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孤児院

 アレク達は流しの馬車を拾い一度、辺境伯の館に帰ることにした。

到着すると、アレクは執事に新しい頂いた館の方に移動することを伝え、今まで館を遣わせて頂いたお礼を心より伝えて、自分の馬車でアレクの新しい館に向かった。


 アレクの館に着くと、すでにリディアが応接室でのんびりお茶をしていた。


「あ!アレク様。ここは中々良い館ですね。掃除も行き届いているようですし」


 よく見ると、なぜかメイド達が並んでいる。アレクはメイドの1人に誰の指示ですかと聞くと、大公宮から派遣されて今日一日掃除などを行っていたということだった。特にご用事がなければ、これで失礼すると言うことなので、アレクは丁寧にお礼をいうとメイド達は帰っていった。


『新しくメイドも雇わないと掃除も大変だ・・・』


 そんな事を考えていると、アレク達に付いて来ていたエカテリーナがロマノフの館から暫く人手を連れてきますので、その間に人を揃えると良いですよと言ってくれた。アレクはエカテリーナに感謝を伝え、早速みんなにも部屋の割り振りを行った。


 そして少し早めに夕食にしましょうと、皆で街の飲食店まで移動し夕食を取ってから館に戻り睡眠を取った。もちろんアレクは寝る前の魔石の訓練を行い、あわせてリディアの研究用に13種類の魔石を作っておいた。



 翌日は昨日の飲食店でお願いして持ち帰っていた、朝食用の食事を応接室に広げて皆で朝食をした。そのあとすぐにリディアに研究資料として、13種類の魔石と、競売で購入した《魔法の書》を渡した。実はこの本の文字が読めず、アレクもどうしようか悩んでいたので、一緒に研究してもらうことにしたのだ。


「こ、これは古代文字ですね・・」


 どうやらリディアは多少の知識を持っているらしく、本に興味が出てきたようだ。リディアはアレクに研究室を割り当ててほしいという要望を言ってきたので、館の1階の一番広い部屋をリディアの研究室として割り振った。

 ついてで竜鉱も一緒に研究室に置いて良いかと尋ねるとリディアはびっくりしたように質問してきた。


「竜鉱とは竜鉱石から取り出されたあれですか!?」

「はい、そうです。先日競売で竜鉱石を落札したので、その竜鉱石から竜鉱にしたものです」

「竜鉱は生まれて初めてみました・・・」

「僕も始めてでした。実はその時一緒に竜の子供も出品されていて、竜を見るのも始めてでした」

「竜の子供もですか!・・・(もしかしたら)・・・」

「それじゃ竜鉱を研究室に置かせて頂きます。僕の2階の部屋だと重さに耐えられなさそうなので」


 リディアは了解してくれたが、竜の子供の話を聞いてから、何か考え事を始めてしまっていた。アレクは馬車の中に置いておいた竜鉱を研究室に移動した。

 するとリディアは我に返ったように、今後は竜鉱を眺めだした。


 アレクは応接間に移動し、皆に馬車店に行くというとエカテリーナは一度ロマノフの館に戻るといって、出かけていった。マルティーナは店の掃除をするといって、マリーとソフィを誘って店に向かった。

 結局誰も馬車店に行く人はいなかった。やっぱり馬車にあまり興味が無いようだ。


 アレクは馬車の中の荷物をすべて館に運び込み、馬車を空にしてから馬車店に向った。馬車店に着くと馬車の修理を頼んだ。竜鉱の重さで馬車の床が割れていたのだ。他にも色々調べてもらうと、相当ガタが来ているようだ。今は急いで移動する予定も無いので、これを機会にすべて修理してもらうことにした。


 アレクは修理を依頼すると、今度は新しい馬車の特注生産について話しを聞いた。アレクは自分が考えている《飛行馬車》の造形を見せて、このようなものが作れないか聞いてみた。店の人の話では作れるが、引くには馬が10頭が必要な上、街道や街の門で大きすぎて通れないかもしれないと言われてしまった。


