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硝煙のノア  作者: 真白シグマ
14/22

第13話 動き出す運命

「待ってた……だと?」

「……いやーキツかったッスねえ、あの空間」

城鐘(しろがね)の校門にて、聖坂(ひじりさか)『らしき』人間が口を開く。

「今更取り(つくろ)うつもりか?白々しいぞ」

華間(はなま)が先んじて詰め寄る。士南(しなん)も後に続く。

「あの場には俺たちしかいなかった。初見である石波に対しても、あそこまで態度を変える必要性もないだろう」

「つまり、君たちはボクを疑ってるって事っスか」

「『待ってた』って事は俺たちが疑ってお前を追うのを期待してたんだろ?」

天堂(てんどう)が聖坂『らしき』人間に更に問い詰める。

「君たちが思ったより警戒心の高い人たちで助かった。これから話す事を、余計な人物に聞かれなくて済むっス」

「なら、あの部屋で良いだろう」

「……ああ言えばこう言う、めんどいっスねえ」

4人が立往生(たちおうじょう)している中、突如校内放送が入った。

「はいはい黄泉原(よみはら)ですよー。ここまでの話、全部聞かせて貰いましたー」



5分前__

「初めましてって……さっき城鐘で会ったばっかりじゃ」

俺は目の前に現れた聖坂に質問を投げる。

「何言ってんスか?……俺は1時間前に修理機関から出てきたばっかだぜ?」

なら、俺たちを試した『アイツ』は誰だ……!?

「くっ、出てくれ……」

俺は黄泉原先輩に通信を試みた。このままではDCS持ちの3人や、他のみんなに危険が降りかかるかもしれない。

葉隠(はがくれ)くんか、悪いけどこっちは部長のオペレーションで……」

「聖坂に遭遇しました」

「……どういう事?」

「補給部隊との合流地点で補給部隊の全滅を確認したんです、そこに機兵器(ノア)がいて、こっち向いた瞬間に聖坂の機体が飛んできた」

「本物って確証は?」

「二刀のブレード装備、それに白地に金のペイント、間違いありません」

「じゃあ、さっきまで私たちの前にいたのは……あっ、今聖坂?が部屋から出てきたよ!」

「取り敢えず俺はこれからこっちの聖坂の援護を行うんで、こっちの状況を3人に伝えてください!」

「分かったよ。……生きて帰って来て」

「上等!」



「いやー、さすがの私も驚いたよ?聖坂が2人もいるなんてね!」

「……との事だが?」

黄泉原の発言で3人は身構えた。

「……面倒だ」

聖坂によく似た男は顔を手で覆った。

「もう少しで作戦が終わったってのに」

顔を上げたその男は、別人の物だった。ボサボサの長髪、頰にある傷、そして何より、小動物1匹殺せる程の眼光が印象に残る青年だ。

「余計な殺生はしたく無いんだがな」

男はその右手から何かを捨てた。よく見ると、それは聖坂の顔を模したマスクだと分かる。

「そんな口を利いてられるかな?こちらは3人だ」

「目先の事しか考えられない、若さ故か」

「何の話だ?」

「すぐ分かるさ。耳を澄ませろ」

男がそう言った矢先、ヘリコプターの音が聞こえて来た。そして、そこから5人の武装した戦闘員が降り、3人を囲んだ。

「ご苦労」

「高校生相手に大人気ないな」

「そうやって油断すると足元を(すく)われる。準備はしてもし足りない物だ」

数秒の沈黙が流れる。そして、天堂が口を開いた。

「みたいだな」

彼の発言を機に、校舎側から飛来した弾丸がヘリコプターを撃ち落とした。

「王並さん、慣れない機体で良くやった」

「このくらい、余裕です」

3人はもしもの時のため、城鐘にある予備の機兵器を借り、王並に準備をさせていた。

「準備ってのは大事らしいな」

天堂が意地悪い笑みを見せる。

「油断……か。どうやら君たちを過小評価していたようだ」

その発言と共に、もう一台のヘリコプターが飛んでくる。そしてそこには、一機の機兵器が吊り下がっていた。

「この場を私の手で焦土に変えよう」


「スカーレット、総残弾残り40%!先輩、行けそうか!?」

「フォルテ、総残弾30%……正直キッツい」

霧島(きりしま)八重(やえ)はDCSを繋いだ緑の機体に苦戦を強いられていた。

「序盤の余裕はどこへ行った?機体もかなりボロっちくなったなあ、え?」

「けっ、優勢になってから饒舌(じょうぜつ)になりやがって……そんなのは三下のやる事だぜ?」

「言ってろ。その三下に負けるのはどんな気分だ?」

「まだ決まった訳じゃねえだろ?」

(とは言っても、もう策はこれで最後だ。戦況が一旦落ち着いた今だからこそできる、『最大の不意打ち』)

