黒の巨人
まだ出発したばかりの馬車はすぐに聖教都市に戻ってきた。ボスフェルトは王宮に到着すると、近くの兵にアレク達を控えの間に連れて行くように指示すると、急ぎ王宮の中に入っていってしまった。
アレク達は控えの間に着き、メイドにお茶を煎れてもらい一息ついていると、すぐに兵士が部屋にきて、場所を移動して欲しいと連絡しに来た。アレク達は急いで残りのお茶を飲んで移動すると、その部屋には大きな机に20人ほどが着席して、激しく言い争っていた。
「聖王が援軍を出して頂けないせいで、我が教区が魔物に侵攻され崩壊したのです!」
「何を言う!聖王の判断に問題はない!貴殿の力不足ではないのか!?」
「皆様、今は火急の時。責任論は後にしてこの事態の収拾を!」
「いや、報告が間違っているのだ!聖なる都に魔物が来るはずがない!」
「しかし来ているのは事実ですでに多くの兵が死んでおる!」
机には聖王と枢機卿の他、近衛兵隊長や軍の将軍らしき人が数人。ほかにも文官らしき人も座っていた。壁際にも彼らの部下らしき人が立って控えている。軍人の人達は何時まで経っても話が進まない事態に辟易しているようで、苦虫を潰したような顔をして座っている。
暫くすると、前線で指揮を取っていた将軍らしき人が入ってきた。
「おお!ロッセリーニ将軍!現状の報告をお願いできるか」
「はっ!魔物は岩の巨人、約150体。すでに前線を蹂躙し、近くの村々を焼き払い真っ直ぐに聖教都市に向かっています!大砲による攻撃で破壊は出来るものの、なぜか時間が経つと再生します。また剣などの武器は一切通じず、口からの炎で兵が近づけません!」
「・・なんだと武器が通じない上に再生するのか!?」
「報告にあったアルデバランの魔物と同じようですな」
「そのような魔物どうやって倒せるのだ!?」
その時、聖王が右手を上げた。急に部屋の中に静寂が訪れる。聖王がアレクに向かい話し出す。
「アレク殿、魔物を倒すことは可能だろうか?」
「不可能ではありませんが、現状では判断できません」
「それはなぜだ?」
「アルデバランでの攻防では、巨大で長い城壁があり、人防柵を上手く使うことで、巨人の隊列の厚みを薄く伸し各個撃破できましたが、もしそのような陣が組めない場合にはまず不可能かと」
アレクの返答により、また場が紛糾し始めた。前線の責任論にまた戻ってしまったのだ。再び聖王の右手が上がり、聖王がアレクに質問を始めた。
「アレク殿、魔物を倒す方法と、具体的な解決する方法を教えてもらえんか?」
「魔物には穢れた魔石が頭部の中心にあり、それを破壊する事で倒すことは可能です」
「「「おお!」」」
「しかし我々は何度も大砲で頭部も破壊してきたぞ?」
「ロッセリーニ将軍の疑問も最もです。魔物の魔石が破壊されなければ、壊れた巨人はまた再生してしまうのです。そしてこの魔石は非常に頑丈で、4万発大砲を撃ち偶然1個破壊できるようなものなのです」
「「「・・そんな敵どうしろと・・・」」」
その場にいる人々が落胆し項垂れてしまった。アレクは続けて説明をする。
「そのため、僕たちは大砲で破壊され再生中の動かない巨人の頭を切り裂き、壊れた岩から魔石を離すことで、再生させないようにしたのです」
「岩を切り裂いただと?」
「私の騎士達は魔法剣の達人で、3人とも岩を切り裂くことが出来ます。もちろん僕もできますが」
「はっ?魔法剣?あの曲芸みたいなものが岩を切れるわけがない!」
将軍の一人が魔法剣について自分の見識を披露してきた。アレクは軽く流して説明を続けた。
「魔法剣の威力は後ほどお見せしますが、問題は魔物をほぼ1列にして各個撃破できるように敵の侵攻速度を調整することです。それができないと、僕たちでも囲まれて全滅です」