 アレクが考えている《飛行馬車》は今の馬車の横幅2倍の上、長さは3倍の大きさなのだ。そのうえ長すぎて木材が重さに耐えられないらしい。通常、沢山のものを運ぶときには複数の馬車を準備するか、1台ぐらいなら馬車同士を連結するらしい。

 大きくするには船の船底に配置される巨大な竜骨のようなものが必要になるらしい。それでも海に浮かべる船と陸の馬車では必要とされる強度も違い、まず不可能だと言われてしまった。


 アレクは大きなものは諦め、今の馬車よりも一回りだけ大きい馬車でお願いしようとする。すると今度は窓に問題があるらしい。《飛行馬車》の窓はかなり大きく硝子を入れるつもりだったが、硝子は振動ですぐに割れてしまうらしい。そのため馬車には使えないと言われてしまった。


 しかし窓がないと外が見えず、空では色々と問題が起きることは明白だ。とりあえず風圧については風魔力で対処するにしても大きな窓が無いと困る。店の人に大きい窓がほしいというと、家に付いているような開く窓を付けてはどうですかといわれ、それに従うことにした。


 アレクは一応窓にも内側から鍵がかかるようにお願いした。本当に家の窓のようだ。最後に馬を乗せる馬用の車も1台お願いした。檻ではなく、すべて木で囲われたものにしてもらい、今回の馬車と4本の接続部でがっちりと接続できるようにお願いする。


 店の人はなぜそんなに強固に接続する必要があるのか分からないようだったが、空中に浮かんだ時に、馬の馬車の方がクルクル回ったりしないように出来る限りの配慮だ。もしかしたら不必要なのかもしれないが。


 他にもいろいろと細かい要望を伝えて、新しい馬車が完成するには、1ヶ月ぐらいかかると言われた。アレクは了承し、新しい馬車を頼んだ。古い馬車の方は1週間ぐらいで直るらしい。


 アレクは馬車店の用事も終わったので、自分の店に行ってみた。マルティーナ達が掃除をして、随分と綺麗になっている。アレクは馬車の修理を頼んだので、暫くは大公都に留まる予定ですと3人に話すと、マルティーナがアレクに相談してきた。


「アレク。王都の時みたいにちょっと商売をやってみたい」

「ええ!?マルティーナ1人では難しくないですか?」

「えー!ティナがやるなら手伝うよー!」

「私も手伝いますよ!王都でのお店仕事も楽しかったしね!」


 アレクはちょっと心配だったが、本人のやる気は尊重したい。アレクが魔石はどのくらい準備しますかというと、マルティーナは「他の魔石店に偵察してくる」といって、出ていった。ソフィは革袋や紙袋を買ってくると言うので、とりあえず金貨1枚を渡すと買い出しに出かけた。


「アレクちゃん・・、私何すればいいの?・・」


 と自分の行動が思いつかなかったマリーは、悄気しょげていたのでアレクは、館のアレクの部屋から原石を取ってきて貰えるように頼むと喜んで走り出していた。さっき馬車から移動した時に寝台の上に置いたのですぐにわかるだろう。


 アレクはその間に、店の裏手で実験をすることにした。煉瓦に粘土魔力で無理に枝を付け、もう一つの煉瓦にも同じ様にその枝を付け、煉瓦同士を連結させた。そして片方の煉瓦にだけ、豆荷物石を埋め込み、浮かせてみたのだ。すると想像して念じたように、連結された石のついていない煉瓦も一緒になって浮かんでいる。


「そう、ここまでは想像通り・・・」


 次に浮いている煉瓦に銅貨をそれぞれの煉瓦に乗せてから、移動魔力を与える。銅貨は落ちない。後ろに繋がっているもう一つの煉瓦も連結部がねじれたりしない。正確に魔力の範囲を想像し念じることで、移動も円滑にできた。


「これも、賭博店でみっちり訓練したお陰かもしれません」


 あの時、自分では荷物魔力と思って使っていた魔力は、移動魔力だったのだ。浮かせる力と移動させる力は違うと正しく理解してからは、魔力の操作がより正確に緻密にできるようになってきた。特に移動魔力は威力が強く気を緩めると、かなり強い力で動き出してしまう。


