チマチマ攻撃
「それで、敵の力とこちらの力。どの程度の物かを教えてくれ」
「はい。それでは少し失礼します」
そう言うと魔王は俺の額に指を……てか指まで骨だけかよ。
とにかく、魔王はその骨だけの指を俺の額にあてた。
その瞬間、膨大な量の情報が頭の中をかけ巡った。
敵味方の数・兵器・練度、現在戦いが行われている地形や地質、気候、その他世界の常識ともいえる全てが一瞬にして頭の中に入って来た。これだけの情報を他者に送るのに、普通なら一体どれだけの時間がかかるか。それをこの骸骨は一瞬でやってしまった。やはり、魔王を名乗るだけはある。
「どうです? お分かりになられましたか」
「ああ、理解したよ。しかし、凄いものだな。今のが魔法というやつか」
「魔法……とは少し違いますね。今のは『スキル』と呼ばれる、まあ、特技と考えてもらえればいいです。それで、何か戦況を変える案はありませんか」
「まあ、待ってくれ。そんなに急かされても困る。こっちはまだ状況を理解しただけなんだから」
魔王の情報が正しいとするならば、敵はとてつもなく軽装でやってきている。
敵戦力は、人およそ1万、馬およそ2千。
機動には大量の馬を用い、攻撃には魔法をかけた弓矢を用いている。
弓にはよく飛び、よく貫く魔法がかけられていると推測されている。
攻撃方法は一撃離脱の基本形。
まず、機動力のある馬を使って攻撃を開始。先手をとる。
大量の弓を放ち、こちらの主力兵団を弱らせていく。それを何度も繰り返す。
最後に、彼らは歩兵を使って弱った主力兵団を一気に攻撃。殲滅するというわけだ。
対して、こちらの兵数は5万。
攻撃は基本的に敵が攻撃してからの、応戦という形をとっている。
しかし、早さが足りない。
武器も持っていない。
ただ身長は3メートルはあろうかと言うデカさ。
それど、ゴツゴツした体が印象的だ。
これを知った俺が初めに思った事はこれだ。
「なぜこちらも魔法を使わない?」
魔王に与えられた知識には、『戦闘中に魔法を使う魔王軍』との知識は入っていなかった。
「我々の種族には魔法を使える者と使えない者がおります。現在、敵と戦っているのは岩の種族。強力な力と岩でできた堅い体を武器にして戦う種族です。彼らは魔法が使えません。また、魔法が使える種族も近くにはいません」
「体が岩でできている、か。力はあるが機動力は全くなし。ヒットアンドアウェイが苦手なタイプか。相手はそれを始めから知っていて、この戦術を使っているのか?」
「いえ、彼らの国は元々そう言う戦い方でしたので、おそらくたまたまだと思います」
なるほど。単に運が悪かっただけの可能性もあるか。
「分かった。策はある。」
その言葉に魔王は「えっ! もうですか」と、とても驚いていた。
安心しろ手はある。