第5話 継承と革命
遅れてすみません。許してください何でもしません。ストックが切れ気味なので追加で書き続けてたので遅れました
「あの1年やるじゃねえか」
「魅せるねぇ!こりゃ今年の機兵器部は期待できるぞ!!」
会場にはいつの間にか生徒がぼちぼちと集まっていた。そして生徒達の目線は、零に集中していた。
石波のエース機、それを操る人間が他ならぬ新入生であるという事実が観客を沸かせていた。
「さっそく右手を潰されたか。なら…」
霧島先輩はスカーレットの右腕装備を外し、蹴り飛ばした。
「昨日のお返しだぁ!受け取りやがれ!」
ブレードの本体が零に向かう。しかし、DCSに接続していたため、間一髪回避に成功する。
「電子戦タイプ……どう対処したものか」
普通に戦えば経験の差でどうしても劣り、DCSを使ったとしても機兵器をジャックされ思うように動けない。
「なら、一か八かの勝負だ」
俺は動き回るのを止め、いつでも動けるよう準備をした。この作戦は一度きりしか通用しない、この一撃で仕留めなくてはならない。そして、スカーレットの電子ジャックが入る。
「どうした葉隠、そっちから来ないなら……一瞬で倒してやる」
N.W12 アルティマ。
しまった。その可能性を考慮に入れてなかった。こちらの作戦が読まれたのか…?
「俺が近づいた時に、片腕犠牲にして俺を倒そうって算段だったんだろ?まあそれしか勝ち目がないもんな」
完全に先輩が一歩先を行っている。だが諦めるな……何か方法があるはずだ。電子戦タイプにも弱点はあるはず、そうじゃなければスカーレットのようなタイプばかりが大会に溢れるはずだ。
「この試合は俺の勝ちだ。戦法の変更は無しだ」
……まだだ。
「射出!」
砲撃音が聞こえると同時に動き始める。できるだけ、最速で。
「ちっ、気づいたか……アルティマの弱点に…」
あのミサイルはその性質上、恐らく一直線にしか進めない……まるで高速で飛んでくる杭のようなものだ。さらにその反動を機体は受ける、昨日の試合でそれは確認済みだ。そして、砲撃音からして…
「そこだぁああああああ!!」
マシンガンの銃口がスカーレットの機体に当たる。
「ゼロ距離、フルバースト!」
「させるかぁあああああ!!」
スカーレットは最後の一撃に左腕の拡散弾を零に撃ち込む。
そして、マシンガンの中に拡散弾が入り込み、零のマシンガンが暴発した。
「くそっ、こんな時に!」
零は素早く退避し、互いの装備はほぼ互角となった。
「今のは危なかった……俺も、負けるわけにはいかねえんだ」
「それは、橋馬先輩って言う人との約束ってやつですか?」
「……黄泉原」
「仕方ないっしょ?何に拘って戦ってるのかくらいは教えてやらないと、あんたがわからず屋のアンポンタンみたいになるわよ」
「……お前あとで部室の掃除全部やれ」
「こんな事なら教えなきゃよかった…」
俺は、いつ攻撃が来ても良いように構え直した。
「俺、思ったんですよ。その橋馬先輩に会った事も話した事もないっすけど、多分石波の力を受け継いでくれって言うのは、ただ単に伝統だけの話じゃないと思うんです」
「……」
「もう一度、石波の勢いを機兵闘技祭にぶち込んでやれって、そういう意味も含んでるんじゃないかって」
「その石波の勢いには、俺たちの戦い方が必要…」
「何も捨てろとは言ってません。ただ、ベースにして昇華させるべきです。このままだと、ワンパターン化した石波の戦法を殆どの高校に看破されてボコボコにされます」
「……」
「俺は、確信してるんです。先輩と戦って、俺たちならできるって。俺たちが力を合わせれば、どんな事も成し遂げられるって」
「ちっ……」
「だから、俺も負けられないんです」
「そうかよ……なら、見せてみろ。お前の全力を」
マウスピースを咥え、DCSを発動させる。昔、石波が出ていた頃のテレビを思い出し、ある武器が出てきたのを思い出した。その武器なら、あるいは……
「黄泉原先輩、『アカシック』……お願いできますか」
「……了解」
N.W 00 アカシック
零の足下にレーザーブレイドを一回り大きくした武器が設置された。
「左腕、解除。アカシック装備」
零の左腕に一際大きなレーザー状のブレードが形成される。
「そうか、それがお前の答えか」
視界をジャックされようと、距離感を操作されようと、巨大な剣で辺りを斬り回せば関係ない。
「さすがにこれは……お手上げだな」
零vsスカーレット
N.W アカシックによる機体大幅損傷によるスカーレットの戦闘不能。
零の勝利
数分後、今回の試合の感想戦を簡単ながらに行った。俺の最後のあがきはまず実戦では不向き、特に電子戦タイプが向こうにいる時は味方を巻き添えにしかねないとの指摘を受けた。
「あと、電子戦タイプは基本的に同じ電子戦以外に弱点はいない。強いて言うなら遠距離スナイパーも弱点っちゃあ弱点だが、まあやられはしないさ」
「私たちの学校みたいなスタジアム型のフィールドは本当に少ないしね。ほとんどは市街フィールドとかで戦う事になるの。だからさっきの葉隠君の作戦は無意味に近いし、逆に言えばスナイパーは狙撃しやすいわね。霧島部長なら何とかしてくれるっしょ」
「てめえこういう時ばかり先輩扱いしやがって…」
「まあフィールド毎の戦闘などは次の練習試合以降で慣れていきましょう。あと、やはり俺たちだけではメンバーが少なすぎると思います。八重先輩がいたらスナイパーとして頼もしかったのですが……」
「ならスカウトしましょうよ、校内で」
「また突拍子も無い事言うなぁお前…」
「いいんじゃないの?少なくとも今回の試合で学内の注目度はかなり高まったわけだし。興味を持ってくれる人は少なくないと思うわよ」
「ま、それならいいんだけどよ。それより、本題だな。曲がりなりにもお前は俺に勝った……だから」
「いえ、一度、従来の戦法を試してみましょう。それで、その最中に各々がこうした方がいいと思えば、そのように動く。それぞれが最善だと思う行動を取る、っていうのが俺の求める戦法です」
「……無理はしなくていいぞ」
「いえ、先輩の機兵器にかける覚悟は、戦っていて痛いほど伝わりました。その覚悟を、蔑ろにしたくないんです」
「先輩思いな後輩だこと、素晴らしいねぇ、まったく」
「基本方針はこれで決まった感じですかね?では黄泉原さん、練習試合の対戦相手のデータを」
「よし来た。それじゃあ説明させてもらおう。お相手は城鐘高校」
「し、城鐘ですか!?」
「……そこって、まさか」
俺と多摩先輩は絶句した。そう、その城鐘高校というのは……
「ああ、過去5回の優勝を果たした超強豪だ」
第5話 了