 アレクは宙に浮かべた煉瓦を進めたり、止めたり、旋回させたりを繰り返し、思い通りに動かせるように何度も繰り返した。しばらく繰り返していると、マリーとソフィが店に戻ってきたようだった。アレクは店に戻って、マリーから原石を受け取ると、13種類x3個づつで1個は効果2倍で魔石を作った。


 2人は商品展示用の什器に魔石を綺麗にならべていく。ソフィーは袋以外にも、値札用の厚紙や広告用の大きな紙も買ってきており、2人でワイワイしながら準備をしていると、マルティーナが戻ってきた。アレクはマルティーナに効果2倍の魔石は4倍の値段で売って欲しいと伝えた。


 女の子が3人になると姦しさも増し、薄暗い店内が少し明るくなった気がした。

 アレクはお店の事は3人に任せようと、また店の裏手に戻り浮いている煉瓦の操作に磨きをかけていた。移動魔力が上手くいきだすと、今度は浮いている高さを荷物魔力を調整しながら移動魔力を同時に使えるように操作の練習をした。これはかなり難しかった。


 煉瓦の上に置いた銅貨が落ちないように操作するのはかなりの集中力が必要だったが、難しくも訓練の成果は繰り返す毎に確実に出ていった


『そういえば最近は魔力を使いすぎても、気絶しなくなりました・・なぜだろう?』


 アレクは休息を取ろうと思った時、お店にお茶が無いことを思い出してお茶を買いに行く。


 街をお茶を探して歩いていると、いつの間にか一番通りから外れて、よくわからない道にアレクは迷い込んだ。この通りは人は多いものの、この通りの店の作りはあまり良くなく掃除も行き届いていない。アレクがキョロキョロと周りを見ながら歩いていると、突然人がぶつかってきた。


 それはアレクと同じ年ぐらいの少年で、アレクの銀貨の入った腰袋を掴んで逃げ出そうとすると、アレクに手を叩かれた。スリに失敗したことに気がついた少年は急いで逃げ出そうとする。しかしアレクが荷物魔力で地面から10cmほど浮かせると、空中でジタバタしながら叫びだした。


「な!なんだよこれ!?」


 アレクはゆっくりと少年に近づき話しかける。


「泥棒は駄目ですよ。衛兵の所にいきましょうか」


 少年は真っ青な顔をして、謝り始めた。アレクはゆっくりと地面に少年を下ろすと、少年は逃げてもまた空中に浮かべられると悟ったのか、地面に頭を付けて盛大に謝りだした。


「すみません!もう取りません!許してください!」

「なぜ、泥棒をしたのか理由を話してもらえますか?」

「・・・僕らの孤児院がお金に困っているみたいなんだ。だからお金を集めようと思って・・」


 どうやら、この少年も詳しい理由は分からないが、自分でも何かしようとしたのだろう。アレクはその孤児院に何が起きたのか気になり、少年に孤児院に連れて行ってもらえないか頼んでみた。


「・・・泥棒したのを院長先生に言わないか?」

「もちろんです。なにか助けられるかもしれませんし。院長先生に会わせてもらえますか?」


 少年はアレクが悪いやつではないと思ったのか、孤児院に連れて行ってくれることになった。2人で孤児院に向かって歩いている時に、お互いに自己紹介をした。


「僕の名前はアレクです。君は?」

「俺はピョートル」

「孤児院には何人ぐらい子供はいるんですか?」

「俺入れて10人だ。先生は院長先生とイリーナ先生だけだ」


 2人のお互いの自己紹介が終わる頃に孤児院に到着した。ピョートルが孤児院の中に案内してくれると、孤児院の中はかなりオンボロで、状態が悪く今にも壊れてしまいそうだった。


