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硝煙のノア  作者: 真白シグマ
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第4話 約束

「お、おいそれどういう事だよ!」

黄泉原(よみはら)先輩が誰よりも先に口を開いた。

「新しい仲間が出来て、これから練習試合とか、機兵闘技祭(メカリア)とかまたやるんじゃ無かったのかよ!!」

「落ち着け黄泉原。このままだと、って言っただろ」

霧島(きりしま)先輩が黄泉原先輩を宥めた。

「確かに去年の成績は芳しく無かった。準決にすら上がれなくなって、周りからは落ちぶれたとかなんとか言われてる。だけどな」

そこまで言って俺の方を見る。

「やっと(ホロウ)をフルに使えるやつが来てくれた。情けねえ話だが、やっぱ石波には零が必要なんだ」

「零が……必要?」

「……零をエース機として、周りがそれをサポート。それが石波の昔からのスタイルなの」

「まあ他の高校にも似たスタイルはあるんだけどな。DCSを使える使えないでは大きく違う。そういう意味で、零が必要なんだって話だ」

なんつーか…

「なんで昔からのスタイルに拘るんスか?俺らは俺らでしょ?」

伸び悩んでるとしたらこれが足を引っ張っていると、俺は思った。

「新入りの俺が言うのも生意気だと思います。でもそのスタイルを読まれて、戦術が崩されてるんじゃないっすか?」

「そうかもね……でも安定性と確実性を求めるならこの型が一番よ」

「それでパターン化されちゃってるから読まれるんスよ。変わるなら今しか無いんです」

「俺も葉隠(はがくれ)に同意します。このままの古い戦い方では敵に呑まれるだけです」

「じゃあそれに変わる具体的な案はあるのか?」

「戦法なんて決めないで、その機体がその一瞬一瞬で一番機能する行動を取る。それでいいんじゃないですか?」

俺は霧島先輩の指摘に怯まず、自信を持って答えた。

しばらくの間静寂が続き、霧島先輩の口が開いた。

「……そこまで言うんなら、お前に賭けてやってもいい」

「霧島!」

「ただし、俺に勝て。あれだけ啖呵切ったんならできるな?」

「……」

俺たち2人は互いに機体に乗り込んだ。


「おいおい……葉隠のやつ、霧島怒らせちゃったよ……」

「まあ予定通り試合が行えるんでいいんじゃないですかね。……黄泉原さんはどっちに賭けます?」

「……どうしようかね。正直このままじゃダメだって薄々気づいてはいたよ。でも…」

「霧島先輩の約束、ですよね。橋馬(はしま)先輩との」

「橋馬先輩はすごかったよ。DCS無しで零をあそこまで動かした、一種の天才。でも、やっぱり天性の才能には勝てなかった」


『石波の力を、来年にも引き継いでくれるな?』

『……はい、橋馬先輩』


「……この戦い方は、橋馬先輩の言う石波の力そのものだ」

真紅に染まる機体が、静かに動き出した。

「行くぞ、スカーレット」


スカーレット

60t/12m

左腕:レーザーブレイド

右腕:15mm拡散弾

右肩部:広範囲エコーサーチャー

左肩部:インフォームコネクター

脚部:ハイブースター


(ホロウ)

70t/10m

左腕:20mmガトリング

右腕:30mmライフル

右肩部:索敵ビーコン×6

左肩部:ホーミングランチャー

脚部:スタンダードブースター


「わかってるんだ……このままじゃ負けるって…でも、どうすりゃいいってんだ!」

両雄、戦場に降り立つ。

「葉隠くん、聞こえるかい?」

突然、内部スピーカーから黄泉原先輩の音声が鳴った。

「はい、聞こえてます」

「部長は今迷ってるんだ。この戦法のままだと負ける。それはわかってるんだけどね、3つ上の先輩に橋馬先輩ってのがいたんだ。その人とある約束をして、あいつは今もそれに囚われてる。」

「……なんで3つ上の先輩の話を知ってるんすか」

「ああ、私エスカレーターで進学したからさ。て、そんな話はどうでもいいんだ。その先輩とね、石波の力を引き継いでやってくれっていう約束をしたんだ」

「つまり、その石波の力ってのがさっきの作戦から生まれてると思ってるから、俺の提案を…」

「んー、ちょっちズレてるけどまあそんなもんだろ。葉隠、私から頼みがある」

「……なんすか」

「あのダメ先輩に、1発お見舞いしてやってくれ」

頼んだぞ、そう言って黄泉原先輩の通信が終わった。

「行きますよ、先輩」

「来いよ、葉隠」

両機とも、大地を蹴った。


____________

「ナックルの時のようにむやみに殴りかかると痛い目を見ます」

____________


多摩先輩の助言から、右腕をチェーンブレイドからライフルに切り替えた。そして……

「零、行くぞ」

マウスピースを咥え、DCSを発動させた。すぐさまライフルを構え、狙い撃つ。

しかし、狙った方とはまるで違う方向に弾が飛んで行った。

「どうした?お前の力ってのはそんなもんか?」

レーザーブレイドを構えたスカーレットが、いつの間にか目の前に接近していた。

「ちっ、喰らえっ!」

接近してきた機体に向けてマシンガンを乱射する。しかし、被弾は僅かで、ブーストで回避されてしまう。

「は……速い!?」

「どうした?鈍くなってんぞ!」

背後から直接蹴りを入れられ、体勢を大きく崩される。その反動で、口からマウスピースがこぼれ落ちる。

「……あ?」

先ほどまで後ろにいたスカーレットが今度は前方にいた。

「悪いが、今のままのお前ではこの機体に勝てない」

「そんなもん……やってみなけりゃ」

「現にお前は俺の前で突っ伏してるだろ」

DCSを繋いでいる間、相手との距離がメチャクチャに感じた。恐らく、スカーレットのタイプは……

「電子戦型か…」

「相変わらず直感力は素晴らしいな。さてと、そろそろ終わりにするか」

レーザーブレイドを再び構えたその一瞬。その一瞬の隙を突き、DCSを発動させた。

「喰らいやがれ!」

ライフル弾をスカーレットの右手に命中させた。

「……やってくれるじゃねえか」

「俺だって、負けられないんすよ」


第4話 了

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