ただ一言で表せば修羅場 後篇
「っ!!」
避けられない、絶対に避けられない、陽太はそう思っては目を瞑りただ痛みが来るのを待った、また例え避ける事ができたとしても雪奈を庇う、守る事は絶対にできない、ならこのまま自分が食らってしまえば良いのではないか、そう陽太は思っていた、だがそれと同時に明乃のパンチなど食らった場合体は、頭は一体どうなるのか?など陽太は不安で仕方がなかった、そして陽太がそう一瞬にして全て思い浮かんでいた所で、一方明乃の方はまさか陽太が突っ込んでくるとは思わず苦しい表情を浮かべながらなんとか陽太に当たらないようにとその拳の矛先の軌道を変えようと思うも放ってしまった拳は当然変えられる事ができない、そう思っていた、だが丁度その瞬間まだ左足はその場に動かさずキープしていた事に気づいたのか明乃は左足に力を入れては陽太じゃなく、その横にある木箱のような所へ突っ込んだ
「っ!?」
「!!」
いくら経っても痛みがこない、そう思っていた時に横に何か風を切るような音と共に背後からなにかぶつかるような鈍い音と共に倒れた音が聞こえた事に陽太とその後ろにいた雪奈は慌ててその物音がした方を向いた、そしてそこには明乃が息を荒らしては両手、両膝を床に付いていた所だった、手を痛めたようには見えなかったが微かに手が赤くなっている事に気が付いた陽太は駆け寄った
「っお、おい!大丈夫か!?」
たった今殴ろうとしてきた奴を心配するのもまたおかしな事、そう思った陽太だったが仮にも明乃は自分の部長であり、そして少なからずともこのまだ少ない人生の中で、生きてきた中で、なんだかんだで打ち解ける事ができた一人である事に陽太は心配せざえる終えなかった
「っはぁはぁ…大丈夫、です…それより、も…貴方は…大丈夫ですか…?」
「っあ、あぁ俺は別になんともないって…っそれより氷野、お前この手大丈夫なのかよ…!?」
赤くなったその手は段々と色がより赤くなり、また引っ掻いたかのように皮が捲れていた、微かに剥がれただけだったが赤くなりかなり痛そうだった
「っこんなこと…日常茶飯事です…それよりその後ろにいる女を早く・・・ッ!」
明乃はその真っ赤にしている手にまた力を入れてはそう言い立ち上がった、また当然だがその後ろにいる女とは陽太の後ろに心配そうに覗いている雪奈の事だった、そして雪奈はふとなにか思ったのかポケットの中からハンカチを取り出しては駆け寄った、自分の事を狙われているにも関わらず
「っあ…あの、これでその手拭いてください…ばい菌が入ってしまいます…」
明乃のその手をあまり直視したくないのか片方の手で目元を隠してはまたもう片方の手でハンカチを差し出してはそう言った、そしてそれを見た陽太は少し動揺しつつ明乃を真剣な眼差しで見た、陽太はこう思っていた、これで敵対心などそんな物は雪奈にはないのだと、だがその差し出されたハンカチを、そして見てくる陽太を見た明乃は瞳を揺らして表情を暗くし言った
「っ…な、なんなんですか…?次はこれで油断させようってことですか…?」
「っ!ち、ちがいます!私は!」
「ッ・・・!!」
一体何にそんなに先ほどから警戒しているのか明乃はやたらに雪奈を警戒してはそう言った、そしてそう言われた雪奈は慌ててそう否定するもそこでも何かが気に食わなかったのか明乃はその差し出してきたハンカチを睨み付けては無言で手で払い弾き飛ばそうとした、だがそのハンカチは弾き飛ばされなかった、逆にパチン!、とこの教室全体に響き渡る程に叩いた音が響き渡った、それは
「っ・・・か、狩野、くん…?」
「っ・・・」
「…っな、なに、するんですか…いったい…」
その叩いたのは陽太だった、雪奈の手、ハンカチが弾かれたのではなく逆にその弾こうとした者、明乃が陽太の手によって思いっきり頬を叩かれていた、全く容赦が無かったのか明乃の頬は赤く染まっていた、また今のこの現状を衝撃的すぎて理解できていないのか雪奈は口を手で隠し、そして叩かれた明乃は頬を抑えては動揺のあまりか力んでいた拳は震え、そして陽太を見ていた、そしてその瞳は先ほどまでの殺気篭った目ではなくまるで震えた小さな子供のような、そんな瞳をしていた
「…今のお前は部長でもなんでもねぇよ…少しは冷静になれよ…部長ならよ…ッ」
