仮想現実の世界
エスエックス社は今や世界的大企業だ。
ゲーム会社から始まり、莫大な資本金を有し、多角経営によりオムツから墓石までなんでも揃う。
そんな会社が中心に巨大都市が形成されていた。
そのゲーム会社は知識と体力と遊びの融合を目指し学園を設立。
教育方針【文武両道plus G】が話題となる。
泊まり込みで行う検査と試験を経て、僕はその学校に入学した。
VRMMO、校内に足を踏み入れると起動するシステムは、現実と虚構の垣根を曖昧にする。
そんな学園生活も一週間が過ぎた。
教室の席に座り、畑仕事を始めるのが僕のホームルーム前の日課だ。
学園での生活や行動で能力値が変動する。
それがアバターや領地に影響を及ぼす。
自分とキャラクターが同時に連動して育つゲーム『キング・オブ・ナイツ』。
アバターの初期設定は、検査や試験での結果で能力が決まり僕の適正は、戦士だった。
武器選びで職業が決定する。
最初に選べる武器は戦士の『大剣』盗賊の『短剣』魔法使いの『杖』だ。
次に領地、初期は村で誰かと仮契約したりすると街になり契約してもらったりすると王都になる。
僕が村長する村は、ジャガガ畑の農村で村民は獣人。
ちなみに、村の1コストで選べるのは『畑』『鍛冶場』『錬金工房』。
畑は、ジャガガ、キャベベ、ニンジジ。
これらは食料になるのは勿論、錬金工房で材料になる。
僕が選ばなかった鍛冶場は、武器の強化や改造、鍛冶場のレベルが上がれば進化なんてのも出来る。
他にも素材から防具を作る事も出来、戦士職ならこれを選ぶ人が多い。
最後の錬金工房は、アバターの魔力値を使いポーションやその他、便利なアイテムを作り出せる。
射撃武器の矢や弾丸もここで作るから、猟兵の人など必須だ。
そして、村人。
NPCで三種類、『人族』『獣人』『妖精』。
人族は、いわゆる人間で能力値が平均。
よく言えばなんでも出来る、悪く言えば得意が無い。
種族能力『商売』は、他のプレイヤーの所に自動で行き、物々交換でアイテムや、特産物を売って金を稼いでくる。
僕が選んだ獣人は、獣の耳と尻尾の亜人。
攻撃力が高く有事の際はとても役に立つ。
種族能力『狩猟』は、自動で狩りに出て素材を獲ってくる。
素材は武具の制作に必須アイテムだ。
最後の妖精は、昆虫の羽根の生えた小人。
能力値は、回避が少し高い程度。
種族能力『魔力の泉』は、自動で魔力石を集めてくる。
魔力石はアイテム生成に使う大事な石だ。
他にも色々な種類があるがレベルが足りないので選べない。
兎に角、戦闘行為が一切出来ないしされない一週間の保護期間中になんとか頑張りたい。
コツコツと村を育てていき、そろそろ保護期間も終わる、そんな時だった。
ーーー通知が来た。
見ると誰かが近くで戦闘しているらしい。
野次馬心で見に行く事にした。
接続開始、そこは闘技場。
そこに着くと、決着がついたところだった。
勝ったのは戦士系の男と魔術師系の女の子、負けたのは武器から見ると剣士と狙撃手の女の子のペアだった。
勝負は終わり、観に来ていた人は次々に帰っていく。
僕も戻ろうかと思ったとき、彼らの言い合いが飛び込んできた。
「ちょっと、話が違うじゃない!?」
「仮契約を賭けた勝負のはずでしょ?」
剣士と狙撃手の二人が抗議の声をあげた。
「いや、契約して貰う!負けたんだから言う事きけ!」
戦士系の男は、薄ら笑いを浮かべながら語尾を強めた。
ここで言う仮契約は、相手に従属することを意味し、三ヶ月、一ヶ月、一週間、一日の中から選び相手が決めた税金を支払う。
最低ラインは収入の2%くらいだ。
そのかわり攻められたら兵を送ってもらったり、一緒に戦って貰えたりする。
仮契約者を獲得すると、村は街になり収入や倉庫の上限が増える、それは仮契約者も一緒だから友達同士で仮契約する場合ある。
しかし、契約となると話が違う。
このゲームのタイトル『キング・オブ・ナイツ』
契約を受諾すると王になり騎士になる。
騎士になると、自分の領地全てを王に捧げ、王になれば収入が倍増する。
