表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/50

反撃

 海の上の大船団は、まるで蟻食に襲われる蟻のようだった。一方的に撃沈され、逃げ惑う船達。ものの30分もしないうちに20隻もあった船はすべて撃沈された。


 そもそも武装を持たない貨物船と、大砲を沢山積んでいる軍船とでは勝負にならない。勝利した軍船は港の入口までくると、港の入口に横一列で並び、湾口を閉鎖したことを行動で示していた。


 将軍は一連の出来事を望遠鏡で見ていた。


 将軍が大きなため息と共に、応接椅子に戻っていったので、アレクも椅子に戻った。なぜか将軍は目頭を抑えて、今にも泣き出しそうな様子だった。


「お、俺の娘が首長の第二夫人として、先日輿入れしたばかりでな。あの船に乗っていたんだよ・・」


 アレクが聞かずとも将軍は理由を話してくれた。生きていれば船の木片に捕まって救助を待てるが、今は湾口が塞がれていて、撃沈された場所まで行って助けることができない。救出まで時間がかかればかかるほど、生存率は落ちていくだろう。


 アレクは深く同情し、案を提示した。


「あのタウロスの軍船を撃沈しましょうか?」

「で、できるのか!?」

「出来ます。しかし残念ですが、助けに行っても何も無いかもしれませんよ?」

「お願いしたい!私が出来ることは何でもしよう!」

「分かりました。それでは今より将軍と兵士は僕の配下に入って頂き、タウロス撃退の協力をしてください」

「な、なんだと!?・・・まあそれも構わないか。もとよりこれからタウロスと戦って死にゆく俺達だからな。英雄とくつわを並べるのも光栄か」

「それでは、これから千人長と百人長を、港に集めて下さい」

「了解した」

「それから」

「まだあるのか?・・」

「将軍の名前を教えて下さい」


 将軍の名前はマフムードという名前だった。アレクは早速、マフムード将軍と港に向かった。マフムードは近くの兵士に、千人長と百人長などの兵士長へ港に集まるように指示すると、15分もしないうちに50人近くの人が集まった。アレクはマフムードから兵士長に、新体制と方針の説明を依頼した。


「兵士長の諸君!たった今より我軍は、このアレク・エトワール卿の傘下に入り、タウロスを撃退しこの街を守ることになった!」


 マフムードの言葉を聞き、全員に動揺が走った。名前を知っているものは驚愕と不審を、名を知らぬものは子供の容姿に混乱していた。


「まずは手始めに、アレク殿に5隻の軍船を撃沈して頂き、攻撃された脱出船の生存者を探しにいく!」


 もちろんマフムードも全部は信じていないが、良いことなら信じたいという心境だったのだろう。しかしそれ以上に兵士たちからは「軍船も無いのにどうやって?」という意見が聞こえていた。


「はじめまして!兵士長の皆様。それでは早速軍船を撃沈します」


 アレクが言った言葉に、全員が当惑の眼差しを投げかける。しかしアレクが軍船の方を向いて手を伸ばし、炭を作ったときのように軍船に強力な炎を想像し念じると、軍船の1隻が巨大な炎を上げて燃えだした。

 アレクは軍船が魔力の行使できる範囲にあった事に安堵した。


 アレクの手が2隻目の船に向けられ、炎を念じると同じ様に燃えだした。

 それを丁寧に繰り返し、5隻の船は燃え尽き沈んでいく。


「軍船は沈みました。早く救援の船を出して下さい!」


 マフムードも兵士長達も呆然としていたが、アレクの大声によって我に還ると、近くの船乗りたちに声をかけて、急いで救命船を出した。貨物船が撃沈された場所は遠く、行くまでにも時間がかかる。あとは待つしか無い。

 救援は兵士に任せて屋敷に戻りませんか、とマフムードに言って2人は屋敷に戻っていった。


 マフムードは執務室に戻っても、ベランダからまだ少し燃えている軍船と、救援に向かった船をみていた。アレクは時間も無いので、マフムードを呼んで応接椅子に戻すと、これからの作戦について相談したいと言った。


