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目標

翌日の朝、4人で朝食をとっている時にアレクは今後の方針を3人に発表した。


1、今後もクロエを探すこと。

2、世界中を回って出来るだけ拠点を作り、商売と並行してクロエの情報を集めてもらうこと。

3、お金を稼ぐこと

4、剣も魔石も訓練して強くなること


3人とも異論は無かった。早速、この街でも拠点作りを始めることにし、ジェマルに相談することにした。4人でジェマルの武具店に行くと、今日は休みを取っているらしくお店にはいなかった。お店の人にジェマルの家を教えてもらい、ジェマルの家にいくとジェマルが奥さんと庭の掃除をしていた。


「アレクか?どうしたんだ?それに随分と可愛い女の子連れて?」

「こんにちはジェマル。また相談に来ました」


アレクは、自分が探している子が妹であることを説明し、諦めずに探し続けることにしたことを話した。そのためにも、この街に商売と探索の拠点を作りたいが良い案はあるかと聞いてみた。


「商売と探索ねー、まあ良い案だと思うぞ。商売は情報が命だ。商売をするということは、情報を集めることでもある。結局それが探索にもつながるからな」

「実は城塞都市には、ドミトリの協力でお店を作ったので、協力し合えればより良い商売ができるかと」

「本当か!あいつは優秀だから頼りになるぞ。そうか・・・」


ジェマルは何やら悩みだした。暫くすると城塞都市の店をどうやって手に入れたのかを聞いてきたので、辺境伯の協力も得たことも話すと、少し席を外して奥さんと相談に行った。暫くするとジェマルと奥さんが戻ってくる。


「よし、アレク。俺も仲間に入れろ。正直このままチャクマフさんの所で下働きをしていても、目が出るのがいつになるかわからん。それよりこの機会を活かす事にする」

「本当ですか!ありがとうございます!」

「問題は金だ。店を構えるにはそれなりにかかる。それと出来ればチャクマフさんが扱ってない商品の店のほうがいい。同じ商品を扱う店では、正直厳しい戦いになってしまう」

「その辺はおまかせします。お金はこちらで準備します。どのくらい必要になりますか?」

「最低でも金貨20枚はかかるだろう。運転資金にも金貨10枚はほしいところだ」

「ちなみにどのようなお店を考えていらっしゃいますか?」

「これから調査してみる。店の場所などの調査も含めて1ヶ月ぐらい時間をくれ」

「わかりました」


アレクはジェマルに、また1ヶ月後にお金を持って戻ってくることを伝えると、ジェマルの家を出た。ジェマルは信頼できるとアレクは思っていた。それは娼館に行った時に、無駄なお金を使わず、アレクにお金があっても、くすねたりしなかったからだ。逆に役に立てなかったことを詫びるほどだ。


お金についてはきっちりしているのだろう。それに重大な事を決めるのに、奥さんとちゃんと話し合ったことも、本気で取り組むつもりがあることを感じさせた。アレクはまた1ヶ月後が楽しみになっていた。


宿に戻ると、アレクは一度、城塞都市に戻ってお金を準備することと、スノークで手に入れた魔石を、ドミトリに届けることを皆に伝え早めの夕食を取って、明日一番に出発することにした。



翌日朝食後にアレク達は出発した。城塞都市まで直接行くのであれば、急げば2週間で到着できるはずだ。往復も1ヶ月あれば戻ってこれる。アレクは馬車を急がせながら城塞都市へと急いだ。今回の旅では剣の練習時間はほぼ取れず、皆魔石の訓練だけになった。


ソフィにとって、魔石の訓練はあまり興味が無いようだったが、一度、マリーが魔法剣を見せると、食い入るように練習するようになった。アレクはスノークとオルドゥクで手に入れた原石を、大量に魔石に変えていた。さすがに量が多く、御者台にいない時は、殆どが魔石作りだった。ありがたい事に魔石作りの時間が早くなってきている。今回は2倍を2個づつ作るようにした。全部で221個を完成させた。


アレク達は無事に城塞都市についた。まっさきにドミトリに店に向かい、店の裏手の馬車置き場に馬車を止めると、となりにも5台の馬車が止まっている。アレクはお客さんが入っている事に嬉しさを感じながら、店に入る。


