少年と居候 1話
襲撃編の裏での話です。
この先の話ともリンクする部分もありますので、こちらもよろしくお願いします。
幕間『とある少年と居候 』
石波町、5月14日。
機兵器襲来事件当日___
「くそっ、なんなんだよこれ!?」
石波町に住む一般的な大学生である新崎黒伊は燃える町をひたすら駆け抜けていた。
「レポート書いて図書館に残って、帰るのが遅くなって、疲れてんのにこの仕打ちかよ!」
彼は既に黒い機兵器、緑の機兵器、青い機兵器の姿を確認しており、いずれもターゲットに注目していたため奇跡的に難を逃れていた。
「周りみたらみんな避難してるしよ!ツいてねえなあ全く!」
疲労と恐怖が混じり、笑ってごまかしていくしかできなくなった彼は、ただただ足を止めずに走り続ける。
「この先に行けば、避難所だ!」
意気揚々と通りに出ると、そこには先ほどとはまた違う黒い機兵器が2機いた。
「……へ?」
逃げ切ったと思った矢先にこれである。その2機との距離はわずか50m。見つかれば即死だ。さらに運の悪いことにその機兵器は互いに戦っているため、足場が非常に悪く、振動でまともに走れそうにない。
「なんであいつら戦ってんだよ……見つかったらおしまい……うおっ!?」
新崎の足元に流れ弾が飛んでくる。
「こんなんじゃおちおち渡れねえよ……でも俺この道しか知らねえし……」
完全に脚が竦み上がり呆然としていると、片方の黒い機兵器が彼の元に倒れかかってくる。
「う、うおおおおぁあああ!?」
彼はすんでの所で路地裏に飛び込み下敷きを回避した。その差、僅か10cm。
「し、死ぬかと思った……なんなんだよマジで!」
『人間か。僕の声が聞こえるか?』
唐突に機械的な声が響く。新崎は辺りを見渡す。
「うわっ!?誰、どっから!?」
『こっちだ』
声の主は黒い機兵器であった。隠れてやり過ごそうとした彼にとって、最悪の事態であろう。
「な、何の用だ?俺はさっさと避難所に逃げたいんだよ!!」
『なら、協力してほしい。僕に乗り込め』
「の、乗り込む!?」
新崎は声の主からの提案に戸惑う。その様子を見て、機兵器は言葉を続けた。
『この機兵器は無人だ。AIである僕が動かしているんだが、攻撃プログラムが破損してしまってね。そのせいで破棄されそうになったからエスカっていう組織から逃げ出して、追っ手が来たって顛末さ』
「そんな内輪の問題に俺を巻き込むのかよ!?つーか何で俺が乗る必要があるんだ?攻撃できねえんだろ!?」
事情を説明するAIに、混乱する人間。そんな2人にもう片方の機兵器が近寄る。
「くそっ、こっちに来やがる……」
『プログラムが死んでるだけで、手動なら動く。君、機兵器動かした事あるかい?』
「……テレビで機兵闘技祭見た事しかない。一応操作方法だけは分かる」
『じゃあ移動は僕がやる。僕が合図したら攻撃してくれ』
「…………ああもう!しゃあねえな!!」
新崎は勢いよくコックピットに乗り込む。
「死なば諸共だ!!ちゃんと動いてくれよ!」
『こっちの台詞だ。僕の指示通りしっかり攻撃してくれよ』
少年が乗った機兵器はゆっくりと立ち上がり、敵機を蹴り飛ばす。
「おい、名前教えろ」
『名前、か。品番ならG.I.L5063……』
「長え!今からお前の名前は《ギル》、G.I.Lでギルだ!行くぞ!!」
『……了解、君は?』
「新崎、新崎黒伊だ!」
『クロイ、ヘマするなよ』
「こっちの台詞だ!」
激戦の裏の、もう1つの戦いが始まる。
幕間『少年と居候 壱』 了