 さすがにマフムードも作戦という言葉を聞き、冷静になってアレクの顔を見始めた。


「マフムード将軍。私は約束を守りました。あなたはすでに私の配下です。しっかりして下さい」

「す、すまない」

「早速ですが、タウロス軍の兵の情報について教えて下さい」


 マフムードの話では、一般的なタウロス軍の兵は、指揮隊1割、騎馬が3割、歩兵が4割、弓が1割、荷駄隊1割らしい。大砲隊は長距離の行軍に向かないため、今回の戦争では確認されていないようだ。


「やはり平地での戦闘を優先して騎馬が多いようですね。こちらは兵種はどのような数ですか?」

「基本的には街の防衛のため、指揮1割、歩兵3割、弓6割です」

「なるほど、防壁からの弓兵がほとんどなんですね」


 アレクは次に街と周辺の地図を依頼した。兵士の1人が地図を持ってくると、応接机の上に地図を広げる。アレクは地図に穴が空くほど見た。どうやら到るところに小さな丘がある。南に伸びている街道もその丘には登らず、回り込むことで街道は平坦に進めるようになっている。


 敵はまさにこの街道から進軍してくるのだろう。道幅にもよるが2万の兵が行軍すれば約2kmの行列になる。アレクはマフムードに頼んで、街道沿いの丘を包むように馬防柵を張るように指示をした。但し距離は2km先までの丘のみと補足する。地図を見ると20個くらいの丘に設置することになるだろう。


 それと、その丘を回り込む場所に、大きな落とし穴の設置とその周辺の馬防柵を依頼した。場所はすべてアレクが指定した。これで平地の準備は良いだろう。次に街の城壁の周りにも人防柵を設置するように依頼した。

 しかしアレクが提案したものは、城壁を囲むような長いものでなく、極端に短い人防柵であり、隙間だらけで何層にも重なる変わった陣形で、普通に横から入っていけるものだった。


 マフムードはこんな人防柵に意味があるのか理解できなかったが、アレクの指示に従った。


 アレクとマフムードが次々と、防衛のための指示を執務室から出していると、突然執務室に飛び込んでくる女性がいた。


「お父さん!!」

「ファフリ!!」


 マフムードとファフリは強く抱きしめあって、再会を喜んでいた。どうやら娘は生きていたらしい。アレクも安堵する。アレクは2人に気を使い「続きは明日に」といって、出て行こうとするとマフムードがこの屋敷を使ってくれと言って、兵士に指示をさせた。


 アレクは部屋を兵士と一緒に出て、馬車と連れの仲間も連れてきたいと言うと、大きい部屋を案内してくれた。アレクは部屋の場所を聞いた後、屋敷を出て宿の部屋に戻り、リディアとエカテリーナに場所を移動すると伝えて、馬車置き場に行った。

 馬車置き場ではマリーがネフェルタリから弓を習っていた。


 5人はそのまま宿を出て、屋敷に向かっていると、なぜか街は少し落ち着きを取り戻しているようにみえる。来たときのように、馬車を走らせている人がいないからだろうか。アレクは屋敷の馬車置き場に馬車を止めて、兵士に案内された部屋に入り、4人に今までの経緯を簡単にまとめて説明した。


「ふふふ!アレクちゃんらしいねー!やっぱり英雄はそうじゃないと!」

「アレク様の決断を尊重しますが、とても不安です」

「てゆーか、この数時間でこの街の軍の頭になったということかい?」

「本当に、タウロス軍とアレク様率いる街の守備隊が戦うのですか?」


 一度に質問が来たが、1つ1つ答えていった。それと戦闘にはマリーとネフェルタリにも参加して欲しいというと、ネフェルタリには傭兵料金でいいよと言われた。


 アレクはリディアとエカテリーナには、この屋敷の把握とこの街の詳細を調査してまとめて貰うように頼んだ。念の為、部屋の前に立っていた兵士に頼んで、明日からリディアとエカテリーナに護衛を付けてもらえるように頼んだ。