契約期間は一年間、正当な理由がないとやめられない。
他にも色々なメリット・デメリットがあるが、一番契約したくない理由は他にある。
「いきなりの契約変更は、不履行よ」
「ふふん、いいのかい?君達のリアルは知っている。契約するまで戦いを挑ませて貰う」
「なに、その嫌がらせ!」
「ちょっと待った!!」
えっと、保護期間は…終わってるな…。
僕は挑戦者モードで乱入した。
「な、なんだお前は!?」
「なんか理不尽な話だったから、簡単にしよう。僕が負けたら契約する、勝ったらこの話なかった事にしてくれ」
「つまり、お前が負けたら三人が契約ってことか?」
「そうだよ、そっちのふたりもそれでいい?」
僕は剣士と狙撃手に話しかけた。
「突然きてなに言ってるの!?」
「いいわ、そこまで言うならやってみて。ただし負けたら責任とって貰うから」
「了解」
僕は騎士槍と騎士盾を装備し戦闘態勢をとる。
「ふん、重騎士か、二対一だが、今更やめるとは言わないよな?」
「いきます…」
戦士系の男は、腕組みをしてこちらを見ていている。
魔術師の子は、魔法の詠唱をはじめた。
「戦闘開始だ」
「火球!」
「愚鈍な重騎士だ、そのまま燃えろ!」
自分が攻撃してないのに偉そうな戦士系の人。
爆炎が視界を覆う、エフェクトがリアルで熱さえ感じそうだ、かわりに爆風のデーターがダメージとして身体を震わせる。
「ダッシュローラー起動、いくよ」
僕はバックパックに火入れして加速する。
「な、なんだ!?」
「キャッ!?」
まず一人。
スキル『シールドバッシュ』魔術師の人にシールドを構えたままタックルを仕掛ける、思った通り連戦で体力回復してない、一撃で落とせた。
「なんでそんな加速が出来るんだ!?」
「さあね!」
戦士系の人は、工具武器を取り出す。
あの武器は人形使いか…ゴーレム呼ばれたら厄介だな。
僕は加速からのスキル『シールドバッシュ』を仕掛けた。
「やるね、紙一重だった」
「なんで重騎士が、そんなに…」
彼はスキル『人形腕』を出し僕を止めた。
しかし止めたのはスキル『シールドバッシュ』の騎士盾まで、僕の騎士槍は彼の胴を貫いていた。
「僕の勝ちでいいよね、約束守ってくれるよね」
システムが僕の勝ちを告げた。
「く、覚えてろ!」
ログアウトする人形使いと魔術師の人達。
「なかなかやるじゃない、まだまだだけどねっ!」
「ありがとう、助かったわ」
授業開始のベルが聞こえる。
「それじゃ行くから」
「ちょっ、ちょっとまっ!?」
僕は教室の自分の机の前にいた。
本名も知らないゲームの中の人。
所詮は他人、同じ学校の生徒。
双剣の剣士でキャラクターの名前が『アリサ』と狙撃手でキャラクターの名前が『漆黒の翼』さん。
まぁ、何処でまた出会えるかもね。
僕は次の授業の準備を始めた。
「あのシールドナイト、ムカつくわ!」
「亜里抄、なに逆ギレしてんのよ」
教室の後ろの扉を力強く開け、立花亜里抄さんと宮園茉莉さんが入ってきた。
「なによ、カッコつけて!絶対見つける!」
「見つけるのは賛成だけどね」
立花さんは僕の隣の席に座った。
世界は小さいなぁ。
そして、いつもの授業が行われた。
村(領地:1 貯蔵庫:1000+Lv毎に100)
・初期
街(領地:2 貯蔵庫:2000+Lv毎に150)
・仮契約者一人以上いる場合
・仮契約者は契約期間中、税金を収める
一ヶ月:領地で得た収入の2%
一週間:領地で得た収入の5%
三日間:領地で得た収入の10%
一日 :領地で得た収入の30%
王都(領地:1 騎士一人につき+1 貯蔵庫3000+Lv毎に300)
・契約は一年、よほどの事情が無い限り契約破棄は出来ない
・契約者いる場合、契約受諾者の領地は王都になる
・契約者は騎士となり(領地:2 貯蔵庫:2000+Lv毎に150)を得る
・契約者は王に自分の領地の全てを税金として渡す
・王は騎士の働きに見合った給与を支払う(任意)
・王および騎士は旗効果を得る
旗効果→王都Lv毎に能力値+10%
NPCスキル使用可能:鼓舞(攻撃力+)防壁(防御力+)治療(体力回復)