LONG☆LONG☆AGO 5
来たる特殊ダンジョン攻略に向けて準備を着々と進める内に、今年も日本の空に梅雨前線がやってきた。
梅雨の長雨が続く中、武尊流の稽古場所は近所の公園から、引き出しダンジョンの入り口広場へと場所を変えて続いている。
時折モンスターが襲ってくるのが難点だが、その都度俺と変身したマックスとで修業の成果確認も兼ねて撃退していた。
マックスはあれからさらに2キロほど痩せており、日々のウォーキングと稽古、そして土日のジム通いのおかげで体力も着実に付いてきている。
それとは別にダンジョンの探索の方も順調に進んでおり、ここ1ヵ月ほどで俺たちのレベルもそれぞれ、ミカ子がレベル21、剛がレベル20、俺と花沢さんはレベル24へと上がった。
パーティ全体のレベルが揃ってきた事で、ようやく全体での連携が取れるようになり、探索の効率もグッと増した。
ところで、6月に入った事で学校では衣替えがあった。
夏服になった事で花沢さんの大きな胸が普段より目立つようになり、クラスの男子たちの視線が集まって本人は恥ずかしそうにしていたがあんなの見るなと言う方が酷というものだろう。
雨が降った日などは、シャツの背中から女子のブラが透けて見えてしまう事があるが、まさか花沢さんがあんな大胆なブラを付けているとは意外だった。
あんなの、殆ど紐じゃないか……。とても良いと思います。
と、そんなこんなで迎えた6月第2週の日曜日。
今日も今日とてレベル上げと探索に勤しんでいた俺たちは、未探索区域の奥の部屋で1体の巨大モンスターと遭遇した。
【サンダーッ!】
巨大なプロレスリングの上で珍妙な鳴き声を上げてのっそりと起き上がったソイツは……どこからどう見てもプロレスの覆面を被ったコアラだった。
だが、本物のコアラは『サンダー』なんて言わないし、あんなに大きくもない!
あれはギガントコアラサンダーだ!
ギガントコアラサンダーは、プロレスの覆面を被った巨大なコアラ型のモンスターである。
体長は4メートルほどで、その愛らしい見た目からは想像もつかないような機敏さと跳躍力でフライングボディプレスを仕掛けてくる危険な敵だ。
しかし名前にサンダーと付いている割に電撃に弱く、雷魔法を浴びると痺れて一定時間動けなくなってしまうので、そこを一気に叩くのがベストとされている。
「花沢さんは雷魔法の用意! 練習した大型ボス用の布陣で行くぞ!」
「「「了解っ!」」」
大型ボス用の布陣とは、ミカ子がガード役として花沢さんの前に立ち、俺と剛が一気に前に出て敵のヘイトとダメージを稼ぐというもの。
そうして花沢さんの魔法が発動するまで時間を稼ぎ、高火力の魔法で一気に殲滅するのだ。
俺と剛が左右から同時にリングイン。先制の剛の飛び蹴りがコアラのもふもふの足に突き刺さる!
【サンダ────ッ!?】
今や岩すら粉砕する剛の蹴りをモロに食らったギガントコアラサンダーは、プロレスラーらしく大げさに痛がり、リングの上をゴロンゴロンと転げ回った。
だが、4メートルもの巨体が転がれば、それだけで俺たちにとっては強力な物理攻撃になってしまう。
なので一旦ロープの上に避難して、コアラが痛がるのを止めた所で、今度は俺がロープのたわみを利用して大ジャンプ。
コアラの頭上まで跳んだ俺は空中で身体を高速回転させ、落下の勢いを乗せた回転斬りでコアラの背中を切り刻む。
背中の毛皮をズタボロにされたコアラはまたもや変な悲鳴を上げるが、今度は痛がったりせずにすぐさま反撃に転じてきた。
コアラの大振りな爪攻撃を屈んで回避すると、コアラはすぐさまジャンプの体勢を取って天高く跳びあがる。
リング上から転がるように退避すると、巨大なコアラが両手を広げ、リングに向かってダイブしてきた!
轟音と振動が部屋全体を揺るがし、発生した衝撃波が俺たち4人に襲い掛かる。
ミカ子は花沢さんの前に立ったまま盾を構え、剣を床に突き刺してこれをやり過ごし、俺と剛はリングのロープに掴まる事でどうにか吹き飛ばされずに済んだ。
大技の反動からか、コアラの動きが鈍い。
それをチャンスと見てすかさずリングに飛び込んだ剛の上段蹴りが、コアラのケツを容赦なくしばき上げる。
────スパァンッッ!
【ア゛ッ!?】
とても痛そうな音がリングの上に響き渡り、コアラがマジで痛そうな声を上げてケツを押さえて蹲った。うわっ、痛そう……。
と、ここでようやく、
「準備できたよ! 2人とも離れてっ!」
花沢さんの魔法が完成した。
急いで俺たちがリングアウトすると同時、
『サンダーブレイクッ!』
雷の下級魔法『サンダーブレイク』の雷光がコアラの脳天に突き刺さった!
弱点の雷に打たれて黒こげのコアラは身体が痺れて動けないでいる。総攻撃チャンスだ!
