第17話 終焉の行進
ここから色んな人と組織が交錯する重要な展開になっていきます。誰が生きて、誰が死ぬのか。何のために戦い続けるのか。その辺がテーマになり〼。
3日前
「それで?例のやつは持ってきたのか?」
「モチのロン。機兵器には効果抜群だ」
加賀美が示したデータには新しい兵器と使い方のような物が書かれていた。
「火炎放射器。機兵闘技祭じゃあまず安全面の問題でアウトな兵器だが、これは戦争だ。相手を無力化する事に特化した」
「火炎放射、か。レーザーブレードとかのNOAA兵器と違って、一見、機体そのものには微弱なダメージしか入らなそうだが…」
聖坂が新兵器について意見を言う。そこに華間が続く。
「一見、ね。注目すべきはこいつが出す炎による熱ってところかしら」
「……金属の熱伝導か」
華間の話を聞き、霧島がその意図に気づく。
「当然、短時間じゃ熱は回らないが、長期戦に持ち込む、もしくは超近距離で発射すれば機体の中のパーツを破損できるかもしれないな。長期戦は俺のスカーレット、超近距離戦は葉隠の零だったり高速で動ける聖坂のバニシングがやれそうだな」
「しかし、やれるのか?相当時間かかるぞ」
霧島の分析の後、士南は疑問を投げかけた。そして、聖坂のこめかみに青筋が走る。
「…………加賀美、あのクソ部長はこの扱いづらいパーツしか持って来なかったのか?」
「そう言われると思って、持ってきたぜ!」
聖坂の怒りのボルテージが最高潮になろうというその時、新しい声が聞こえてくる。
(あ、部長死んだな)
加賀美が自身の部長を心の中で祈りながら、素知らぬふりを貫く。そして、ドアが勢いよく開かれる。
「いやー、遅れてすまんすまん!聖坂、手紙気づかなくて済まんなぁ!」
「…………水無月ィ!!お前はいつもいつも俺の出す書類を悉く無視して、それで部長務まると思ってんのか!?」
「おいおい落ち着いてくれよ、一応歳上だぜ?」
歳下であるはずの聖坂にまくし立てられたじろぐ東雲の部長。その姿を見て、彼を知るものはいつもの事かと呆れ、初めて見るものは唖然としている。ある程度して、士南が収拾をつけようと口を挟んだ。
「さて、コントは済んだか?」
「……やはりお前が来ると話が進まねえっス。で、水無月……他に何を持ってきたんだ?」
「そう来なくっちゃなあ!」
聖坂に促され、水無月は持参してきたファイルから何かを取り出し、それを机の上に置く。
「こりゃあ……ディスクか。紙もタブレットも持ってないとなると、こいつは映像か?」
「ご名答、流石は石波の部長といったところか」
「はあ……御託は良いからさっさと見せてくれ」
天堂ですら若干呆れ気味になっていたため、水無月はディスクを再生させる。
「百聞は一見にしかずってな」
◇
現在__
「……本当に、黒い機兵器が、人を助けた?」
俺は目の前で起きた信じられない光景に唖然としていた。そして、その機兵器が俺を一瞥すると、病院の反対側へ飛んで行った。
「……そうだ、部長に連絡しなきゃ!」
急いで電話すると、即返事が返ってくる。
「どうした葉隠?」
「黒い機兵器同士が戦って、病院が狙われたところを片方が阻止したんです」
「……これで今週3件目か」
「もうそんなに……」
謎の黒い機兵器は俺が眠ってる間に既に活動を開始していたようだった。眠っていたといえば、俺は重要なことを聞き忘れていた。
「部長。俺、いつから眠ってたんですか?」
「5日前だな。医者が一週間で治るだろうって言ってたから明後日には出れると思うぞ」
話もあらかた終わって、もう回復したなら黒い機兵器の事も含めて話をするぞ、と言って部長は電話を切った。しばらくしてから、俺はあの機兵器について、1つ疑問に思った。
無人機が、同じ無人機を襲うだろうか?
