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閑話 魔法少女マジカル☆カレン プリティ☆メイクアーップ‼ ※イラスト有り!

こんなタイトルだが、お誕生日回である ※ちょっと長め



 朝、目が覚める。

 時刻は5時ぴったり。いつも通りだ。


 アタシの朝は早い。

 なにせパパもママも探索者で、しかも有名人だから、家にいないことの方が多いからだ。

 今だって2人はアメリカに出張中だし、朝の準備は全部自分でやらなきゃいけない。

 とはいえ、今は春休みなのでそれほど早起きしなくてもいいのだけど、身に付いた生活習慣のせいかどうしても朝は毎日5時には目が覚めてしまう。


 顔を洗い、朝ご飯を作って食べ、食器を洗って歯を磨いて、着替えて、最後にメイクをすれば、もう7時くらいにはなってる。


 今日はお休みだからメイクはいつもよりかなり抑えめだ。

 だけど、お休みの日でもメイクしないというのだけは絶対にあり得ない。

 だってこれは、アタシのアイデンティティだから。


「よし、ばっちり!」


 鏡に映る自分は今日も可愛い。当たり前だ、そうなるようにメイクしたんだから。



 メイクをするようになってから、アタシは変わった。

 大好きだったパパが死んでしまい、ママは情緒が不安定になってしまって、あの頃のアタシはどうしようもないほど落ち込んでいた。


 いつも下を向いていたせいで猫背気味になり、髪も切りに行かなかったから前髪も伸び放題で、そのせいで幽霊ミカ子なんてあだ名を付けられてイジメられてしまうくらいには、あの頃のアタシは酷かった。


 でもママが今のパパと出会って、少しずつ元気になって、アタシもそんなママにつられるみたく少しずつ元気になっていった。

 そんな時、中学の友達から勧められたのがメイクだった。

 初めて自分の唇に口紅を塗った時の感動といったら。口紅1つでまるで別人みたいだと、鏡に映る自分の顔に驚いたものだ。


 それからアタシは、自分を可愛く見せるための努力を始めた。

 口紅の引き方から、アイシャドーの入れ方、ファンデの付け方。ママにも手伝ってもらって、どんどん覚えた。


 ファッション雑誌にも手を出した。

 そこで可愛い服の選び方とか、可愛く自撮りする方法、男の子からの印象を良くするちょっとしたテクニックなんかを学んだ。

 そうこうしているうちに、なんだかどんどん見た目がギャルっぽくなっちゃったけど、アタシは案外今の自分を気に入っている。



 家から学校までは結構遠いので、いつもならもう出なければいけない時間だけど、何度も言うが今は春休み。つまり自由だ!


「さーてと、ダラダラ……するのは勿体ないし、宿題でも片付けますか」


 独り言を言いつつ部屋に戻ったアタシは、春休みの宿題を机の上に広げた。

 と、ここでアタシのスマホに誰かからラインが送られてくる。

 見ると送り主は……レンちゃんだ! 珍しい。



 カレン:『起きてる?』


 ミカ:『起きてるよ』


 ミカ:『どしたの? 珍しいじゃん』


 カレン:『ごめん』


 ミカ:『いや謝ることじゃないし(笑)』


 ミカ:『それで? どったの?』


 カレン:『あのね?』


 カレン:『今日、誕生日なの私』


 ミカ:『マ!? ごめんアタシ何も準備してない!』



 っていうかレンちゃんの誕生日が今日という事自体初耳だ。

 今日は3月25日。

 そっか、レンちゃん早生まれだったんだ。

 プレゼントは今から用意するにしても……まだどこも開いてないか。どうしよう。



 カレン:『私が悪いから気にしないで!』


 カレン:『じゃなくて! ミカちゃんに頼みがあるんだけど』


 ミカ:『頼みって?』


 カレン:『メイクを教えてほしいです』



「おおっ! とうとうレンちゃんもオシャレに目覚めたか!?」


 あのレンちゃんが! いつもリップクリームくらいしか塗ってこない、ちっちゃくて可愛いすっぴん美少女のレンちゃんが! とうとうメイクを!


 ……いや、バカにしてるわけじゃないよ?

 ただ、何と言うか、感動的? みたいな? 巣から飛び立つ雛を見守る気分? みたいな?