「院長先生はここにいる。院長先生ー、お客さん連れてきた」


 アレクはピョートルが扉を開けて院長室に案内すると、そこには中年の優しそうな女性と、まだ20歳中程の女性が、なにか相談事をしていたようだ。


「はじめまして、アレク・エトワール名誉子爵と申します」

「こ、これは貴族様!このような場所にどのようなご用件ですか?」


 2人は突然の貴族の来訪に慌てて身なりを整えようとして、要件を聞いてきた。若い女性の方は急いでお茶を煎れにいったようだ。院長がアレクを応接椅子に進めたので、アレクは椅子に座ると院長が落ち着いてきたのか、アレクが子供であることに疑問を持ち始めていた。


「ピョートル君から聞いたのですが、この孤児院がお金に困っているという話しを聞きまして、少し状況をお聞かせいただいても宜しいでしょうか?」

「そんな事をあの子が・・・、それは失礼致しました。ただこの件は私共の問題ですので・・」

「袖すり合うも他生の縁と言います。お話だけでもお聞かせ頂けないでしょうか?」


 アレクの丁寧な応対に、院長が躊躇していると、若い女性がお茶を持ってきて、院長の隣に座って、3人にお茶を煎れ始めた。院長は大きなため息の後に、理由を話しだした。


「貴族様であればご存知だと思いますが、大公都では新しい建物を立てる良い場所がありません。そこで新しい建物を建てる時は、当然古い建物を壊して新しい建物を建てることになります」

「しかし売買は買い手と売り手の合意が必要だと思いますが?」

「その通りなのですが、この孤児院はある貴族様のご厚意で貸して頂いていた場所で、先代が無くなり後を継がれた方が、ここに館を建てたいというお話でして」


 アレクはこれがお金では解決しない問題であることに気がつく。事の難しさにアレクも一緒に難しい顔をしてしまった。


「これはお金では解決できない問題ですよね・・」

「そうなんです。ピョートルはたぶん私達が貧しいことと関係している思ったのでしょう」

「生活も大変なのですか?」

「街の方々の寄付で成り立っているものですから・・」


 アレクは一応、貴族の名前を聞いてみることにした。もしロマノフ辺境伯の門閥貴族であれば、なにか交渉の余地があるかもしれないからだ。


「その貴族の方のお名前は?」

「・・・ポロスコフ子爵様です」

「すみません、知らない貴族の方のようです。どこの門閥の方か分かりますか?」


 アレクの質問に若い女性の先生が答えた。


「あ、たぶん。シロチェンコ伯様です」

「え?あの小さい領地の?」

「はい。確かシロチェンコ伯様の第一子女が今のポロスコフ子爵の奥様だったと」

「なるほど。シロチェンコ伯であれば借りが1つあります。しかしあの方の性格的に、協力してもらえる気がしません・・、せめてロマノフ辺境伯ならなんとかなりそうだったのですが・・」


 院長と若い先生は、アレクの口から出た大物貴族達の名に驚きながらも、こんな子供が意見できるとは思えなかったが、言っても意味がないことなので、2人は黙っていた。


「それでもし追い出された場合、どうなさるおつもりですか?」

「実はそれを今日も話し合っていたのですが、どこもこの人数を受け入れられる所はなくて・・」

「退去日はいつですか?」

「・・・今日です・・・」

「ええ!?」


 アレクはとんでもない時に、逆に言えば今日来れたことを幸運だと思えていた。アレクが院長に提案を話しかけようとした時、外から男の声が聞こえてきた。


「約束の日は今日だ!取り壊しに来たぜ!」


 院長と若い女性とアレクは急いで孤児院の外に出ていった。外に出ると貴族らしい格好をした男と、20人くらいの大きな槌を持った男達が並んで立っていた。アレクが若い先生に小声で「(誰ですか?)」と聞くと、彼がポロスコフ子爵ですと小声で答えた。


