ハイペリオン
王国のジャガガ畑は、ランクも高くなって収穫量も上がり、尚且つお化けサイズのジャガガから高級ジャガガまでレアなジャガガが収穫できるようになった。
これで次の収穫祭イベントでは、上位に食い込めるはずだ。
「アイテムボックスのジャガガが1,000超えは、うちくらいなものですよ」
「そういえば、昨日あった情報処理部の防衛戦、どうだった?」
「上手く撃退できました、最近増えて来ましたね」
学園は今や群雄割拠、休み時間や放課後になれば大小様々な戦争が勃発していた。
新しい領主が出来ては、また消える。
そんな中でなんとか生き残っている現状だった。
午前の授業も終わり、お昼休みになったので情報処理部にて、騎士達と定例会議を行う。
「戦果は以上です、負けはありませんが時間制限による勝ちが増えてきました」
「次は絶対に勝つッ!」
アリサは鼻息を荒くしている、漆黒の翼さんはそれをなだめた。
「じゃあ、次。取り急ぎ王には決めて欲しい事があります」
「なにかな?」
「王国の名前です、いつまで初期設定のままなんです?」
「うーん、騎士達の意見が聞きたいな、アリサなんかない?」
僕は取り敢えずアリサに話を投げてみた。
「そうね、キュア王国なんてどう?」
「却下」
「なによ、なにが悪いのよ?」
「駄目に決まってるでしょ、何処のアニメか知らないけど」
「なによ、じゃあアンタは何かあるの?」
「…黒き混沌の王国なんてどうかしら」
「駄目ね、そんなラスボスみたいなの!」
「まぁまぁ、あかねんはどうかな…」
険悪なムードになりそうだったので、あかねんの方をみた。
なにやら呟く『やまねん、かわねん、しろねん、くにねん…』
〜ねんシリーズってなんなんだ?
「はい、なにか?」
「な、なんでもないです」
「王はなにかないんですか?」
「そうだなぁ、ジャガガ特産品だからジャガイカなんてどうだろう」
軽い感じで僕は言ってみた。
「却下」「ダメね」「それはないです」
ほぼ同時に言ううちの女性陣。
僕はジークフリードの方をみた。
「え、俺?うーん、こういう時は武器名とかがいいよ」
「ナイトランス王国とか?」
「でも、王の武器…騎士槍じゃないですよね?」
「それは…ちょっと」
僕は言葉を濁した。
「取り敢えず、今日はこのくらいにして、続きは明日にしないか?」
そして、午後が始まる。
放課後、僕達は情報処理部に集まり接続開始。
今日は新しく実装された、王国周辺の魔獣退治イベントをする為だ。
今迄NPC頼みの素材集めもこれで少しは楽になるし、ついでにアリサが新しい防具が欲しいとのこと。
アリサと僕、漆黒の翼さんで狩りに出掛ける。
「アリサそっちに行った!」
「おっけーっ!!」
「弱ってます、罠仕掛けます」
上手く巨大魔獣を見つけ、おびき出しに成功、あと捕まえれば素材がとれて防具が作れる。
「これでどうっ!?」
アリサの一撃で罠に押し込めた。
「ふぅ、手間かけさせて…」
「アリサ、気を抜かないで!」
落とし穴に落ちた魔獣が、背中から羽根を生やし落とし穴から飛び出てきた。
「ば、馬鹿な!?このタイミングで進化!!」
「きゃあぁ!!」
戦闘中に鱗を強化進化させたりするのは見たけど、こんなの初めてだ。
「兎に角!このままじゃヤバい!!」
魔獣は、アリサと漆黒の翼さんを狙っている。
ちょうど僕は魔獣の後ろ、背中に一撃入れられるが少し距離がある。
届かせるには、やるしかないか。
チャージを始めバックパックに、火を入れる。
騎士槍のトリガーを引くと同時に、反動を軽減させる為のダッシュローラー起動。
「いけぇッッッ!!」
光が放たれ、魔獣の羽根を捥ぎ取った。
「漆黒の翼さん、今!!」
「は、はい!ブラックウィングです!!」
落とし穴に再び落ちた魔獣に麻酔弾を撃ち込み、捕獲完了した。
「ふぅ、それでその武器。なんなんですか?」
「上位鍛冶屋でも見た事ないわよ!?」
話しておくべきか。
「わるいね、みんな。少し話しておきたい事があるんだ」
「改まってなんですか?」
漆黒の翼さんに頷いて見せてから銃槍を構えた。
「この武器は課金で手に入れた武器なんだ」
「それはどういう意味?」
「アリサが疑問に思うのも無理ないと思う。あれは学校案内を見ていたとき、一通のメールがきたんだ。そこには『一万円でこの武器を手に入れろ!』と書かれていた。胡散臭いと思いNOを押した、すると値段が下がる、何度かそんな遣り取りをしたのちメーラーを閉じたがなぜか閉じれない。最後は10円まで下がったので、根負けした。そしてこの武器【ハイペリオン】を手に入れたんだ」
銃槍を何度か軽く上空に撃って見せた。
「聞きたい事、言いたい事、たくさんありますが取り敢えず一つだけ、それ課金じゃないです」
僕は漆黒の翼さんの言葉に目を丸くした。
「と、兎に角、この武器の事は他言無用でお願いしたい」
「確かにそれが一番良いかもしれませんね」
僕らは魔獣の素材を剥ぎアイテムボックスに入れ、帰る事にした。
さて、明日までに王国の名前考えないと。
この時はまだ、僕らを観察する様に飛んでいたそれが小型魔獣だと思っていた。