 その日はマフムード親子と千人長5人、アレク達の計13人で夕食を一緒に取ることになり、それぞれの自己紹介の後、救出の結果と今後の方針についての話しをしながらの小さな晩餐会を開いた。席順はマフムードの指示により、アレクが主人席に座ることになった。


 マフムードの話では、救出で助けられた人数は5人で、ほとんどの人は死んでしまったようだ。娘のファフリ以外の4人は水夫だけだった。また各兵士長から末端の兵隊まで、今後の体制と方針がしっかり伝わり、タウロスと戦う機運が街に生まれてきているという話だった。


 確かに首長がまっさきに逃げ出し、取り残されたら普通は途方にくれてしまうだろう。頭が決まって戦うことになれば、やることは明確で迷うこともない。後は勝てる気になれるかだ。


「みなさん、タウロスの次の攻撃に勝つのは難しくはありません。しかし次の戦いの勝ち方に、この国の存亡がかかっています。敵はサラディアの民を全員奴隷にしようとしているのです。奴隷の生活は惨めで悲惨です。家畜以下なのです。私はこのサラディアの民を奴隷にする、タウロスが許せません。次の戦いをこの国の希望になるような勝利にしましょう」

「「「おおおーーー!!!」」」


 マフムードやファフリ、各千人長達の反応は激しかった。どうやら前の首長の頃から不満も溜まっていたようだ。アレクはまた大げさに言い過ぎてしまった気がしたが、きっと今これは必要だろうと思って、自分で納得した。


 晩餐会は大成功に終わったが、アレクは部屋に戻って、再度の作戦検討に入った。まずこの戦争がどうやったら終わるかについてだ。

 タウロスが戦争を開始したと言ってもタウロス全体ではない。東部州だけだ。そもそもタウロスは連邦と言っているが、3つの州はほとんど独立した国であって、昔はお互いに戦争をしていた国なのだ。


 そのため、今回の戦争は東部州だけの判断で行われた可能性が高い。もし合同であれば、必ず他州も兵を出さないと領土分割や、報酬分割で揉めるからだ。そうなると、なぜ東部州が他の西部州や中央州と共に戦争を起こさなかったのか。

 それはどちらかと戦うと、2対1の構図になりやすいためだろう。まさに3つ巴の典型的な状態だ。


 きっと現在東部州は他の州よりも若干国力で上回っているのだろう。下回っていれば、他国に戦争をしかけて兵力や国力を落とすことはしない。上回っている状況の今だからこそ、余力でサラディアを飲み込み他の2州が組んでも互角になれる状況を作りたいのだろう。


 特にサラディアには港も多く、貿易が盛んだ。東部州の港は他国とも遠い上に、港の数も少ない。サラディアは首長国というぐらいで統一された反撃も予想されず、各個撃破の良い的なのだ。


 その意味では、少ない戦力で最大の成果を得られる戦争と言える。逆に言えば状況から見て素早く占領して国力と兵力を調達できなければ、西部州と中央州が危険を察知し、連合を組んで東部州に攻め込む危険がある。

 そのためサラディアの民全員を奴隷として、手っ取り早く内戦に向けた兵の数を揃えるつもりなのだろう。要するに東部州の本当の目的はタウロスの統一なのだ。


 であれば各地の反乱を促し時間を稼ぐことは、東部州が他の州に攻撃される危険が増すため、撤退に追い込める可能性が高い。または東部州の多くの兵力を減らし、継続戦闘が出来ないほどの損害が増える状態に追い込むことが、この戦争の終結地点だろう。


 そして戦争終結後の平和を維持するためにも、統一国家が必要になることに考えを進めていた。



 翌日、全兵士を集め、5mの土人形を皆に見せた。兵士にはこの人形はアレクが作ったもので、近づかなければ襲ってこないことを伝える。兵士の多くはその人形を見て恐れを抱いていたが、アレクが人形の近くによっても、人形は何もせず壊れてしまったので、兵士も少しは安堵したようだ。