店の中には沢山のお客さんがいた。店員もドミトリとミハイルだけでなく、若い男や若い女も店員の服装をして、接客にあたっている。アレクがドミトリをみつけ、声を掛けるとドミトリは笑顔でアレクの所にやってきた。


「見てくれよ!うまくいってるぞ!取扱商品もだいぶ増えた!」

「さすがはドミトリですね!僕も嬉しいです。ところで、少し相談したいのですがいいですか?」

「おお!もちろんさ、2階の商談室にいこう」


ドミトリとアレク達は2階の商談室に入ると、メイドがお茶を持ってきてくれた。


「すごく人が増えましたね・・?」

「いや、人手はまだ足りないぜ。ただ厳しく選んでるからあまり増やせなくてな」

「利益は出てます?」

「もちろんだよ!後で帳簿みせるな。そういえばダダンに紹介してくれたんだな。今ではエトワール商会の専属鍛冶師になってくれたよ」

「おお!あのダダンさんが!」

「ほかにも、ロマノフ家が懇意にしている人たちを、執事さんに色々紹介してもらって、仕入れからお客さんまで沢山増えたぜ」

「それはよかったです。魔石はどうですか?」

「全部売れちまった。商品は持ってきてくれたか?あ、そういえば魔石2倍も売れた。結局通常の4倍の値段になった」

「4倍?凄い・・。魔石2倍の需要はまだまだありそうですか?」

「ああ、かなりある。皆始めて聞いたということもあって、かなり注目度が高い」


アレクは順調に行っていることを聞いて、まずは魔石221個を彼に渡すと、かなり驚いたあとミハイルに魔石を渡しにいった。戻ってきたドミトリに聞くと、魔石の展示台が空っぽなので、すぐに並べたかったそうだ。


アレクは現状の店が上手く行っていることを聞いて安心すると、ドミトリにオルドゥクで自分の妹に会えなかったこと、今後も拠点作りとお金を稼ぐことを目指していくと言うと「まかせておけ!」と大威張な感じだった。それとジェマルにオルドゥクでの拠点を頼むことにしたというと、太鼓判を押してくれた。


「ジェマルは切れ者の上、信頼できるやつだ。やつの協力があればオルドゥクの拠点もうまくいくだろう。もちろん城塞都市との定期貿易を組んで、協力体制も作る」

「それとオルドゥクの拠点用にお金が必要で、僕の方に回せる資金はありますか?」

「おうちょっとまってな」


そういうと、ドミトリは3階にある金庫にお金を取りにいった。戻ってくると、金貨60枚の金貨が入った袋をアレクに渡した。


「金貨60枚だ。これで足りるか?」

「十分です!ありがとうございます!」

「はは、アレクの店の金なんだから気にするな」

「助かります。そういえば、信頼できる部下はできました?」

「まだだな。すべて任せられるのはいない」

「急がなくても良いので後進の育成を進めてもらえますか?できれば大公都に拠点を出す時は、またドミトリの助けがほしいので」

「本当か!?大公都で商いできるのは商人の夢だぞ!立ち上げる時はぜひ俺にやらせてくれ!」


とりあえず、ドミトリとの話も終わったので、辺境伯の城に挨拶に行こうと馬車に乗って向かった。城では執事が出迎えてくれたが、辺境伯とエカテリーナはまだ大公都から戻っていないらしい。会議が難航しているのかもしれない。


「ところで大公都にも店を出したいのですが、調査をお願いすることはできますか?」

「私が直接は難しいので、大公都の館の執事に手紙で頼んでみましょう」

「ありがとうございます!」


アレクは辺境伯とエカテリーナが戻られたら宜しくお伝え下さいと言うと、大公都を出てまたすぐにオルドゥクに戻ることにした。3人はゆっくり休みたかったみたいだが、オルドゥクについたらゆっくりしましょうと言って理解してもらった。


実際に旅が始まってしまうと、魔石や魔剣の訓練で2週間はあっという間に過ぎてしまう。今回アレクは魔石を作る必要がないので、自分の小刀を実験台に水の魔剣を作ってみた。水糸の様な少量の水を刃先に沿って高圧で高速に振動させるようにすると、火よりも安全に小刀の切れ味があがった。


水の剣は3人にも好評で、炎と水の両方を練習するが、炎よりも水の剣の方が想像が難しいらしく、お互いに教え合いながら、水操作を勉強していた。一度鋸のこぎりで木を切らせてみると理解が早いかもしれない。


