おいでやす京都、モフモフ大パニック 7
修学旅行のお約束
圧 倒 的 お 風 呂 回ッッ‼‼
それと、唐突ではありますが試験的にタイトル変えてみました。最近ダイエット要素どっか飛んでっちゃったからね……(遠い目
もし変えたタイトルが好評なら旧題『』を削除してそのままで、不評なら元に戻します。
もし「こっちの方がいいんじゃない?」っていうアイデアがございましたら随時募集しておりますので感想からどうぞ。
夕食後、部屋に戻った零士たちは持ち込んだゲームでダラダラと遊びながら時間を潰していた。
モンスターを狩るのにも飽きてきたので、次は零士が持ち込んだトランプでババ抜きをやることになった。
「そういや、もう大浴場使えるんだっけか」
時刻は午後の9時。サッカー部の吉田が部屋の時計を見て呟く。
修学旅行中は大浴場と部屋の風呂、どちらを使ってもよいことになっており、大浴場の使用時間はクラスごとに分けられていて、3組は9時から10時までの間がそうだった。
なお、ここの大浴場は外国人観光客に配慮して水着の着用も可能なので、見られて恥ずかしいということもない。
「花沢さん、どっち入るんだろ。加苅お前、彼氏なんだろ? なにか聞いてないの?」
漫研の鈴木が吉田の手札から一枚引いて、零士に手札を引かせながら訊く。
「聞いてたとしてもお前らには絶対教えねーよ」
零士が一枚引いて、揃った札を捨てながら言った。
「ケチ!」と鈴木が口を尖らせ、
「そうだそうだ! リア充爆発しろ! 美少女の独占を許すな!」吉田がそれに便乗する。
なお、吉田は髪形だけカッコイイ雰囲気イケメンで、つい最近彼女と別れたばかりなので、完全にただの僻みだった。
「ほぼ毎週してるんだよなぁ、分身が」
零士から一枚引いたトミーが乾いた笑いを漏らしつつ手札を捨てる。
「盛大に自爆しまくってるよね。無慈悲なくらいに。……あ」
マックスがトミーが隠し持っていたババを引いてしまい、手札をシャッフルして吉田に引かせる。
「あ、畜生! ……で、もうヤッたのか?」
ババを引いた吉田が爆弾発言を投げ込む。
「や、ややややっ!?」顔を真っ赤にして動揺する零士。
「なんだその反応。野郎が顔赤くしても需要ねーよ。……で? 実際どうなの?」
吉田のババを引いた鈴木が手札をシャッフルしながら鋭い目つきで訊いてくる。
全員の視線が零士に集まる。
「…………ま、まだ、一回キスしただけ」
手札が揃い一抜けした零士が無言の圧に耐えかねて正直に白状した。
「キスはしたのかよ、死ねっ!」吉田が中指を立て、
「うらやま死刑」鈴木が親指を下に向け、
「ギルティ」トミーもそれに同調する。
「お前らなぁ……」
言いたい放題言いやがって。呆れた零士が溜息をつく。
じゃあお前ら華恋さんがブスでも同じこと言えんのかよと言ってやりたかったが、答えは聞くまでもなく予想できたのでやめておいた。
「で、味は? やっぱりいちごジャム?」と鈴木。なにがやっぱりなのかさっぱりだが、発言からしてすでに童貞臭い。漫画の読み過ぎだ。
「いや、血と薬の味だった。……でも少し甘かったかな」
「「「なにそれどういう状況!?」」」
吉田と鈴木とトミーの声が重なる。
もうそっちの方が気になってしまい、ババ抜きどころではなくなってしまった。
「じゃ、僕はそろそろ温泉入りに行こうかな」
マックスが荷物の中から着替えとタオルを持って、初めての温泉にワクワクした様子で立ち上がる。
これ幸いとばかりに「あ、じゃあ俺も」と、三人の視線から逃げるように零士もそそくさと着替えを持って部屋から出ていこうとする。
まるで忍者のようにあっという間に部屋からいなくなった零士を追いかけて、「おい待てよ!」「あそこまで喋って逃げるとかないだろ!?」と、トミーたち三人も着替えの入った袋片手に部屋から飛び出した。
◇ ◇ ◇
「おぉ~! 結構広いね!」
「すごい、窓から滝が見えるよ!」
水着に着替えた美香と華恋が脱衣所を出ると、ステンドグラスに照らされた広々とした浴室が二人を迎えた。
二人のあとに続いて同室の三矢と相沢と黒崎が入ってくる。
洗い場では先に入ってたクラスの女子たちが数名身体を洗っており、華恋たちも温泉マナーに従い、湯船に浸かる前に鏡の前で身体を洗う。