 1度でも見ておけば、突然現れても恐怖はかなり緩和されるはずだからだ。


 その日から兵士たちは、柵と穴掘りを実行し、アレクは人形作りを行う。この人形は歩く代わりに土を拾って投げる事を覚えさせたもので、魔石は丘の上の柵の中に埋めておいた。一応攻撃はするが知能は無いので、敵を驚かせるのが目的だ。

 本当は兵士として戦わせたいが、現状ではそのような高度な人形は作れない。


 そして1週間ほど経ち、迎撃の準備ができた頃にユーセフ港町がタウロス軍によって壊滅したという早馬が街に届いた。タウロス軍はそのまま、このサハル大港都市にも向かっているらしい。兵の数は3万という報告だった。


 丁度執務室に揃っていたマフムードや千人長達は驚いた後、悩んでいるようなうめき声が聞こえる。きっと彼らの予想以上の敵兵だったのだろう。アレクは想定数だったので特に慌てず作戦会議を始めた。


 すぐに迎え撃つ態勢が準備される。全兵士が街を出て、所定の持ち場に移動していく。マリーとネフェルタリには偵察隊が出る予想地域を教えてあり、そこで偵察隊を全滅させるように指示している。勝てない場合は街に戻ってくるように伝えてある。一番は自分の命だ。


 城壁の上には投石用の石が持ち込まれており、街の協力者とアレクが立っている。アレクの元には定期的に敵の侵攻に関する情報がもたらされる。どうやら、敵の先頭が約2km先の最初の丘のあたりに差し掛かったようだ。

 アレクの予想通り、丘の上の馬防柵を警戒して一旦速度を落としたが、馬防柵以外なにもないため、すぐに進軍が再開されていると報告が入る。


 そして次の丘でも同じ様に警戒していたらしいが、10個目の丘を調べる頃には、ほとんど何も調べなくなっていた。今までの戦闘は連戦連勝だったのだろう。司令官も緊張感を無くしているようだ。


 マリーとネフェルタリは余裕で偵察隊を殲滅していた。すでに1人あたり偵察隊を5隊ぐらい全滅させている。これで周辺の情報は敵に届いていないだろう。


 敵の進軍は順調に進み、先頭が街の城壁から見える所まで近づいた。そこでアレクはすべての丘の上に埋めておいた魔石を可動させる。2kmに及ぶ敵の隊列のすぐ横の、すべての丘から5mの土の巨人が同時に現れて、土を隊列に投げ攻撃し始める。


 敵の兵たちはそれを見て「魔物だ!」と絶叫し、大混乱となって隊列から逃げ出し始める。何人かは果敢に巨人に攻撃をするが、自己回復するため殆ど倒せず徐々に絶望し逃げ始める。


 しかし混乱した兵たちが逃げようとしても前後には味方の兵がいて逃げられない。丘には馬防柵があって巨人がいるため、丘の横の開けた所に逃げ出し始める。しかし暫く走ると前の人間が消えていく。


 逃げ出した先の草原の下には巨大な落とし穴が、このように兵たちが逃げる先に仕掛けてあったのだ。馬防柵は騎馬を防ぐためではなく、混乱した兵の逃げ出す先を絞り込むために造られていたのだ。


 落ちて動けなくなった敵兵は、草原に隠れている弓兵たちが、確実に仕留めていく。隠れている兵に気が付き襲いかかろうとしても、しっかりと防衛戦用の馬防柵によって行く手を阻まれる。特に騎馬は一度走り出したら止まらない。草原に空いている落とし穴に吸い込まれるように落ちていく。


 そうやって敵の隊列は一斉に大混乱に陥り、落とし穴と弓兵によって殆どの兵を死なせてしまう。死んでいないものは逃げ出した。残ったのは街の近くまで進軍していた兵5000あまりと、2kmより先に残っている約5000の兵は未だ無傷だ。ただこの5000は殆どが荷駄隊の為戦闘はできない。