アレク達は無事にオルドゥクに到着し、宿を借りて馬車をいれると、このところずっと馬車と野宿だったので、3人には宿で休んでもらい、アレクだけがジェマルの所に向かった。ジェマルの家に行くと、ジェマルと奥さんがお茶をしながら、いろいろ話し合っていた。


「ジェマルさん、只今戻りました」

「おお、アレク!待ってたよ!店は大きな場所を買えそうだ。あの後よく調べてみると、チャクマフの息子さんの代になってから、チャクマフ家の店はあまりうまく行っていないみたいだ。この1年で何店か潰れていたらしい」

「それは僕らには嬉しい事ですが、チャクマフさんの息子さんに何があったんですか?」

「アルデバランの王都で、貴族の仲間入りをしようと、色々金をばら撒いているらしいが、難航しているようだ。それでこの街の店の金まで持ち出してという話さ」

「ああ、ありそうな話ですね・・」

「チャクマフさんの親父さんはいい人だったんだぜ」


アレクとジェマルは話が少し飛んだが、店の候補の場所に行くことになった。そこはチャクマフの問屋だった店だった。場所もこの港町の中心通り沿いで、港も近く商品を保管しておく立派な倉庫が併設されている。


「ここですか!?随分と大きいですね・・お金足りるかな・・」

「まあ、予定よりもちょっと足が出るが、こんな物件は中々出ない。ここが一番よかったぜ」


アレクは城塞都市で購入した店よりも、倉庫などの敷地を含めると2倍以上の広さをを持つ元問屋の店を見て、若干尻込みしたが、ジェマルの強いすすめでこの店に決定した。


「よっしゃ!それじゃチャクマフ家の番頭さんと、ここの領主の土地管理責任者を呼んでくるぜ」


暫くすると、何人かが元問屋の店に集まってきた。どうやら潰れてからは大きすぎて誰も買い手がいなかったようで、領主の関係者は新しい店ができ、港町に活気が出ることを喜んでいるようだ。なぜかチャクマフ家の番頭さんも、現金が入ることの方が重要らしく、気持ちよく売ってくれるらしい。


アレクはジェマルと書類の確認を行い、チャクマフさんの署名入り証書にアレクも署名をして金貨30枚を払うと、無事店の売買は完了した。領主の関係者も登記権利書をすぐに作成してくれた。城塞都市では登記作業は執事がやってくれていたようだ。


ジェマルは今日にでも武具店の方は辞めて、すぐに開店の準備に入るという話だった。しばらくは奥さんと2人で切り盛りするらしいが、すぐにでも人は増えるだろうと言っていた。


「そういえば、どんなお店を始めるか聞いていませんでした」

「おっと、そうだったな。問屋だよ。チャクマフの問屋が無くなっちまったお陰で、この町では物の流れが滞ってしまってる。ある意味、チャクマフの問屋の地盤をそのまま使えるしな」

「なるほど!それなら立ち上がりも早そうですね」

「まあ、俺もチャクマフさんとこで10年以上やってるからな、主要な仕入先も客もすぐに繋げられる」


どうやら時期が色々な意味でよかったらしい。アレクはジェマルに運転資金の額を聞くと規模が大きくなったので、金貨20枚ぐらいはほしいと言われたので、20枚を素直に渡した。ジェマルは預かり証も発行してくれた。ドミトリよりも丁寧だ。


一段落着くと、ジェマルは少し変わった事を言いだした。


「伝書鳩を導入したいのさ。軍ではよく利用されるが、民間で利用している話は聞いたことがない。城塞都市との情報交換などに使いたいと思ってな。情報は鮮度が重要だ」

「面白い案ですね!ぜひ採用しましょう」


最後に商会の名前と紋章を聞かれたので、ジェマルにも伝えておいた。ジェマルが「スノークの旗に似てるな」と独り言を言っていたが、聞き流した。


「そういえばこのあたりで、原石がよく見つかる場所をしりませんか?」

「原石?魔石のか?うーん、それならここから南西のエブル半島の先端にある、カルカヴァン音楽都市の周辺にはなぜか海で原石が見つかるという話しを聞いたことがあるな」


ジェマルの話だと、ここから1週間くらいらしい。それならスノークで聞いた、アークツルス聖王国との国境のほうが、城塞都市との距離も考えると便利そうだ。


ジェマルと色々な話しになってしまったため、すでに日が暮れていた。アレクはジェマルに後はお願いしますというと、宿に戻っていった。部屋では3人が不機嫌そうな顔をして待っていた。


