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最低な始まりの日

今回初登校の栗飯です。名前は目の前に栗ご飯があったのでそれにちなんで決めました


 


 またこのサイレンが街を包む。「異世界進行警報」数年前から度々聞くこのサイレンは今でもまだ慣れない。

 本能そのものが拒否するような不協和音を選んだ、役人のお偉方は相当趣味が悪いとみた。

 と、そんなことを考えているのもつかの間、敵機十機が同時に都市に爆弾を投下する。が、

 全ては落下し始めて数メートル程したところで爆破、当然だ。この国の高位魔法使い(通称:マーズ)達の結界によってすべて防がれる。

 人々は、空を見上げ憐れな的と化した敵機を見世物を見るような目で見上げる。この国の中心にある王都からマーズ達の一斉射撃が始まり、

 無数の火柱が上空に放たれ、それは生き物のように集まり混ざり一匹の火竜になる。長い尻尾から天を焼き焦がすような炎の角、すべて炎という赤で彩られた竜は眼だけは燃える青い炎で敵を睨む。

 この国が持つ有数の超高等魔術兵器の一つだ。

 竜は必死で逃げる機体に一瞬で追い付き、真正面から噛み砕く。残る七体はそれぞれ機関銃やミサイルなどあらゆる破壊兵器を燃えさかる竜の胴や頭を吹き飛ばす。

 しかし吹き飛ばされたその場所はすぐ灼熱の炎が渦を巻くような形で再生する。竜は心なしか不敵な笑みを浮かべ、口を大きく開け、高エネルギーを凝縮する。

 これから起こる事を察したのか敵機たちは各々攻撃をやめ百八十度旋回、一目散に逃げ出す、が遅い。

 竜の口が光ったと思った瞬間、全てを薙ぎ払う光線が容赦なく敵の命を奪う。

 爆音が鼓膜を震わせる。上空では撃ち落とされた残骸たちが結界に触れた瞬間、音もなく砂のような粒子となって散っていく。

 人々は空を見上げるのをやめ、何もなかったかのような顔で日常を再開させる。そう、これが普通なのだと俺は思っていた。



「・・・ヤバッ!もうこんな時間かよ!!」「やっぱりこうなったね、エイジ」俺は大きな独り言をしたのにそれに愉快なそうな声で返答が返ってきた。

「なんで教えてくれないんだよ、あと十分で遅れちゃうじゃないか!?エルザ!」涙目でそう訴えかけると目の前であくびをしている黒い艶毛をした猫は、

「君が昨日、あれだけ僕が早く寝なと言ったのに、「もしかしたらまだ忘れ物があるかもしれない、明日はこの王国一のチェスナート魔法高等学校に入学する記念すべき日なんだ

 、そんな中、もし忘れ物や確認し忘れた行事があったりしてみろ?それこそ俺の輝かしい学校生活の第一歩に汚点をつけてしまう、それだけは絶対に防がなくてはならない

 」とかなんとかグダグダいって最終的には寝坊、そして異世界襲来者を傍観するという余裕をもっていたじゃないか?」

 急いで着替えながら背後で中途半端なものまね混じりの正論を言ってくる彼女に対して俺はぐぅの音も出なかった。

 けど、これは本当にヤバい、昨日あれだけ危惧した事が逆に裏目に出てしまうとは、こんなことなら彼女の言った通り、さっさと寝ればよかった、と半諦め感を漂わせる

 そんな俺を見かね、彼女は「ああ、もう仕方ない君を早く寝させなかったのは僕の責任でもあるわけだし、今回だけ、今回だけ特別だよ?」念を押す彼女だが実はこれが初めてではない。

 しかしそのことをあえて口に出そうものなら、一気に彼女の機嫌を損ねそうなので俺は口を閉じ代わりに満面の笑みで彼女の小さな体を持ち上げ、

「お前のそういうツンデレ大好き!!」と感謝の抱擁をしようとした瞬間、彼女の小さな肉球がほっぺたに触れた。「?」俺は理解できずに首をかしげる、すると

 持ち上げていたはずの猫の重量がどんどん増え、あっという間に俺よりも少し小さいくらいの黒髪ショートの女の子が現れた。

 そして巨大化した猫、否、エルザが伸ばしていたこぶしに触れていた俺の頬は人間化と同時にエルザに盛大に引っ張られていた。

「いででっ、エ、エゥザふゃんっ?!」俺の頬を引っ張る彼女は力を緩める気配もなく、

「あまり調子に乗らないこと、今回は僕にも責任があったから助けるだけで次はないからね」言い切ると同時に彼女は頬から手を離す。

 いつもは少しきつめの目つきだが少し細めると背筋がぞっとするほどの威圧感を感じてしまう。

「いてて分かったよ、けど今回はほんと、サンキュな!」悪びれる様子もなくそう返すと「ま、わかればいいんだよ」といってわずかに頬がピンクになったのを俺は見逃さなかった。

「さて、そろそろいくよ?準備はいいかな?」俺は、チェスナートの指定ローブの上からどんっと胸に手を当て、「いいぜ!」と気合よく応え彼女は魔方陣を展開させる。

「じゃ、いってきます!!」展開した複数の魔術語が書かれた魔方陣をくぐり、ゲートを通った。


 そして


 目をあけると、そこには輝かしい、チェスナート学校・・・・などではなかった。

 そこ広がるのは王都郊外の草原と今朝目にした、あの異世界侵入者が乗っていた機体の残骸とそれを操る敵兵が一人、瀕死で倒れていた。

「は??」とっさに声が出てしまったが今はそれも仕方ないと自己肯定する。

 そして敵兵は俺に気付いたのか、おもむろに頭全体を隠していた奇怪な帽子を脱ぎ棄て、こちらを見て語りかけてきた。

「・・・・そこの青年・・・・・すまない・・が俺の胸ポケットにある・・・写真を取り出してくれないか・・・・」

 息も絶え絶えでいつ死んでもおかしくない男。

 俺は固まった。血まみれの顔を見てではない。

 昔、授業で習った「異世界大戦」それによると敵は顔に鬼のようなるのを生やし、血に飢えたような赤い瞳で言葉は全く通じない、

 そう教えれてきた俺は、この状況が全く理解できなった。

 しかし、実際に目の当たりにしてるこの男は強面な事をのぞいたら、声も温和そうでとても化け物とは言えない。

「青年・・・」強面に悲しそうな顔をされるとここまでくるものがあるのか。

 俺は出来るだけ傷口に触れないよう細心の注意を払いながらポケットから写真を取り出して渡した。

 兵士はそれを見て瞳に涙を潤ませ「すまない・・・」と、恐らく写真に写ってる人物に対してそう言った。

「ありが・・う」そういってこちらに視線を戻した彼はゆっくりと写真か手を離しそれっきり動かなくなった。

 俺は無意識的にその写真に目を見やった。そこには椅子に座る白い服を着た女性の後ろに幸せそうに立つ彼の姿があった。


 俺は訳がわからなくなっていた。

 なぜ、俺はここに転移されたのか

 なぜ、政府は異世界住民達について虚偽の情報を流すのか

 なぜ、我々が戦うのか


 俺は彼を写真と一緒に丁寧に埋葬した後、分かった事が一つある


「俺。完全に遅刻じゃん・・・」


そして記念すべき入学式は不参加の形で終わってしまった。


























最後まで読めてくれたならありがとです、ご意見はめちゃ聞きたいです。

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