第15話 それぞれの結末
お久しぶりです。
異世界の方がやっと投稿できたのでこっちも出します。
零が二刀のレーザーブレードを手に取った。石波が独自開発した小型の対のアカシック。その名も……
「アカシック・ツヴァイ、こいつが俺の本領だ」
「見てなかったか?俺の実体ブレードはレーザーブレードをすり抜ける」
青い機兵器は空中を浮遊し、いつでも突撃できる準備をしている。
「逆も言えるだろ?そのブレードじゃ、レーザーブレードを受け切れない」
そして、俺は柄の端を合わせ一体化させる。アカシック・ツヴァイは、二刀の短刀から、薙刀に変化した。更に、補給部隊の護衛らしき機兵器からライフルを取り、左手に装備し敵を見据える。
「武器同士を結合した……?これもDCSの力……?」
黄泉原は驚きつつも、零のパラメータを確認する。そこには、さらなる驚愕の事実が待っていた。
「……シンクロ率、65%……だって……?」
◇
士南が乗るアイギスに降りかかろうとしたアカシックの一撃を、多摩が乗るナックルが受け止める。
「俺が止めてるうちに、みんなを連れて避難してください!!」
「だがお前は……!」
「何とかします。できるだけ戦力、特に適合者は保持した方がこれから先有利になります……だから早く!」
アイギスがナックル以外の2機を庇いつつ、校舎裏に連れて行こうとする。
「させるか!」
「こっちの台詞だ!!」
王並の射撃が敵の足元を直撃する。
『そこから動けばケガするよ』
「……くだらん、まずは貴様からだ」
アカシックの出力がさらに高まるのを感じ、多摩は覚悟を決めた。
「丁度いい、これを試す時か……」
突如、ナックルの頭部にあるカメラアイが赤く光り、脈打ち始めた。そして、赤い光が機体を全体的に包む。
「なんだ、それは」
青年はこの戦いの中で、初めて驚いた様子を見せる。
「限定解除、ってとこですかね」
「……面白い、と言いたいところだが」
敵は唐突にアカシックの出力を切った。
「部下から葉隠露雨の残したデータを回収したとの報告が入った。作戦は終了、非常に残念だ」
「……逃げるんですか?」
「挑発のつもりか。そんなガタガタの状態で良く言う」
敵機はライフルを構え、校舎に向けて発砲する。
『くっ……こちら王並、右手が被弾した!これ以降の狙撃は続行不能です!』
「……狙おうと思えばいつでも潰せた……」
「そういう事だ。まあ、退屈しのぎにはなった」
そしてその機兵器は再びヘリコプターに接続され、ゆっくりと飛び立つ。
「ナックル……その機体もよく覚えておこう。準備はしてもし足りないからな」
やがてヘリコプターが見えなくなると、校舎裏から士南、華間、天堂の3人が出てきた。
「持ちこたえてくれたか」
「何とかするって言ったのは自分です。有言実行したまでですよ」
多摩がナックルから降りると、校門に1台のジープが停車した。そこから降りてきたのは、霧島と八重の2人だった。
「部長……それに、八重先輩!?そのジープは……」
「こいつはたまたま救難信号を受け取った傭兵のモノだ。しかしまあ、ひでえ有様だな」
「多摩君久しぶりだね。……そのナックル、何があったの?」
霧島と八重はボロボロの機体と校舎前を見つめ、戦闘の気配を察知した。
「それについてなんですが……」
多摩が先ほどまでの戦闘について話そうとした矢先、霧島の端末に通信が入る。発信元は黄泉原からであった。
「悪い、出るぞ……どうした?」
『部長、今どの辺?』
「丁度城鐘に着いたとこだ。……なんかマズい事でも起きたか?」
『葉隠君のシンクロ率が65%に到達した』
「……何だと?」
『至急みんなを城鐘の部室に呼んで、ここでの戦闘もそこで説明する』
「分かった」
霧島は通信を切り、4人の前まで歩く。
「黄泉原さん、何と……」
「多摩、八重先輩、あとそこの3人、それと王並も聞こえてるか?これからここの部室まで向かう」
「いきなりどうしたんだい?血相変えて」
天堂が焦りを見せている霧島に対し、質問を投げかける。
「かなりマズい事になった。ワケは向こうで話す、急ぐぞ」
◇
薙刀によって片手が空き、ライフルで遠距離に対応できるようにはなったが、それでも敵の速度には程遠い。
「ちっ、ちょこまかと……」
「俺のスピードに置いてかれて、蜂の巣になりテメエは死ぬ。それだけの話だ」
いつも以上に零との連携が上手くいってはいるが、それでもダメージを最小限に抑える事で精一杯だった。
「……スピード勝負なら負けねえっスよ」
聖坂の乗るバニシングが青い光を纏って立ち上がる。DCSに繋いだ証拠だ。
「あ?片腕失ってからじゃ遅すぎるんじゃねえか?」
「いやいや、コイツはちっとばかし寝ぼすけでな。本気出すまでに時間かかるんスよ」
と、言うが早いか……バニシングは既に青い機兵器の後ろまで移動していた。
「なっ……!?」
「こっからは退屈させねえッスよ……さあ、楽しもうぜ」
バニシングが左腕に握っていたブレードを勢いよく振るう。敵は間一髪腕に装備したユニットを犠牲にし、機体そのものへのダメージを無くす。
「相手は1人じゃねえぞ!」
俺は苦戦する敵機にアカシック・ツヴァイを振り下ろす。敵は即座に反転し、俺の一撃を躱す。
「……そうか、超スピード。それがお前の副産物か」
「ご名答。けど、バレたところで……どうという事はない」
「望むところ……あ?通信か?」
敵が構えを崩す。俺はさっきの件から緊張を解かず、機兵器に意識を向け続ける。
「……作戦終了だとよ、悪いな。お遊びはこの辺でお開きにするか」
「逃すか!」
聖坂と俺がブーストの準備に入ると傭兵はまあまあ、という風に口を開く。
「待てって。俺は左腕のユニットを失ったもののノーダメージ、それに対してそっちは片や右腕を失い、片や連戦で疲弊しまくってるはずだ。その状態で俺を追ってどうする?」
「交渉ってワケか」
「互いに退いて整えた方が利口だとは思うがな……それでも俺を追うか?」
俺たちは武器を降ろし、DCSを切る。相手もそれに応じ、飛行ユニットを元の形に戻す。
「話が分かるやつで助かるぜ。お礼といってはなんだが、面白い事を教えてやるよ」
青い機兵器はユニットに接続し、浮上する。
「エスカの目的」
俺と聖坂はほぼ同時に反応する。自分の部長を殺害されたからか、静かに、だが怒りを込めて返答する。
「……さっさと言え」
「おー、こわこわ。アイツらの目的、それは……」
『機兵器の殲滅』
余りにも突拍子も無い内容に俺は唖然とした。機兵器を無くすだと?そんな事、可能なのか?それに何のために?