「にしても、二人ともほんっとスタイルいいよねー」
金髪ギャルの三矢(Cカップ)がボディソープを泡立てながら、美香たちのメリハリボディを横目で見ながら溜息交じりに言った。
「ねー。なんかもうこの二人見てると、探索者って色々ズルいなぁってつくづく思うもん。私も資格取ろうかな……」
セミロングの黒髪をシャワーで濡らすぽっちゃり気味な相沢(Fカップ)が、自分のお腹の肉をつまみつつ憂鬱そうに呟く。
そのさらに横で「胸があるだけまだいいじゃない」と無い胸を死んだ魚のような目でペタペタ触るのは、中学生と言っても通用するくらい背の低い小動物系女子の黒崎(かなりまな板だよ!)だ。
自然と三人の視線はクラスの中でもダントツに大きい華恋の胸(Jカップ)へと集まる。
シミどころかほくろ一つない輝くような白い肌。手足はすらりと長く、ムダ毛の一本すらも見当たらない。
大きな胸とお尻に反比例するように腰回りはきゅっとくびれており、全体的なバランスもまさに奇跡としか言いようがないほど美しい。
華恋の隣で髪を洗っている美香へと視線が移る。
こちらも華恋に負けず劣らずのメリハリボディで、引き締まった腰回りからお尻にかけてのラインは華恋にも勝るものがあった。
それでいて胸もちゃんとある(Fカップ)のだから、本当に探索者という奴らはずるい。ズルすぎる。
「……あんまり見られると恥ずかしいよ」
三人からの羨望の視線に華恋が自分の身体を抱き寄せてもじもじする。
そんな仕草も同じ高校生とは思えないほど色っぽくて、「ああこりゃ勝てねぇわ」と三人は諦めたように深々と溜息をついた。
結局、悔しかったらレベルを上げて自分も綺麗になるしかないのだ。努力でどうにかなるだけまだ救いはある。
今度の冬休み中に資格を取ろうかと本気で悩みだした三人より一足先に身体を洗い終えた美香と華恋が、広い湯船にゆっくりと肩まで浸かる。
「おぉー、やっぱ浮くねぇ」
「美香ちゃんだって」
お湯に浮かぶお互いの胸を見て二人が笑う。
「ねえねえ、ちょっと触ってみていい?」
「い、いいけど……優しくね?」
両脇から寄せて持ち上げてみる。しっとりと指に吸い付く確かな重み。もちもちでフワフワな感触はいつまでも触っていられそうなほど柔らかい。
「うわー、やっぱり結構ずっしりしてるね。こりゃ肩凝るわけだ」
「最近はそうでもないよ? たぶん、胸を支える筋肉が強くなってきたんじゃないかな」
「やっぱ見えない部分も確実に強くなってるんだねー、アタシら」
むにむに、もにゅもにゅ、ぼいんぼいーん。
触ってるうちにだんだん楽しくなってきた美香の手つきが徐々に激しくなっていく。
「あはは、くすぐったいよ」
「いや、これホントいつまでも触ってたくなるわ。男子がおっぱい好きな理由ちょっとわかったかも」
「もー! 美香ちゃん触りすぎ! おかえしっ!」
「きゃー!」
いつまでも自分の胸から手を離そうとしない美香の胸を華恋が揉み返す。
修学旅行特有の高揚感が二人をいつも以上に大胆にさせていた。
「へー、他の人の胸って触ったことなかったけど、こんな感じなんだね」
「あ、だめっ、これ思ったよりくすぐったい! あははは!」
少し芯の残る形の良い胸を優しく持ち上げて、感触を確かめるようにむにむに揉むと、慣れない感覚に美香がけらけら笑い出す。
美少女同士の戯れに、いつしか二人が浸かっているお湯がキラキラと光りはじめる。
探索者は高レベルなってくると、このように行動の一つ一つが魔法的な効果を及ぼすようになってくる。
例えば、藤堂儀十郎の顔面を映したどぶ川が清流に変わったり、彼の笑顔が人々の心を浄化してしまうのも一種の魔法現象だった。
今回は二人の感情が高まったことで過剰に生産された魔力が漏れ出し、お湯に溶けた魔力が魔法となって現れたのだ。
して、その効果は、
「やばっ! お肌超つるっつるなんですけど!」
「ニキビが消えた!」「そばかす治った!」「ムダ毛が光になって消えた!?」
「奇跡、奇跡が起きたんだわ!」「ありがたやありがたや~」