 まあ、兎に角、そんな感じだ。友達が新たな一歩を踏み出そうとしている。これが嬉しくないわけが無い。



 ミカ:『おk!』


 ミカ:『任せて』


 ミカ:『大変身させちゃる!』


 ミカ:『ウチ来る? それともそっち行った方がいい?』


 カレン:『できれば来てほしいかな』


 ミカ:『おk』



 という訳で、アタシはレンちゃんのお家にお呼ばれされることになった。

 家の近くの駅の場所を聞き、11時に駅で待ち合わせの約束をしたアタシは、早速レンちゃんの家に着ていく服選びに取り掛かった。



 ◇ ◇ ◇



「あっ! レンちゃ~ん!」


 待ち合わせ場所の駅のロータリーでミカちゃんがこちらに向かって手を振る。

 私も手を振り返すと、ミカちゃんは笑顔でさらに手を振って私の方へと駆け寄ってきた。


「久しぶりってほどでもないけど、久しぶり~!」


「あはは、そうだね」


 今日のミカちゃんはいつも以上にメイクが決まってて、服装も制服じゃなくて私服だから、なんだかティーン誌のモデルさんみたいだ。

 道行く男の人たちも、ミカちゃんの可愛さに思わず目を惹かれている。


「あれっ? レンちゃんまた背伸びた?」


「うん」


「しかもまた可愛くなってるし!」


「そ、そうかな。えへへ、ありがと」

 

 こうも真っすぐ褒められると照れてしまう。


「あ! おっぱいはちょっと小さくなったよ!」


「な、なにをー! 少しアタシにも分けろーっ!」


「きゃーっ!」


 揉まれてしまった。恥ずかしい。

 というか、ミカちゃんだって小さくはないし、むしろ十分あると思うのだけど。


「ぐぬぬ……相変わらずでっかいなー。何カップ?」


「……あ、I」


「あい!? ……って、A、B、C、D、E、F、G、H……す、すっご。爆乳じゃん」


 そ、そんな、指折り数えなくてもいいのに。


「重たいだけだよこんなの。肩も凝るし」


「贅沢な悩みだなぁ。ま、それよりもだよ。とうとうレンちゃんがメイクしたいっていうからさ! アタシ、道具いっぱい持って来たんだ! あ、当然全部未使用品だからね?」


「う、うん」


 そういうミカちゃんの背中には、確かに大きく膨らんだリュックがあった。


「あ、あの、今日はよろしくお願いします」


「おけ。大変身させちゃる! そんで? なんで急にメイクしようと思ったん?」


「えっとね。今日、私、誕生日なんだけど……」


「あっ、そうだ! お誕生日おめでとう! これプレゼントね」


「えっ? あ、ありがとう!」


 ミカちゃんはポケットの中から小さなコンパクトを取り出して、それを私にくれた。

 家族以外からプレゼントをもらうなんて初めてで、ちょっと涙が出そうになる。


「……嬉しい。大事につかうね」


「うんうん! メイク道を歩み始めた友達へのアタシからのはなむけだよ。あ、それでそれで? 理由理由」


「あ、うん。今日ね、おばあちゃんがパーティーを開いてくれるっていうんだけど、そこに加苅くんも呼んだらって……」


「ははぁん? なーる。って言うかすでに家族ぐるみでのお付き合いなのね……でも彼氏彼女の関係では無い、と?」


「……どう、なんだろう」


「およ? 何か進展でもあった感じ?」


 そう言われると、私たちの関係って、なんなんだろう?