単なるプログラミングのミスかもしれないが、そんなものは組織にすぐ修正されるだろう。それに、俺が城鐘で戦った無人機とは大幅に戦闘タイプが違っていた。どちらかと言えば2回目、あの傭兵が遠隔で操ってた無人機と挙動が似てる。人間っぽいんだ。それに相手の攻撃の隙を狙って致命的なダメージを与えるあの戦法はまるで、葉隠露雨__姉さんの戦闘スタイルそのものだった。
「エスカと姉さんに何かあったのか?……まさかな」
◇
「八重さん、本当に行くの?」
石波の部室にて、黄泉原が八重に机を挟んで問いかける。八重の手には、数枚の資料が握られている。
「あそこはエスカよりヤバい奴らの管轄下だ、最悪死ぬよ」
「分かってる……"管理者"、だっけ」
「あいつら、機兵器以外にもよく分かんない兵器も使うんだ。八重さん1人じゃ危険すぎる」
黄泉原が彼女の身を案じるが、首を横に振り、黄泉原の眼を見て言葉を発する。
「確かめなきゃ、管理者と"葉隠露雨"との関係を」
「……杞憂かもよ?昨日も言ったけど、偶然って線もあり得る」
「にしては出来過ぎてる。まるで……誰かの計画通りに運ばれてるような、そんな気がする」
数秒の沈黙が流れる。八重は、黄泉原の目から顔を背けずに、その意思が揺るがないことを示した。
「……分かった。負けたよ。ったく、昔から変わんないよね。そういう強情なところ」
「それが取り柄だから」
「……骨は拾ってあげられないよ」
「発破かけてくれるね。私がそうおめおめ死ぬわけ無いでしょ。じゃ、行ってくる」
彼女は黄泉原に見送られ、巨大なキャノンが目印の機兵器"フォルテ"に搭乗し、目的地である『石波第五総合病院』へ向かって行った。
八重からの反応が途絶えたのは、それから1時間後の事であった。
◇
「副隊長、あれから5日経つが何か分かったか?」
「まあそう焦るな。露雨"様"のデータは膨大かつ複雑だ。解析にはもう少しかかる」
噛みタバコを嗜みながら進捗を訪ねる男、ネイルは、自らが奪取したデータを"副隊長"と呼ばれた男の隣で偉そうに立っている。そしてその副隊長と呼ばれた男は、5日前に城鐘を襲撃してきた男そのものであった。
「あの女に敬意を払ってるのは、今となってはお前さんだけだぞ、クロウ」
「それだとしても、あの方がエスカの礎には変わらない。あの男を隊長とは俺は認めるつもりは毛頭無い」
「ギャハハ!毛頭無ぇってマクス博士じゃねえんだからよ!」
ネイルが冗談をかましていると、データの解析完了を知らせるアナウンスが表示される。そこに表示された文字列は……。
「…………なるほど、そういう事か」
「どういう事だよ。K-0sシステムって一体何なんだ?"世界の構築"やら"人類の危機に繋がる"だとか書いてあるが」
「エスカの目的は知っているな?」
エスカ副隊長"クロウ"はネイルに突然尋ねる。
「あ?そんなもん、機兵器の殲滅だろ?」
「何のためか。殲滅の理由を疑問に思ったことは無いか?」
「…………そういや」
「露雨様はこのために管理者へ赴いたのか……やはり俺は間違っていなかった!」
彼は上着を羽織り、退出しようと席を立ち上がる。
「お、おい!電源どうすんだよ!」
「スリープにしてロックを掛けろ」
クロウはそう言い残し、部屋にはネイル1人となった。
「……ほんと困ったちゃんだぜ。なあ?…………隊長」
柱の死角となっている部分から、1人の男が現れる。
「全く……相変わらず勘と腕っ節だけはいいヤツだ」
「人様のお話を聞き耳だなんて、随分と良いシュミしてんだな」
ネイルとエスカ現隊長"アイデリア=オールドマン"は互いに睨み合う。
「何、エスカ立ち上げの発起人である2人の話を、後輩として伺ったまでだ」
「……そうかい。それなら良いんだかな」
ネイルは彼の横を通り抜けた、退出の間際にこう言い残して。
「俺はまだ、その腐った名前を信用したワケじゃあ無ぇって事を忘れんなよ。ここにはそういう奴らはわんさかいる、背中には気をつけるんだな」
そして部屋には、今度こそ1人しか残らなくなった。
「まったく、難儀なもんだ。親父の名前継いでるたけでこのザマか」
◇
「ここが目的地か。なんというか……見事なまでに廃墟だね」
廃病院と化した地に着いた八重は、機体から降り、内部へと侵入する。薄暗い中を僅かな日光を頼りに進んで行く。そして、彼女はついに目標の部屋にたどり着いた。
「309室……間違いない。ここが、『王並』ちゃんが入院してた部屋……」
数日前……
彼女は、同じスナイパー型の王並の戦闘訓練を請け負っていたが、その際にある記事を発見した。
「……たった一機で相手チームを殲滅?あの子随分なやり手だね」
「あー、王並ちゃんか。相当強いよ、葉隠君を模擬戦で追い詰めたからね」
「ふーん、通りでね」
八重はその記事を机に放り投げ、椅子に座り込む。
「この子、NOAA放出事件の生き残りじゃない」
「……どこでそれを?」
「黄泉原さん、意外とこういう手に引っかかるんだね。今ので確信に至ったよ」
黄泉原は自分の引き出しから数枚の資料を渡し、八重はそれにざっと目を通す。
「葉隠の姉さんが事故の後に入院した病院と、王並ちゃんが生まれた所は一緒なんだ。そして、NOAA放出事件は葉隠露雨の入院を狙ったかのように起きた」
「NOAAの汚染から生き残ったって事は……彼女強さはNOAAによるものなのかしら」
「気になるならもっと調べてあげようか?」
現在……
八重は病室をくまなく探す。王並が無事だったならば、この部屋が1番手がかりが残っていると踏んだのだ。
「あった……」
彼女は、ベッドの下からカルテを見つけ、それを読む。
「……嘘でしょ?なんであの子は生きてるの?」
王並は、生まれながらにして難病『N式染色症』に罹っていた。NOAAが体内に混入し、それが増殖することにより臓器がボロボロになるという症状であり、彼女が生き残る術は無いはずだ。と、考えていると
ガタン
__物音が聞こえた。
「誰だ!」
八重が病室から出て行くと、廊下には誰もいなかったが、足跡が下階に向かっていくのが見える。
(罠か……?だが、これだけでは情報がなさ過ぎる)
彼女は、足跡を追って地下へ向かって行った。そこには、重厚な扉が半分開いていた。
「ここまで来るとあからさまね。まあいい、鍵掛かってるより好都合だ」
そして彼女は、奥へと足を進める。
第17話 了