「どうもお偉いさん方はヒトの未来のため、らしいんだが……俺としてはそんなのは関係ない」
飛行ユニットのブースター出力が最大になる。
「俺は、強いやつと戦えりゃそれで構わねえ。それだけだ」
それだけ言い残し、傭兵は飛び去っていった。
◇
「で、何があった?」
霧島、八重、王並、多摩、士南、華間、天堂が部室に到着し、各々席に着く。先刻までの戦闘をざっと霧島と八重に伝えたのち、黄泉原が口を開く。
「こっからが本題ね。葉隠くんと零のシンクロ率が50%を上回ったの」
「何……?」
最初に声を上げたのは華間であった。
「シンクロ率は通常でも30%前後のはず……50%を超えるなんて、滅多にない事だぞ」
「それに、同調しすぎると……マズい事になるね」
続いて天堂が口を開く。DCSについて知識のある者が深刻な表情をしている。そんな中、多摩が疑問を投げかける。
「あ、あの……このままだと、葉隠君に何が起こるんですか……?」
「意識が零に飲み込まれる。自分の意思で戦う事が不可能になるんだ」
黄泉原が資料を広げながら説明する。
「それはつまり、暴走するって事ですか……?」
「そういう事になる。ところで、葉隠と聖坂の戦況はどうなった」
士南は黄泉原に念のための確認を取る。
「みんなが来る前に連絡取ったけど、作戦が終了しただかで敵さんが撤退したってさ。まあ、さっきの戦闘と一緒だね」
そう言いながら、黄泉原は葉隠達に通信を繋ぐ。
「こっち側の戦闘は全部終わって、今大体の説明が済んだところ。そっちも至急帰還して」
『了解です、なるべく早……く……』
葉隠の通信にノイズが混じる。
『葉隠くん、どうしたんスか!?応答してくれ!!』
「聖坂くん、何が起きたの!?」
『わかんねえ!だけど、急に零が膝をついて倒れやがった!』
『が……ッ!うぐぁああああああああああああああああ!!がはっ、がぁあッ!!』
葉隠の絶叫が通信を通して響く。
「コアを停止させて!今はそれしかない!!」
『分かったっス……ちとガマンしてくれよ』
レーザーブレードの音が鳴り、少年の慟哭は聞こえなくなった。
「葉隠さん……?」
王並は、ショックの余りその場から動けなくなっているようだ。すっと華間が近づき、頭を撫でる。
「大丈夫。聖坂が上手くやってくれた筈だ。仲間なら、信じて待ってよう」
王並は、華間の腕の中で何度も頷く。
「……ちっとばかし、感覚が麻痺ってたな。今回は運良く全員生還出来たが、いつ死んでもおかしくなかった。特に、城鐘での戦いなんかは、5人全員生きてるのが奇跡に近い」
霧島は嗚咽を上げる王並を一瞥し、全員に語りかける。
「気を引き締めていこう。そして、勝つ事じゃなく、生きて帰って来る事を第一に考えろ。俺たちは戦闘のプロじゃない」
霧島の言葉に反論する者は、誰1人いなかった。
◇
「先パーイ、何かポストに入ってますよ?って、城鐘からじゃないですか。聖坂さんにまたこっぴどく怒られますよ」
「げっ、マジかよ……あいつの説教長いから嫌なんだよなぁ」
「しかも中身、DCS適合者を募るやつじゃないですか。これ怒られるの俺なんですけど」
とある高校の機兵器部にて、2人の生徒が話し合っている。
「まあまあ、この新技術のパーツ持ってけば向こうも黙るだろ。ポストに気づかなかったのは俺の不手際だし、俺から伝えとくよ」
「頼みますよ、ホントに……」
彼らが所属するのは、東雲科学技術高校。機兵器の特殊パーツ研究で知られており、彼らの内の1人『加賀美沙仁』こそ、DCSの使い手である。
「さて、こっちからも連絡しておきますかね」
第15話 了