「遅い!アレクちゃん遅すぎ!」

「アレク、まさかまた娼館に行ったんじゃないわよね?」

「ここに美女が3人もいるんだぞ!」


アレクは、マリーはさておきソフィとマルティーナは美女というか、まだ子供では?と心の中で反論したが、決して口には出さすに、遅くなった事を謝り、娼館には行っていないことを伝えた。そういえばマルティーナはもう成人である15歳になったのかもしれない。


今日はお詫びに、宿の食堂ではなく街の酒場に繰り出すことにすると、3人とも機嫌を直してくれた。酒場には人が沢山いた。この街はアルデバランの王都にもツァーリ大公国にもアークツルス聖王国にも、数週間で行ける利便性の高い港町だけあって、旅商や船乗りの人が酒場をよく使うのだろう。


食事のメニューも色々なお客向けに多国籍なメニューが揃っている。女の子達は目を輝かせながらメニューについて話し合っていた。アレクはスノークの料理を見つけたので、それを頼むことにした。皆が料理を頼み終わると、マリーが珍しく葡萄酒も頼んでいる。飲めるのだろうか。


アレクは料理が来るまでの間に、ジェマルの店が決まったことを皆に報告した。皆は「それじゃ今日は乾杯だね」というので、結局蜂蜜酒も追加で3つ頼んだ。お酒も入ったからかいつもよりも女の子の会話が過激になっている。


「あんたには、あたいみたいな姉さん女房が一番なんだよ!」

「違うわよね~、アレクちゃんはおとぎ話みたいに大魔法使いになるんだから~」

「ふふふ皆間違ってるわよ、アレクは騎士王になるんだから!」


ソフィはスノークが滅んでしまったのを忘れてしまったのだろうか。それにしても皆の期待が高すぎる。奥さんはさておき、大魔法使いや騎士王とかはどう考えても無理にしか思えない。しばらくして酒場の扉が突然力強く開き一人の男が入ってきた。


「王都の北の大森林から、かなりの魔物が侵攻してきたらしいぞ!」


楽しく騒いでいた客たちが一斉に振り向き、入ってきた男に質問を浴びせる。


「いつだ!?」

「2週間前らしい。ドーガンに攻める為に兵を集めていたのが幸いして、今は北の砦で防いでいると言う話だ!」

「化物ではなく魔物といったな!?」

「ああ、魔法を使う化物らしい・・」


アレクは、魔物と聞いて不安を感じていた。化物は普通、異常な形態の体に驚異的な身体能力だけだ。もちろんこれでも強敵ではあるが、火の玉などの魔法を使った遠距離武器がある魔物は、その脅威は何倍にも跳ね上がる。そもそも魔物という言葉も、おとぎ話の中でしか聞いたことがなかったからだ。


アレクは商業都市の化物の強さにも驚いたが、もしあんな化物が魔法まで使ってきたら、全く勝てなかったろう。それが複数で襲ってきたらとても人間では防げない。


『しかし戦争をしようとしていた国は、やはりアルデバランだったのですね』


アレクは皆に料理を食べたら、宿に戻りましょうと伝えると、味を楽しむ事もなく料理を食べ、宿に戻った。部屋に入ると、アレクは先に釘を刺した。


「今回はもちろん参加しません!魔物は僕にも勝てない上、敵は複数です。アルデバランの軍隊がいるので、大砲や投石機などで彼らが倒すでしょう」

「それならアレク、王都では治療石が大量に必要になるはずだ、拠点の件もある。あくまで旅商として王都に行くのはどうだ?」

「・・・」

「アレクちゃんが行くなら私はどっちでもいいよー」

「私もだ」


確かに王都から前線の北の砦の間は、数日の距離もある上、大森林と砦の間にはかなり長い城壁が設置されており、王都は安全である可能性は高い、そのうえ治療石の需要は恐ろしく高いだろう。アレクは暫く悩むと、マルティーナの意見を採用することにした。


「わかりました。ただ最初にカルカヴァン音楽都市や途中の町で、原石を調達しながら向かいます」

「「「了解!」」」


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