購買部攻略戦
うちの学校の購買部は二つある、学園の施設としての購買部と学園内を巡回する生徒主催で仮想現実内の購買部。
個人で発見・開発した武器や防具、アイテムレシピなどを売る人がいるが、それらの人達が価格などのトラブルを起こした事があった。
その後、ゲーム内の商店街を統一した王国が出来、仕切るようになった。
それが『月下雷鳴』。
生徒会王国と双璧を成す購買部の王国だ。
僕は母の都合でお弁当が作って貰えなかったので、食堂へ行こうとした所、アリサと宮園さんも行くと言うので、学園の食堂に来ていた。
「私、キツネうどん!」
「私は、タヌキうどんで…」
僕はかけうどん、ここのうどんは生徒内で美味しいと評判だ。
そんな時だった。
学園支給の端末がメール受信する。
何事かと見てみるとそれは宣伝だった。
「丁度、来ているみたいですね」
「あ、購買部?」
「はい、ちょっと見ていきましょう」
僕らは食べ終えて食器を返し、接続開始する。
「うわぁ!」
その光景は圧巻だった。
一言で言うなら動く要塞街、巨大亀の様なレアモンスターの背中に乱立するビルの様な建物。
地響きが止まり、入り口の門が開いたので中へ入った。
「アリサ、こっち!」
「う、うん!」
人の波に揉まれて、はぐれそうになったので、アリサの手を掴んだ。
「こっちです」
漆黒の翼さんに着いて行くと、小さな商店の前に来た。
「いらっしゃい…」
「買い取り、お願いします」
漆黒の翼さんはアイテムボックスから、ジャガガを取り出し売りに出した。
「こ、これは、幻の!?」
「そういうのいいので、買取お願いします」
「はい…」
漆黒の翼さんがこちらに戻ってきた。
「取り敢えず軍資金です、これで買い物してください」
「おっけー♪」
「うん、了解」
「それじゃ昼休みが終わるまで自由行動で」
さて、どこに行こう。
「どうしたの?変な顔して」
「ん、どこに行こうか考えていたんだよ。いい武器屋ない?」
「ちょうど行こうと思ってたし、一緒にいく?」
「うん、よろしく頼むよ」
「任せてっ!」
漆黒の翼さんと別れ、なんだか嬉しそうなアリサと街中を武器屋に向かう。
「シャイナ、儲かってる?」
「あ、アリサ…いらっしゃい。あら、彼氏?」
「ち、違うわよ!?」
「ふーん、そうなんだぁ…」
「どうも、はじめまして」
やけに元気な売り子の人、職業は、装備から戦士のようだ。
「で、今日は何にするの?」
「うーん、何か良い感じの双剣ない?」
「最近、良い素材が手に入ったから…こんな所ね」
アリサは提示されたメニューを見ている。
「そちらさんは?」
「属性大楯系で重量が中程度、物理防御が高レベルの物理カットマシマシで」
割と無茶なオーダーをしてみた、シャイナさんは少し悩んでメニューを見せてきた。
「そうなるとこの二つね、両方ともスタミナが続く限り物理防御は100%カット、こっちのタワー・シールドは、シールドバッシュと相性抜群よ、どう?」
「いいね、タワー・シールドを貰うよ」
「まいどっ♪」
装備して見てわかる、しっくりして手に馴染む。
中古品みたいだけど、まだまだ使えそうだ。
値段も手頃で良い買い物したと思う。
僕とアリサはシャイナさんに挨拶して店をでた。
時間がまだあるので屋台を回っていると人だかりを見つけた。
中央に紙芝居屋さん?
フードを目深に被った者は、自作映像をみせているようだ。
問題はその内容だった。
『それは古い話、いまでも続く長い永い物語。
生徒達の憧れにして最強最良最麗なる高き峰に立つエルフ。
それに相対するは、猛き獣の長。
妬み嫉み降り積もり、呪いの鎧となり哀れな獣を突き動かして、遂には悲劇を巻き起こす。
エルフの王の騎士達を蹂躙し、その眼前に立つも月光の弓矢に膝を折り、地に這い蹲ってただ一つ。
「呪いあれ!」と呟いた…』
違う、僕の心臓がドクンと唸った。
「どうしたの?顔色悪いよ」
アリサに言われても、僕は一歩踏み出そうとしていた。
「そこのお前、何をしている!」
「やぁ、これはこれは、購買部の騎士様」
「部外者は、立ち入り禁止だ、生徒でない者がここで何をしているんだ!」
「目的は果たしました、それでは」
フードをの人は、僕を見ると一礼して煙のように消えた。
「お前、アイツの関係者か?ちょっと来て貰おう」
「違う、あんな奴知らない。違う、全部違うんだ!」
「よくわかんないけど、私達はあんなのと関係ないわ!」
「二人とも伏せて!」
突然、目の前に放り込まれた煙玉。
「こっちよ!」
見覚えのある声の方に導かれ、裏路地に逃げ込んだ。
「全く、何があったんです?」
「こっちが聞きたいわよ!」
「…違うんだよ」
漆黒の翼さんに助けられ、購買部を去る僕達。
僕は、午後の授業が頭に入らなかった。