「なるほど。ロッセリーニ将軍!魔物を1列にし撃退する作戦はあるか?」
「思いつく作戦はありますが、確実なものとなると・・。なにより岩の中から魔石を取り出せません。巨大な大槌で工兵が壊している間に、他の巨人によって工兵が燃やされてしまいます」
「では他の将軍達よ、作戦を持ち撃退する自信のあるものはいるか?」
「「「・・・」」」
「アレク殿にはお有りだろうか?」
「この場合は、単純なひとつの作戦ではすぐに破綻してしまうと思われます。よって複数の作戦を重層的に展開し、状況に応じて適時変更させる事が重要になるため、兵の運用が正確に行えれば可能性があります。ただ巨人は今も侵攻してきており、時間的に余裕がありません」
アレクの最後の言葉に、また皆が沈黙し始めた。誰もがもう怒鳴り合っても意味がないことに気がついたのだ。暫くの沈黙が場を支配する。すると1人の将軍がアレクに話しかけた。
「仮にアレク殿に指揮をお預けするにしても、作戦の肝になる魔法剣で岩が切り裂ける事を確認したい」
「了解しました。それではどこか切っても良い岩のある場所にお連れ頂けますか?」
ボスフェルトは中庭の巨石で良いのではというので、皆が中庭に移動する。聖王を筆頭に皆が中庭の石の近くに集まると、アレクはマリーに出来るだけ細かく切ってくれと指示を出した。マリーは剣を抜き、踊るように岩の周りで剣を振る。岩は柔らかい肉が切られるように、抵抗なくバラバラになっていく。
マリーは十分に細かくなった所で、剣を収めてアレクの後ろに戻ってきた。しかし周りの人々はあまりの出来事に呆気に取られ、誰も話しをしない。それに耐えられずアレクが話しだした。
「ご覧のように岩を自在に切ることで、魔石の取り出しが可能となるのです」
すると先程の将軍が申し訳なさそうにアレクに話しかけてきた。
「さ、先程は誠に失礼した。剣の太刀筋も美しくかなりの手練であることもわかった。また魔法剣がこれほどの威力を持っていることも知らなかった。お詫びさせてほしい」
「いえ、この魔法剣はすぐれた剣術に高度な魔法を必要とします。普通の魔法剣は将軍様の認識で間違いないと思われます」
将軍との誤解も解け、聖王が結論を発表した。
「それでは、アレク殿に兵の指揮権を一度預け魔物討伐に当たってもらおう。反対の者はいるか?」
誰も聖王の判断に異を唱えるものはいなかった。会議はその場で終了となり、アレクと将軍や近衛隊長達は、引き続き先程の部屋で作戦会議となった。
アレクは部屋に着くなり、地図の準備を依頼した。すぐに近衛兵が地図を取ってきた。
アレクは将軍や隊長達に、地図の説明を依頼する。すると、重要な点が何箇所かあった。
前線と聖教都市の間の道はほとんど直線になっているのだ。
残念ながら、殆どが平地で道が狭くなるような場所が無い。アレクはその後の巨人の情報が届いていないかロッセリーニ将軍に尋ねると、部下が部屋を飛び出していった。
暫くすると、新しい情報が上がっていると言うので、ロッセリーニ将軍が説明してくれた。
・避難をした村には巨人は襲ってこない。
・真っ直ぐに聖教都市に向かっている。
・隊列のようなものは無く、団子の様に纏まって動いている
他の将軍からは投入できる移動大砲が全部で200門あると聞いたが、移動と設置には時間が掛かるらしい。そのため大砲は時間的に間に合う場所を優先にして、アレクは聞いた情報を元に作戦を説明する。
最終防衛線である聖教都市の城壁の上に20門設置し、街の入口を漏斗の先に見立てて、城壁の先に人防柵を大量に設置し、そこで最終的に巨人1体が取れるような道を作る。