「!!」
引っ叩かれたこと、そしてその一言に明乃は目を覚ましたのか俯いた、自分の情けなさ、感情に支配されありのままに行動し、危ゆく陽太、また雪奈を傷つけようとしていた事に恐れてか俯いては暗い表情をした、そして俯き静かに大人しくなった明乃に気づいた陽太はため息付いては後ろでショックのあまり口を手で押さえている雪奈に声を掛けた
「・・・夜桜さん、ごめん、大丈夫?」
「っ!え、あ、は、はい…!そ、それより氷野さんは…!?」
いつの間にか腰を下ろしたのか明乃は誰もが見るからに落ち込んでいる事がわかるかのように俯き、そして顔を隠している事に雪奈は口を押えていた手を解いては急いで陽太の事など無視し明乃の元へ駆け寄った、陽太はそんな雪奈を見ては驚くもその自己犠牲に似た優しさについ呆れてしまった、本来は雪奈が狙われていた筈なのにその本人が一目散に駆け寄り、そして声を掛けている事に
「氷野さん大丈夫ですか!?」
「・・・・・・はい、大丈夫です…それより…あまり見ないでください…」
完全に戦意喪失しているのか明乃はおろおろと心配そうに見てくる雪奈に顔を手で覆い隠してはそう言った、声色もかなり薄れている事から余程陽太の平手打ち、そして言葉がショックだった事がわかる、だが主にショックだったのは部員である陽太に部長失格、また感情のままに獣のように襲おうとした自分にショックを受けていたのだろう、部長失格とまでは言われていなかったとしてもほぼ部長失格と同じ事にかなり落ち込んでいた。またその落ち込んでいる様子を見た陽太はもう大丈夫だろうな、とそう思っては一息付いてはそっと駆け寄った
「っ、か、狩野くん…」
「・・・氷野、もう夜桜さんの事襲わないよな?」
いくわ襲わない、そう言ったとしてもあまり油断ができない事に陽太はそう言った、また同時に冷静かどうかを確認する事も目的にそう言った
「……はい、もう大丈夫です…それより…夜桜さん…ごめんなさい…先ほどは…」
明乃のなりの努力なのか、または自分の今の顔を見せられないのか明乃は心配そうに見てくる雪奈の手に自分の手を伸ばしては触れた、そして触れられた雪奈は驚きながらもそっと、手を重ねた、またそれを見ていた陽太はそんななんとも言えないぎこちない明乃の謝り方、また何故か不思議と伝わってくる本心から思っての謝りに心地良く感じた、そしてそんな事を思っている所でそれはその隣にいる雪奈にもちゃんと伝わっているのか子供をあやすかのような、そんな表情、そして笑みを浮かべては手を撫でていた、頭を撫でない所がまた何か気遣ってなのかもしれない、またそう思うと同時に本当に怖いぐらいに雪奈が優しい事に陽太は思わず無意識に微笑んだ
「大丈夫ですよ別に怪我もなにもしていませんし、それよりこの手をなんとかしましょう!」
雪奈はそう本当になんとも思っていないのか微笑んでは先ほどのハンカチを取り出しては明乃のその赤くなり軽傷を負っている方の手首を優しく握ってはそっとそのハンカチで包み、スラスラと結んだ
「よし、これでもう大丈夫ですね」
「・・・ありがとう、ございます…」
段々と立ち直ってきたのか顔を少し上げてはそう言った、声色も戻っている事からかなり元に戻ってきている事がわかった、そしてそれを見た陽太は驚いた、それは先ほど陽太が明乃の頬を平手打ちした部分だった、ミミズ腫れとまでは流石にいかないが微かに痕が残っている事に陽太は焦った
「っ…さ、さっきはいきなり平手打ちなんかして…その、ごめん…痕が付いちまった…っ」
「…いえ、大丈夫です、気にしないでください、元はと言えば私が先ほど感情に任せて動いた結果ですから…それより先ほどは私を正気に戻してくれて、冷静にしてくれてありがとうございました、貴方の…おかげです…」
明乃はそう言ってはそっと頭を上げ陽太を見ては微笑んだ、不謹慎な話になるが先ほど叩いた陽太のその赤くなった頬はその笑みと共に照れているようにも見えた、そしてそう見えた事によるのか陽太はその明乃の笑みにドキッ、とした、だが勿論不謹慎な為すぐに頭を振っては掻き消した
「狩野くん?」
「!あっい、いや、なんでもないよ、あはは」
横から顔を覗き込むようにしては見てきた雪奈に陽太は少し照れながらも慌てて笑って誤魔化した