ニキビ改善、美肌効果、ムダ毛の永久脱毛にその他諸々の健康増進効果と、ちょっとやりすぎなくらいのスーパー美肌の湯になった女湯で、奇跡を体験したクラスメイトや女性客たちが歓喜の声を上げて美少女二人を拝み倒す。
「な、なんか大変なことになってきちゃったね……」
「ど、どうしよう」
「こらこらお前たち、あまりはしゃぐと他のお客さんの迷惑に……ってお湯が光ってる!?」
「「あ、先生!」」
いよいよ収拾がつかなくなってきた女湯に水着姿の光岡が入ってきて、奇跡の現場を目の当たりにして驚きに目を見開く。
結局このあと、噂を聞きつけた他のクラスの女子たちまでもが押し寄せてきて、女湯の前は大混雑。一時旅館は騒然となったが、数時間後にはお湯に溶けた魔力は霧散してしまい、魔法の効果も消えたため騒ぎは自然と鎮静化していった。
そのことで華恋たちは学年主任と担任の光岡と一緒に旅館の女将に頭を下げることになったが、「お客様からは大好評だったし、おかげで私もお肌つやつやになったから」と、笑って許してもらえたのだった。
◇ ◇ ◇
修学旅行二日目。
この日は朝から各班ごとに京都市内を自由に散策することになっていた。
零士たちの班は、マックスと日向・朔夜の強い希望もあって、最初の目的地である伏見稲荷大社へと足を運んだ。
大鳥居を潜ると参道には屋台がいくつも並んでいて、見事に色付いた山の紅葉と有名な千本鳥居を一目見ようと訪れた外国人観光客や修学旅行生で大いに賑わっていた。
「ワァオ! 写真で見た通り、いや、それ以上の迫力だね! すごいや!」
東洋の神秘に興奮を隠しきれないマックスが本殿の屋根の裏をじっくりと眺めながら、言葉にならない感動に目を輝かせる。
「うーん、はじめて来たのに実家に帰ってきたようなこの安心感。やっぱりここは拙者たちの領域みたいでごじゃる」
「力がみなぎる」
子供の姿に化けた日向が人々の信仰を感じ取ったのか、気持ちよさそうにぐっと背伸びする。
なお尻尾と耳は目立つため今は隠してあった。
「むむっ? なーんか上の方から変な気配がするでごじゃるな」
「モヤモヤする」
すると、周囲に満ちる神力の中に混じる微かな異物感を感じ取った日向と朔夜が山の上の方を向いて言った。
「変な気配?」華恋が首をかしげる。
「うん。なんていうか、こう、モヤっとした感じというか、力を横取りされてるみたいな……? とにかくあんまりいい感じはしないでごじゃる」
「こっち」「あっ、おい!?」
朔夜が零士の手を引いて千本鳥居のさらに奥へと連れていく。
日向も華恋の手を引いてその後ろに続き、そのさらに後ろを美香たちが追いかける。
四ツ辻を三ノ峰方向へ進み、二ノ峰と一ノ峰の中間あたりまで来ると、零士と華恋にもなにやら周囲の気が淀んでいるのが感じ取れた。
「あっち」
「いや、あっちって道ないじゃん」
朔夜が指差す先を美香が見るが、そちらは山頂へ向かう階段からはずれた山の中だった。
「道が無くても突き進む! 行けばわかるさ! 行くぞーでごじゃる!」
「いや、猪木かよ!? あ、おい待てって!」
ここまで来ると人影もまばらになり、それをいいことに日向と朔夜は九尾状態へと戻ると道なき道をするすると進んで行ってしまう。
トミーが引き止めようとするが、二匹に止まる意思がないことが分かると仕方なく彼らも境界に張られたロープを跨いで山の中へ入っていく。
しばらく険しい山の中を歩くと、やがて木々の間に開けた空間が現れた。
そこは一般には公開されていない古いお社のようで、苔むした阿吽の稲荷と、お社の朽ちかけた感じから長い間人間の手が入っていないらしいことがわかった。
そして朽ちかけたお社の前で零士たちを出迎えたのは、
「ンニャーオ」
大量の猫と……
「やっぱりかよ……」零士がうんざり気味に肩を落とし、
「まあ、こんな気はしてたよ」マックスがやれやれと肩を竦め、
「知ってた」トミーがニヒルに笑い。
「ですよねー」美香が顔を引きつらせ、
「またなの……」華恋が深々と溜息をついた。
全員の視線の先、猫たちに囲まれた朽ちかけた社の中で彼らを待っていたのは―――――――黄色く渦巻く異様なダンジョンだった。
水着着てるからセーフ! セーフ!
美少女同士のきゃっきゃうふふには魔力が宿る。当然だね。




