのCMみたく艶々のサラサラになった。

 鼻の形が変わったお陰で鼻詰まりしなくなったのが地味に嬉しい。


 今では毎日、鏡で自分の姿を確認するのが楽しくて仕方がない。

 見よ、この誰もがうらやむナイスバディ! 胸のカップ数はそのままにお腹が引っ込んだ結果、相対的にくびれっぽいものが生まれた。いい事だ。


 短かった手足も長くなってきているし、全身のムダ毛もちょっとずつ薄くなってきている。

 もうドラ●もんだなんて誰にも言わせない。



 ここまで可愛くなれたのも、全部背中を押してくれた加苅くんのお陰だ。


 加苅零士(かがりれいじ)くん。

 自ら傷つくことも恐れず、私をイジメから助けてくれた大恩人。

 変わりたいと思っていた私の背中を押してくれたダイエットの先輩。

 

 入学したばかりの頃の彼は、自分からはあまり積極的に人と関わろうとしない静かな人という印象だった。

 でもだからといって私みたいに、誰かに話しかけられてもオドオドするわけじゃなくて、趣味の話題を振られればその話を膨らませて普通におしゃべりしたりもする。

 そんなどこにでもいる普通の男子高校生。



 でも彼は全然普通の高校生なんかじゃなかった。

 だって私みたいなドブスを自分がいじめられるリスクを恐れずに助けるなんて普通はできない。

 彼は私をいじめていたグループに全力で立ち向かい、普通は思いついてもやらないような過激な方法で退学にまで追い込んでしまった。


 正直、私をいじめていたグループが退学になったと聞いた時はざまあみろって思ったけど、そのせいで彼が今まで仲良くしていたグループからも孤立してしまったのはとても申し訳ないと思った。


 私は彼ほど強くてカッコいい人を他に知らない。

 けど私はそれ以外に彼の事を殆ど知らないという事につい最近気が付いた。


 彼は昔すごく太っていた時期があり、過酷なダイエットに成功している。

 ゲームが好きで、クールなようでいて実は熱血。

 あと、嘘は吐かない主義らしい。


 そんな事くらいしか、私は彼について知らないのだ。


 もっと彼の事が知りたい。

 最近、私の頭の中は気が付くとその事で占領されている。

 何が好きで、何が嫌いか。彼の今までの生い立ち。それから……好きな女の子のタイプとか。色々。


 彼の事を考えれば考えるほど幸せなような、苦しいような、そんな不思議な気持ちになってしまう。


 もしかしてこれが恋というやつなのかな? こんな気持ちになるのは初めてだから分からない。

 でもこの気持ちが恋なのだとしたら、ある意味当然だろうと納得もできる。

 だって彼、すごく頼りになるしカッコイイんだもん。

 最近顔までイケメンになってきたのだからもう最強だ。


 ……加苅くんは私の事、どう思っているんだろう?

 ふと、鏡の横のカレンダーが目に留まった。


「もうすぐバレンタインか……」


 最近、女子たちが彼へ向ける視線が変化している事には気付いている。

 だって彼、最近すごくカッコよくなったし。

 やってる事は前と変わらないのに、ちょっとした仕草に反応して、廊下から黄色い声が上がったりもするのだから相当だ。

 ちょっと前まで彼の事ヤバい奴だって、後ろ指差してヒソヒソ噂してたくせに。図々しいにも程がある。


 ……ともあれだ。


 彼はあの件以来、尾鰭おひれのついた噂が出回っているとはいえ、時間の経過と見た目の変化で印象も少しずつ変わってきている。

 今年のバレンタインは1個か2個くらいなら、誰かからチョコを貰ってもおかしくはない。


 ところで私、お菓子作り、というかお料理そのものは大の得意だ。


 小さい頃からおばあちゃんと一緒に色々作っては、1人でパクパクパクパク食べていたから、あんな身体になってしまったのである。

 あのメガトンボディの構成材料は主に、小麦粉と砂糖、それから芋と油だ。


 特にフライドポテト。あれはいけない。

 芋を揚げるだけのお手軽料理なのに、あんなに美味しいのはもう罪と言っていいと思う。

 つい食べ過ぎてしまう悪魔の食べ物だ。

 でも美味しいからついつい手が伸びる。ケチャップとマヨもあれば最高。つぶつぶのマスタードも混ぜるとなおグッド。


 ……その結果があの身体だ。情けないにも程がある。


 私が手作りのチョコを渡したら、彼、どんな反応をするんだろう?

 素直に喜んでくれるかな? それとも、世界一の美少女になる前なのにって怒るかな? どっちもありそうでちょっと怖い。


 久しぶりに、ちょっと本気出しちゃおうかな。もし渡さなくても、自分で食べてしまえば無駄にはなるまい。

 甘いモノが嫌いという事もあるかもしれないし、ちょっとラインで聞いてみよう。

 ともだちリストを開く度に、家族以外の男の子の名前があるという現実に思わず笑みがこぼれる。ふふっ。




 カレン:「ちょっといい?」


 レイジ:「なに?」


 カレン:「加苅くんって、甘いモノ好き?」


 レイジ:「当然」


 レイジ:「つーか、元デブが糖分と油分を嫌いなわけがなかろう」


 レイジ:「マヨは飲み物。今でもたまにチューチューしたくなる」


 カレン:「わかる!」


 レイジ:「用事ってそれだけ?」


 カレン:「うん」


 レイジ:「そっか」

 



 聞いた私がバカだった。

 そりゃそうだ。糖分と油分が主食じゃなきゃ、小5で80キロオーバーなんて体重になるわけが無いのだ。


 ちなみに彼の当時の体重は私の当時とほぼ同じである。

 マヨネーズは飲み物だよね! わかるわかる。


 おっといけない。またデブの私が出てくるところだった。これ以上胸に栄養を送ってどうするのだ。

 ここまで大きいとブラ探すのも大変なんだから自重しなきゃ。


 と、そんな事よりもバレンタインだ。

 彼が甘いモノが好きだというのは当たり前だったが、それはそれとして何を作るべきだろうか。


 普通に市販のチョコを溶かして型に流すだけでは芸が無い。

 もっとこう、見て美しく食べて楽しくなるような趣向を凝らしたいところだ。


 頭の中でレシピを組み立てながら、私は学校へ行くために駅へと向かった。


現在の花沢さんの胸のサイズ 98センチ


現在の身長は145センチくらい。ロリポチャ爆乳!




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