 男女のお付き合いをしているのとは違う。けど、じゃあ友達かと言われると、それ以上のような気もするし……。


 でも、彼が私の事をどう思っているのかを、私は知らない。

 気になる。けど、やっぱり知りたくないような………………。


「もしもーし? レンちゃん? 大丈夫?」


「……えっ? あ! う、うん。ごめん、大丈夫」


「ふむ? 色々複雑な感じ? よければ相談乗るよ?」


「……うん、ありがとう。……でも、これは、私が乗り越えなきゃいけない問題だと思うから」


「……そっか。ま、アタシはいつでも相談に乗るからさ。困ったら頼ってくれていいからね」


「……うん。ありがと、ミカちゃん」


「いいってことよ! んじゃ、レンちゃん家にしゅっぱーつ!」


 私はミカちゃんを連れて、家までの道を歩き始めた。



 ◇ ◇ ◇



 ダンジョンが再編成期間に入り、残りの春休みはゆっくりと過ごそうという事になったため、俺は久々にネトゲの方に手を出していた。


 というか、『睡眠短縮』が神スキルすぎてヤバい。

 睡眠時間が一日1時間で済むようになったから、夜中の時間を丸々ゲームにつぎ込める。


 お陰で随分と(ゲーム内の)レベルも上がり、ついでに超レアアイテムまでゲットしてしまった。

 間違いなく今が、俺の人生の中で一番充実している気がする。


 と、高レベルダンジョン(何度も言うがゲーム内のだ)から帰還してアイテムを整理していると、ここで俺のスマホにラインが入る。

 送り主は……ミカ子だ。何の用だろう。



 ミカ:『今暇でしょ?』


 レイジ:『なぜ決めつける』


 レイジ:『まあ、暇だけど』


 ミカ:『やっぱり』


 ミカ:『今レンちゃん家にいるんだけど』


 ミカ:『今日レンちゃん、誕生日なんだって』


 ミカ:『で、パーティーやるから、かがりんもおいでって』



 はぁ!? なんだそれ。初耳なんだが。

 つーかそんな急に言われてもプレゼントなんて用意できないぞ。

 時刻は17時を過ぎたばかり。今から街まで買いに行ってたら確実に夜になってしまう。

 

 レイジ:『今から?』


 ミカ:『今から。ちな急な話だからプレゼントは気にしなくてもおkだって』


 レイジ:『そっか。じゃあ今から行く。飯は?』


 ミカ:『ご馳走! レンちゃんの手作り!』


 レイジ:『すぐ行く!!!!』


 ミカ:『笑』


 さて、ゲームなんてやってる場合じゃなくなったな。

 俺はパジャマのままだった服を着替えて、母さんに晩飯は食べてくると伝えてから、家を飛び出した。

 うっひょう! 花沢さんの手料理だ!



 ◇ ◇ ◇



 レンちゃんとおばあちゃんの3人でお喋りしながら待っていると、玄関の方でチャイムが鳴った。

 インターホンの画面を見ると、制服姿のかがりんの姿が。って、なんで制服!?

 ……ま、どうせ女子のお誕生日に着てくる服が分からなかったからとか、そんな理由なんだろうけど。


「かがりん来たよ!」


「う、うん……っ」


「大丈夫! ばっちり可愛いから! 自信持って!」


「ほ、本当……? 私、ブスじゃない……?」


 レンちゃんが大きな瞳を潤ませながら上目遣いに聞いてくる。

 くっ……! なんて可愛さだ。思わず抱きしめたくなっちゃう。

 我ながら完璧な仕上がりに惚れ惚れする。


 今日のメイクのポイントはズバリ、素材を生かしたナチュラルメイク。

 レンちゃんお肌超綺麗だから、ファンデやチークは無くても全然OK。むしろ邪魔。

 だからちょっぴり目元にシャドー入れて、マスカラで少しまつげを足して、抑え目な色の口紅を引けばもう完成。

 たったそれだけで、びっくりするぐらいのシンデレラガールの爆誕ってわけよ。


 服装はクローゼットの中にあったおしゃれな白いブラウスと赤いチェック柄のミニスカ。

 そこに黒のニーソックスと大きな赤いリボンを足して、お人形さんチックに仕上げてみた。


 ……アタシも、もうちょっとレベル上げてみようかな。流石にこの可愛さはズルい。


「こんな美少女にブスだなんていう奴はそれこそ目が腐ってるって。はーい、どうぞー!」


「……っ!」


「お邪魔しま────」


 2人で玄関まで出て、かがりんをお出迎え。

 大変身したレンちゃんを見て、かがりんは息をのんだ。

 おーおー、絶句してる。


「どうだ! アタシがメイクしてあげたんだぞ!」


「……あっ、え、えっと……その…………と、とても、良いと……その、お、思い、ます…………」


 あっはは! かがりん顔真っ赤!

 普段クールっぽいのに、意外と可愛いトコあんだね。


「……よ、よかった……です……」


 あらまぁ! レンちゃんまで顔赤くしちゃって! か~わ~い~い!

 見てるこっちまでニヤニヤしちゃう。


「ふふふ、さあさあ奥にご馳走がありますからね。どうぞ上がって?」


「あっ……! は、はい! お邪魔します」


 おばあちゃんに招かれて家へと上がるかがりん。

 まだ少し顔の赤いかがりんに、私はちょっかいをかけずにはいられなかった。


「むふふ……! かがりんってば、意外と初心なんだねぇ?」


「う、うるせー! お前こそ意外と乙女で泣き虫じゃねぇか!」


「ちょ!? べ、別にアタシ泣き虫じゃないし!」


 けど、特大のブーメランが帰ってきた。くそう。


 この後、レンちゃんとおばあちゃん、それからアタシも少し手伝ったご馳走を囲んで始まったお誕生日パーティーは、終始和やかなムードに包まれ、大成功に終わった。


 やったね!



挿絵(By みてみん) 

なお、花沢パッパとマッマは日本との時差をうっかり忘れていた模様


ついでにブクマと評価もぽちっとしてくれると嬉しいなって|д゜)チラッ



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