第二防衛線では、城壁の前に設置する人防柵の先から、道に沿って左右に大砲を設置し、道を侵攻してくる左右の巨人を大砲で攻撃することで削る。ここでも巨人の隊列をなるべく1列になるように攻撃し、兵は巨人が近づいたら撤退する。
第一防衛線は大砲が時間的に間に合わない街道となるので、機動力のある兵を大量に導入し、道の両脇に落とし穴を掘り、左右の巨人の侵攻速度だけを落とす。兵は偵察の兵以外は穴が掘り終わったら撤退する。
将軍達にはそれぞれ、落とし穴の工兵隊、路肩大砲隊、人防柵隊、城壁大砲隊を指揮してもらい、繰り返すように、巨人の行進をなるべく長細いものにするように適切な指揮をお願いをした。
決戦は最終防衛線の城壁の門である街の入り口だ。極力街の外の段階で殲滅したいが、最悪は街の中にまで戦線は広がる可能性はある。
今回の人防柵はアルデバランのような、人海戦術で作り直しはせずに、最初からかなりの数を設置しておくことにした。炎対策で人防柵の前には煉瓦で壁を作る。
これで作戦は決まった。今回の幸運は各防衛線構築までの時間があったことだろう。各将軍は部下たちに指示を出し、早速巨人迎撃の準備に入った。アレクは長時間の会議に疲れたため、少し休憩をしたい旨をロッセリーニ将軍に言うと、宮殿の客室を準備してくれたので、アレク達は休みを取らせてもらった。
翌日、起こしに来た兵士が、間もなく第一防衛線に巨人が入ると教えてくれた。ついにアレク達にとっては2回目の大規模魔物戦闘が始まる。とはいっても巨人の足の速度では、第一、第二防衛線を抜け、城壁前の最終防衛線までに後4日はかかる。
最初の報告から次々と巨人の報告が会議室に入ってくる。巨人は団子状態だった移動が、落とし穴のお陰でかなり細長くなってきたようだ。
会議室の地図に上に置かれた巨人を表す赤い木の棒が報告によって更新されていく。第一防衛線の役割は順調のようだ。どうやら穴掘り工兵を担当の将軍が適切に指揮しているようだ。
報告は深夜になっても行われた。やはり巨人の侵攻は昼夜問わずに止まらないらしい。アレク達はまた客室で睡眠を取った。翌日も落とし穴が効果を発揮し、地図の上の巨人の隊列がかなり長細くなってきた。アレク達は地図を見ながら報告を聞き、その後同じ様な状態で2日を過ごす。
そして遂に巨人が第二防衛線の大砲射程に入りだしたことが報告された。その時、全く別の所からの報告がやってきた。前線に新しい巨人が出現したらしい、但し1体だけということだった。アレクや将軍達は1体だけという報告だったのでそれほど気にしていなかった。
どうやら巨人達は、第二防衛線の大砲隊の活躍によってほとんど1体縦列のような形で最終防衛線に入りそうだという報告が来た。会議室に安堵が広がる。アレク達は後数時間後に始まる決戦に備えて、食事をしたあと城壁の門の所に向かった。
遠くから大砲の音が聞こえる。小さく巨人も見えてきた。アレクは近くの兵士に、城壁の大砲はアレクが合図するまで撃たないように頼んだ。そして女の子3人に話しをする。
「基本はアルデバランの時と同じです。すでに慣れているので大丈夫だと思いますが、自分の命を一番でお願いします。僕は後ろで魔石を受け取りますので、素早く魔石を取り出し僕に投げて下さい」
「「「了解!」」」
アレク達は城門前の人防柵が沢山置かれている場所を抜け、最終防衛線の一番巨人に近い所に移動する。巨人たちがほぼ1列縦列で侵攻してくる。アレクはその距離が5mになった時点で攻撃の合図を3人にした。
3人が一斉に巨人の列に飛び込んでいく。盾で炎を防ぎ素早く回り込んで、ソフィが巨人の足を切る。そしてマリーが巨人の首を落とし、マルティーナが落とした首を切り刻み、魔石を取り出してアレクに投げる。それらが並列に時々役割が替わりながらも繰り返される。
