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就職先は魔王軍

 目を開けると、そこには光があった。いや、ある意味闇があったと言った方が的確かもしれない。

 体は縛られてはいなかったし、胸のあたりも痛くない。


 けれど、目の前には黒い服に身を包んだ二メートル超えした骸骨が立っているんだけど……。あれは俗にいう魔王ってやつじゃないだろうか?

 いや、そもそも魔王って何? ここはどこよ?


 少しだけ頭の中がこんがらがってきた時、ふと、今までの事を思い出した。


「あ、そうか。俺、死んだのか。てことは、ここは天……まあ地獄だよね~、雰囲気的に」


 そういった軽口が癇に障ったのか、魔王っぽい、多分獄卒な骸骨が俺の方へ歩いて来た。


 殺されるかな。まあ、もう死んでるけど。


 けれどまあ、死んだからって悲観する事はない。死んだ事なんてないから分からないけど、まあ、どうにかなるはずだ。

 まずはそう思って、礼儀正しく、自分を売り込むとこから始めようじゃないか。


 「おはようございます。わたくし、阿立順平と申すのですが、もし良かったらこちらで雇って――「お願いしまぁぁぁーすぅ!」


 俺の似非ビジネスマナーは目の前で土下座している獄卒の大声によって、あっけなく掻き消された。


 「……ハァ?」


 「お願いします! 是非、我が魔王軍の作戦参謀になっていただけないでしょうか!」


 「……」

 もう声も出ないほど理解不能だった。

 思考を止めるなんて事は以前の職場じゃあ、すぐさま死ぬ案件だった。

 目が覚めてからものの1分も経ってないのに、もう二回は思考停止で死んでるぞ、俺。

 そして、その間も目の前、もとい足下の骸骨は頭を上げようとはせず、土下座をし続けていた。

 

「はっ! いや、何なんですかこれ! とにかく顔を上げたくださいよ。何があったか知りませんけど、お話だけなら聞きますから」

「あ……ありがとうございますぅぅう、ううぅ」


 涙は出てないけれど、多分泣いているんだろうか。骸骨の目の部分には眼球は無く、代わりに良く分からん赤く光る何かが入っていた。

 てかさっき何て言ってた? 魔王? 魔王って言ってたのか? えっとナニコレ。ここ地獄じゃなかったの?


 色々と知りたい事は山ほどあるけど、とりあえず今は、泣きわめく骸骨の背中をさすりながら、俺はそこら辺のちょうど良い出っ張りに、骸骨と一緒に腰を下ろした。

 

「それで、何があったんでか?」

「うぅ、ありがとうございます。……実は私、この国で魔王をしているんですけどね、この間ですね、なんか西の方にある国から攻められましてね。どうしようと悩んでいたんです」

「……ハア、ソウデスカ」

  

 あまりの話のついていけなさに、俺の頭は三度目のフリーズに入った。

 

「それでですね、これもう私では対処できないと思いましてね、異世界の住人から識者を連れてきてですね、相談役的な役職についてもらってこの魔界を救って頂きたいと思った次第なんです」


 未だにフレーズ中の俺の頭は、辛うじて再起動の準備をし始めた。おそらく数秒後には、再起動する。


「それでですね、召喚魔法を使ってあなたを呼び出した次第です。……どうかお願いします。我々魔王軍を救ってやってはもらえませんか!」


「わかりました! 是非協力させてください!」


「ほ、ホントウですか!」

「ええ本当です。一緒にこの世界を征服しましょう!」


 良く分からないが、ノリと勢いで行ってしまった。反省はしていない。


 ともかく、異世界に来てから15分。就職先が決定した。

 就職先は魔王軍。多分企業でいうと大企業だろう。いきなりそこの相談役だ。

 幸先の良いスタートだと言えるだろう。


 ……ところで、いったい何をするんだろうか?


 






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