「おい院長!なんでまだここにいるんだ?もう散々期限延ばしてきたろうが?約束通り今日から作業を始めるぞ!お前たち、孤児院を取り壊せ」


 アレクは大きな声を上げて、ポロスコフ子爵に挨拶をした。


「お待ち下さい、ポロスコフ子爵様。僕の名前はアレク・エトワール名誉子爵です。子爵様のご友人のシロチェンコ伯様とは、商業都市の化物退治でお付き合いがあるものです」


 アレクが貴族と言うと、槌を持った男達は一斉に止まった。アレクの服装はエカテリーナが選びぬいた、まさに貴族らしい服装だからだ。子爵の判断を仰ぎたいのだろう。


「アレク・エトワールだと?・・、まさか英雄アレクか!あのシロチェンコ伯様の商業都市を救った」

「僕のこと知って頂けているとは光栄です」


 これにはその場にいた全員が驚愕した。皆が噂をし、皆が憧れ、皆が尊敬した英雄アレクだと名乗りを上げたのだ。孤児院でも子供たちの話題の人物なのだ。


「ば、ばかな!英雄アレクがここに居るわけがない!あの巨体の常勝将軍トルケルの軍勢をも打ち破った男だぞ!なにより、そんな子供の訳がないだろう!」

「トルケルとは知略戦の勝敗であり、肉体同士の戦いではありませんでしたので」

「く、くだらねえ!こ、こんな子供の嘘にビビっちまったぜ・・、おいお前らこの餓鬼を取り押さえろ」


 アレクは大きなため息をついて、全員を地上から5mの高さに浮かべた。そして手を空に上げ、そこから火柱を100mほど出すと、男からから悲鳴が聞こえだした。恐怖は伝搬し皆ガタガタと震えだした。

 誰でも分かる、あの火柱を振り落とされたら、灰すら残らないと。


「ポロスコフ子爵。話しを聞いて頂けますか?」


 子爵は最初アレクが何を言っているのか分からなかったが、すぐに頷くと、アレクは火を消し男達を地面に降ろした。すでに男達は体中が震え上がり、漏らして地面を濡らしているものもいた。


「お約束は今日までと聞きました。ですが、せめて子供たちがこの孤児院にお別れを言う時間を頂けませんか?孤児院が壊される所を見せたくありません」


 アレクは子供といっているが、自分より大きい子もいる。それよりもアレクはこの孤児院の人達を自分の館で引き取る覚悟をしていた。ポロスコフ子爵は震えながら頷くと、小さな声で明日の朝に壊しに来るといって、男達と逃げるように帰っていった。


 アレクが振り向くと、ピョートルを筆頭にアレクに抱きついてきた。


「「「英雄アレク!!」」」

「「すげーー!!」」

「「本物かー!?」」


 子供たちは自分が受けた感動を思い思いの言葉で表現していた。院長は火を見た時に腰が抜けたらしく、地面にしゃがみこんでいる。若い先生は何故か泣き出していた。


 アレクは院長の所に行って手を差し伸べると院長は我に帰り、立ち上がった。


「今日の取り壊しは止められましたが、残念ながら退去は難しいです。そこで孤児院の皆さん全員で僕の館に住みませんか?食費も僕が出します。でもご飯は作ってもらえると助かります」

「い、いいのですか?」

「大公から貰った館です。大公の国民が使うのは理に叶っているでしょう」


 アレクのつまらない冗談に苦笑いを浮かべながら、院長と若い先生はお礼をいって、子供たちに引っ越しするから、荷物をまとめて来なさいと指示を出した。院長と若い先生も荷物を取りにいった。


 暫くすると皆鞄1つぐらい、それも中が入ってなさそうな鞄を持って出てきた。最後に院長も出てきたが、彼女も鞄1つだ。

 アレクは荷物石を使うことになるだろうと思っていただけに拍子抜けしてしまった。


「あの・・、荷物はそれだけですか?」

「・・・殆ど売って食費にしてしまったので・・」


 最後に院長が子供たちに、お世話になった感謝を孤児院に捧げましょうといって、みんな胸に手を当てて目を閉じている。暫くしてアレクは皆が元気を出すように大きな声で呼びかける。


「さあ!みなさん、新しい家に出発です!」

「「「「「おおーーー!!」」」」」


 アレクは院長と若い先生に近づいて、小さい声で話しかける。


「実は迷子の時に、ピョートルに会いまして・・館まで案内して頂けませんか?」


 院長と若い先生は小さく笑いながら歩き出した。



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