また戦闘時の足場の確保の問題で、戦闘の場所は少しづつ後ろに下げていく、これによって崩れた岩の上で戦わずに済むからだ。このペースなら150体を殲滅するのに、城壁の門までの距離で足りそうだ
戦闘開始から約1時間半。巨人の侵攻速度、巨人の同時攻撃数、マリー達3人の1体あたりの殲滅速度など、多くの条件が上手く絡み合い、ほぼ150体の巨人があと数体になっていた頃、遠くの方に例の遅れてきた1体の巨人が見える。
なにやら動いている速度が早い。討伐した巨人達は人よりも歩くのが遅かったが、その近づいている1体だけは人と同じかそれ以上の歩く速度のようだ。
またまだ遠目でしか確認できていないが、色が違うようだ。アレク達は残りの巨人を片付け、魔物の魔石を集めた袋を遠くの場所に置き最後の1体が近づいてくるのを観察しながら待っていた。
戦闘場所は思ったよりも下がってしまっており、すでに城壁の中にまで移動している。
かなり近くなると、その魔物が普通の岩の魔物では無いことが解ってきた。どうやら色が黒く、大きさは5mもある。アレクは念の為に城壁の大砲兵に射程に入ったら射つように指示をした。
黒巨人が射程に入り、大砲が撃たれると「ゴーン!」という金属同士がぶつかったような音がしたあと、なんと大砲の弾は弾かれてしまった。
アレクは3人に指示を出し、3人が盾を構え向かっていくと黒巨人はいきなり口のような所から、物凄い水圧の大量の水を吐き出しマルティーナを後方に吹き飛ばしてしまった。
マルティーナはすぐに盾を構えたが、それが反って水の水圧をすべて受けることになり、それゆえ、かなりの衝撃を受けて飛ばされてしまったのだ。
「「「マルティーナ!!」」」
アレクは急いで走り出し、マルティーナの近くによると、マルティーナは全身を強く打って体中の骨が折れているような重症だった。
すぐに治療を始めると、肉体の修復は進み顔色も治ってきたが、あと少しで死亡していたという、死の恐怖を受けたからか、意識は戻っても、まだ体中が震えているようだ。
アレクはマルティーナに「ここで休んでいて」と言い、マルティーナの剣を拾って前線に戻っていった。マリーとソフィはマルティーナを見て盾の不利をすぐに察知し、すでに盾を投げ捨てていた。
ただあの水圧は盾が無くともかなりの衝撃を与えるだろう。
暫しの攻防のあと、隙を見つけたマリーが黒巨人の足を切り落とそうとした時、口らしき所から大量の水がすで吹き出されており、マリーの剣がその水に触れる。瞬間、爆音と共にマリーの剣は弾き飛ばされ、マリーも転がるように飛ばされてしまった。
アレクはすぐにマリーの所に駆けつけ、ソフィが巨人を牽制している間に治療を行う、どうやら体への衝撃は少なかったようようだ。すぐに治療が終わるとマリーは剣を拾いにいった。アレクは2人に叫ぶ
「炎の魔法剣では水にふれると爆発します!水の魔法剣に切り替えてください!」
しかし3人の水の魔法剣は、当てられても黒い巨人の金属らしき体を切ることが出来なかった。アレクの場合は、そもそも巨人に剣を当てるどころか、近づけもしない。アレクの身体能力はマリーとソフィほどではなく、彼女たちの剣術や体術に、感動と嫉妬を覚えていた。
「しかたありません!剣が当たる瞬間だけ炎の魔法剣にし、それまでは魔法剣を発動されていない状態にしてください!」
その言葉にマリーもソフィも驚いた。魔法剣の状態にするには想像と念じる2つの思考を必要とし、そんな簡単にましては瞬時に発動できるものでは無いからだ。
これはアレクも同じだ。慣れていけば想像と念じる行動を少しづつ短縮できるが、瞬時に実行が出来るわけではない。唯でさえ、水攻撃や左右の腕を避けるだけでも紙一重のギリギリの中で戦っているのだ。その限界の緊張の中で、魔法剣の切り替えなど正気の沙汰ではない。