「今だっ、総攻撃!」
俺の合図で全員がリングインして、動けないコアラを全力で袋叩きにする。
俺の風切と雷切が、ミカ子の剣が、剛の蹴りが、そして花沢さんの魔力弾が、ギガントコアラサンダーを徹底的に叩きのめした。
やがて、元々残り少なかったコアラの体力はとうとう底を尽き、
【サ……サンダ────ッッ!?】
やっぱりどこかマヌケな断末魔を上げて、魔力の光となったコアラの身体が爆散した。
リングの中央に宝箱が出現し、ダンジョン全体が10秒ほど振動する。
戦闘終了。完全勝利だ。
……しかし、全員無傷だというのに、皆なんだか暗い顔をしている。
まあ、気持ちは分かるよ。うん……。
「な、なんかすごく可愛そうな事したような気が……」
花沢さんが後ろめたそうに顔を伏せ、
「なんかすっごい悪い事した気分っていうか……」
「む、むぅ……ッ」
ミカ子と剛も同じように顔を伏せた。
リングの上が気まずい沈黙に包まれる。
「……………………ごめん」
俺が、俺があんな指示さえ出さなければ……っ!
モンスターとはいえ、動物園の人気者のコアラさんをあんな残虐ファイトで倒してしまうなんてっ。俺、最低だ……ッ!
「そ、そんな! 加苅くんが謝る事じゃないよ!」
「かがりんはリーダーの仕事しただけじゃん!」
「どの道倒しゃねばいけない相手だったんだ。だからしょんなに悔やむな。……な?」
剛が俺を諭すように優しく肩を叩く。
皆の優しさが逆に心に突き刺さる。……が、いつまでもウジウジ悔やんでいては、一応リーダーを任されている身として皆に示しがつかない。
気持ちを……気持ちを切り替えるんだ、俺ッ!
「……そうだな。よしっ、切り替えて行こう! 変なコアラなんていなかった。いいね?」
「「「アッハイ」」」
コアラなんていなかった。いなかったんだ……ッ。
と、強引に気持ちを切り替えた所で、みんな大好き宝箱タイムである。
まるで奴の最後っ屁の如く、不用意に開けると周囲の人間を下痢状態にしてしまう下痢ガスの罠を慎重に解除して宝箱を開ける。
すると中に入っていたのは2つのスキルキューブと、凶悪な形状のトンファーが1対。
トンファーは先端に棘のついた鉄球が付いており、持ち手部分にあるスイッチを押すと、鎖に繋がれた鉄球が飛び出す仕組みになっている。
スキルキューブの方は『剣術』に『操棍術』と、なんとも狙ったような内容だった。
なのでここは狙い通り、ミカ子に『剣術』を、剛に『操棍術』を取らせ、トンファーも剛に装備させた。
「フンッ! ハッ! ホッ! アイヤーッ!」
『操棍術』スキルの力で明らかに使いづらそうな旋棍をくるりくるりと器用に扱い、鎖と鉄球が剛の周囲を轟々と舞う。
そして見事な演武の最後を飾る決めポーズと同時に、内部機構によって巻き取られた鎖と一緒に鉄球がガシャンッ! と、トンファーの先端に合体した。
か、かっけぇ────っ!
手に入れた新武器を華麗に使いこなして見せた剛は、少年のように目を輝かせていた。
「話には聞いていたがシュキルとは本当に凄いなッ! 使った事も無い武器なのに、まるで手足のように動かしぇるぞッ!」
「まあ、だからこそ技能系のキューブは高値で取引されるんだけどな」
スキルにもよるが、有用なスキルは末端相場価格で10億は下らない額で取引されていると聞く。
それだけ皆、楽して結果だけ得たいという事なんだろう。
しかし楽して手に入れた力に驕れば、その先に待っているのは破滅の未来だ。
どれだけ気を付けているつもりでも、努力を伴わないで手に入れた力の魅力に人間は抗えない。
だからこそ探索者は己を律するための精神力を養わなければならないのである。
「見て見てレンちゃん! ほら、アタシ今、超カッコよくない!?」
「うん! すごいよミカちゃん!」
ミスリルの剣を鮮やかに振るってはしゃぐミカ子と花沢さん。
確かに今までへなちょこだった『素人剣術』が、達人めいた『剣術』に変わった事で、ようやく見た目と中身が釣り合ったような感じだ。
装備がいくら強くても、使う人間の技能がヘボじゃ意味ないからな。
「おーい! 楽しいのは分かるが、あんまり過信しすぎると怪我するぞー」
「分かってるって! だいじょーぶ大丈夫!」
ほんとに分かってんのかよ。……あんまり無茶させないようにしないと。
ともあれ、心の傷と引き換えに新装備とスキルを手に入れた俺たちのダンジョン探索はさらに加速していくのだった。
コアラは犠牲になったのだ……
久々のヒロインズのバストサイズ公開!
ミカ子 身長170センチ Eカップ ※レベル21現在
花沢さん 身長163センチ Iカップ ※レベル24現在
ついでに光岡先生 身長176センチ Fカップ ※レベル??
もひとつおまけにマックスも 身長189センチ Aカップ ※ただのデブ