 アレクはマリーとネフェルタリに《転口魔力》で各味方の弓隊の救援に向かうように指示をした。そうこの《転口魔力》は《転眼魔力》の発想で考えた魔力で《転眼魔力》と《転耳魔力》と合わせて使うと、アレクからだけだが、遠くの人にアレクの言葉を届かせられるのだ。


 最初みんな気持ち悪がっていたが、リディアだけは感動のあまり呼吸難になっていた。


 そろそろ敵本体を撃破した味方の弓兵5000も街に戻ってくるだろう。

 アレクは敵兵5000の前に進み出て、降伏を勧告した。


「タウロスの司令官に告げます!あなた達の本体は壊滅しました!このまま撤退することをおすすめします!そうでなければ、あなた達はここで全滅することになるでしょう!」


 しかし司令官らしき人間はすでに自分達が負けていることを、理解していないのか撤退を拒否する。すでに5000の兵力では防壁を抜くことはできない事を理解しているはずなのにだった。


 味方の弓兵約5000も戻ってきて、所定の位置に揃ったことを伝令で確認すると、アレクは手のひらを空に掲げ、体内の石を繋げる想像をしながら炎の柱を念じ、巨大な200mはありそうな炎の柱を使い敵兵を横撫でした。


 炎の柱を人に使ったことが無かったが、恐ろしい威力だった。触れた人間はすべて消しずみにされ、たった1度の攻撃で約500人くらいが、その場でまる焦げになって死んだ。その様子を見て、アレクはこの魔法を人に使うのはやめようと心より思っていた。


 しかし敵兵の混乱は激烈だった。誰がどう見てもその炎の柱に勝てるわけがないのだ。敵兵の誰もがその柱を見て恐怖した。燃え尽きた兵の近くにいたものは更に狂乱状態だった。戦場に人が焼ける匂いが充満し、恐怖が増殖されていく。


 そしてその炎の柱を合図に、予定していた弓兵からの一斉射撃が敵の後ろから始まり、10分もしない間に敵は全滅した。


 しばらくして各地で逃げ出した敵兵たちが敵の後続部隊に合流し、足早に引き上げていった。


 戦闘は終結した。兵士も街の人達も勝利に歓喜して、アレク達が屋敷に戻る間、街の通りはお祭りのような賑わいだった。アレク達が執務室に入ると、マフムードを筆頭に千人長達が片膝でしゃがみ、右手を胸の前で握るとマフムードが宣誓を言い出した。


「我ら一度、改めてここに忠誠を誓います!我らの王よ!」

「・・あれ?マフムードはもう配下だったよね?」

「あれは立場であり、この誓は心からのもの!」

「なるほど。マフムードと千人長達の忠誠をここに受けます。皆でこの国を守っていきましょう」

「「「御意!!」」」


 アレクは早速、この勝利を各町に激励文を添えて出すように指示を出す。そしてここに新しい国家《サラディア自由王国》の宣言も行うことにした。これはタウロスからサラディアを自由にするという意味だと、マフムードに伝えると感激したようだ。


 これで各都市が反撃にでるようになれば、タウロスも撤退するだろう。


 勝利した日から数日間は死体の焼却や埋葬などに時間を取られていた。死体もものすごい数だからだ。いくら戦争とはいえ、こんなに人を殺しても良いのだろうか・・。しかし、殺さなかったら街の住民はその10倍以上いて、殺されるか死よりもきつい奴隷になるしかないのだ。


 数字でいえば、自分達が勝ったほうが人死には少ないのだ。そもそも悪いのはタウロスの東部州の王なのだ。この街は自分たちに降り掛かった災難を打ち破っただけなのだ。アレクはなんとか自分の気持ちに整理つけようとしていた。


 残念ながら、こちらにも被害は出てしまった。敵に討たれたものも数百人いたのだが、数十人ほどが自分の堀った穴に落ちてしまったらしい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