しかし2人も瞬時にその方法しかないかと理解した。しかし練習も無しにはかなり難しい事だった。マリーもソフィは何度も魔法の発動に失敗し、魔法剣になっていない普通の剣の状態で黒巨人に切りつけていた。当然傷一つ付かない。逆に刃こぼれしていた。
逆に魔法剣になった状態で斬りかかると、やはり水攻撃が邪魔をする。どうやら黒巨人も炎の魔法剣には警戒しているようだ。まるで岩の巨人と違って思考があるようだ。
その後、10分ほど《斬りつける時のみ炎の魔法剣》に3人は挑戦し続けたが、やはりかなり厳しかった。アレクはこのままだとこちらの体力が無くなるか、魔石の使いすぎで気絶するかしかない事に気がついていた。魔法剣も魔石を使っているのだ。
「マリー!ソフィ!巨人の左右にそれぞれ移動して下さい!これから遠距離攻撃で巨人を3回攻撃します!僕の攻撃に巻き込まれないように離れて様子を見ながら、僕の攻撃後、首に剣が届くチャンスがあったら切り落として下さい!」
「「了解!!」」
アレクは腰袋から、豆大砲弾を3つ取り出し、黒巨人の顔に狙って撃った瞬間、黒巨人の両手が顔を覆い弾を防ごうとした。しかし豆砲弾は半分潰れかけながら巨人の片腕を半分つぶし、恐ろしい衝撃を与えていた。その衝撃によって両腕もまるで手を上に挙げている様な状態になる。
アレクは続けて左右の手に豆砲弾を持ち、同時に発射させる。すでに腕は上に挙がっており下にはすぐに届かない。アレクの豆砲弾は黒巨人の両足の脛に同時に着弾した。その威力は凄まじく、豆砲弾が潰れながらも黒巨人の脛を潰しそのまま後ろに巨人の足を弾いたのだ。
瞬間的に足が曲がったことで空に浮いたような状態になるが「ドドーン!」という轟音と地震のような振動の後、巨人が地面に落ちうつ伏せになる。アレクはその瞬間に叫ぶ。
「今だマリー!ソフィ!」
アレクが叫ぶより先に、2人は走り出していた。届かなかった首が届く距離にあるのだ。巨人は手を回しすぐに立ち上がろうとするが、すでにマリー達は目の前だ。
黒巨人が水をソフィに向けて撃ち放つ、しかし何度も避けてきたソフィには当たらなかった。
マリーの剣が先に届き、黒巨人の首を切る。しかし首はすべて切り落とせない。しかし炎の魔法剣で切れたのだ。ソフィがすぐに駆けつけ首の残りをすべて切り裂いた。首が転がっていく。
マリーとソフィは恐ろしい回転速度で頭部を細切れにしていく。
巨人の脛や腕の再生が始まっていた。しかし巨人が攻撃手段を失ったことで、アレクは胴体や腕に十分に近づけるようになった。
アレクは圧縮魔力で四肢毎に圧縮し豆大砲弾のように丸く小さくしていく。最後に胴体の圧縮を行ったが、胴体だけは普通の豆砲弾の2倍ぐらいまでしか小さくならなかった。
しかしそれらの重量は、大砲の弾で作った豆砲弾とは比較にならないほど重く、作った瞬間そのまま地面に沈んで行ってしまった。一応、見えるところぐらいで沈むのは止まった。
その頃には、マリーとソフィの剣技が終了し、普通よりもかなり大きい魔石を取り出していた。アレクは頭部の破片を集め、圧縮すると同じ様に地面に沈んだ。
アレク達の戦闘が終わると、周りで見ていた兵士や将軍達がアレク達の所に歓声を上げながら集まってきた。マルティーナも復活しており、最初の岩の魔物の魔石の袋を持ってきてアレクに渡した。しおらしくアレクにもたれ掛かっている。きっと怖かったのだろう。アレクも本当に勝てるのか不安だった。
アレク達が王宮に報告に行こうと歩き始めると、彼の後ろに沢山の人が連なって付いて来ている。まるで何かのお祭りの行列のようだ。マリーは胸を張って先頭を歩いている。アレクは考えていた。
「褒美は何をお願いしましょうか・・」