「そんな状態からどうするつもりだ?」

傭兵がブーストで一気に詰め寄る__が、フォルテが間に割って入る。

「霧島の邪魔はさせないよ!」

「揃いも揃ってウザいヤツらだ……吹き飛べ!!」

傭兵のキャノンがフォルテの頭部を吹き飛ばすと同時にライフルが敵機の脚部を撃ち抜いた。

「……八重先輩、最高のフォロー感謝するわ」

スカーレットと傭兵が互いに(にら)み合いになる。

「なあ傭兵さんよ、こんな単語知らねえか?」

「あ?こんな時に国語のお勉強か?」


その刹那、敵機のコアが何者かによって貫かれた。


「残心……ってな」

黒い無人機がブレードを緑の機体に突き刺していた。押し返そうとするが、その刃はしっかり押さえられており、到底動きそうにない。

「な、なぜ……」

「確かにコアが撃たれてあの機体は動かないハズだ、普通に考えりゃな。だがありゃ無人機だ。コアを無理やり起動して動かす事も可能だ」

「クソが……この俺が、こんなガキどもに!」

「聞きたい事は山ほどある。大人しく拘束されろ」



「葉隠くん、まだ動けるかい?」

「何とか。けど、武器はこいつしかない」

俺は左腕のガトリングを見せる。

「十分だ。僅かでも相手の装甲にダメージを与えれば良いんだ。その(ほころ)びを俺が壊す」

聖坂が両手にブレードを構える。

「行くぞ」

「……良い覇気だ。その装備、余程自分の力に自信があると見える」

「それがどうした」

「俺が傭兵稼業やってるのは『より強い相手と戦う』、ただそれだけだ。お前は、俺の渇きを癒してくれるか?」

「ちっ、厄介なタイプだ」

互いに機を伺い、一瞬の隙を待つ。


そして、3機は同時に飛んだ。


「素晴らしい!私の機を完全に読むとは、それに2人共が!」

「今日の相手はよく喋る奴ばかりだな、これでも喰らえ!」

俺は飛び回る『青い』機体にガトリングを乱射する。そして、その8割を避けずにその場で捌ききった。

「……何だ、今の」

「さすがに格納ナイフじゃ対処しきれねえか」

敵機は、ガトリング弾を防ぎきったナイフを後ろの『白と金の』機体に投げつける。

「当たるかよ」

だが、聖坂は咄嗟に回避し切っ先を敵に向ける。青い機兵器はその斬撃をギリギリで躱し、ハンドガンを向ける。

「こいつはどうだ?」

聖坂の機兵器は銃弾をモロに受け、地面に落下した、だが。

「隙だらけだ!」

背後からマシンガンを敵にぶち撒ける。最初の数十発をクリーンヒットさせ、数歩後退させた。

「済まないっス。アレを躱されるとは正直思ってなかった。葉隠くん……コイツ相当強い」

「落下時に咄嗟(とっさ)に受け身を取ったか。機兵器の構造的にも人間の受け身は効果的、DCSのなせる技と言ったところか」

青い機兵器が静かに着地し、俺たちは再び構える。



「聞きたい事、ねえ。俺を拘束してもただの傭兵にしか過ぎない、何も出ねえぞ」

「かと言って野放しにしとく訳にはいかねえだろ」

「これから政府に突き出して罰せられてもらうよ。それが私たちの仕事だから」

「ああ、1ついい事教えといてやるよ」

捕らえられた傭兵がふと思い出したかのように2人を見据えた。

「たった今零(ホロウ)とバニシング、そしてウチのもう一機の傭兵がカチ合ってるらしいぜ」

「バニシング……って聖坂の機兵器じゃねえか。あいつが出撃したのか?」

「ああ、アイツが機兵器を預けてた修理機関からな!」

「バカな、聖坂はさっきまで俺たちと一緒に……」

「__隙だらけだガキども」

霧島と八重の一瞬の隙を突き、スカーレットの頭部とフォルテの右手を撃ち抜く。

「しまっ……」

「覚えとくぜ、その機兵器……俺をここまでコケにしたのがガキどもだってのが気に食わねえが、大した腕だ」

「待て!」

「最後に教えといてやるよ、ガネッタ・オールランド、俺の名前だ」

そうしてガネッタはブーストを最高出力にした。

「この名前を次に聞いたその時が、テメェらの最期だ」

その言葉を最後に、彼は彼方へ飛び去った。直後、黄泉原から通信が入る。

「遅れてゴメン、あの傭兵は…?」

「逃げられた。一瞬の隙を突かれてな。それより黄泉原、聖坂が出撃したってのは本当か?」

「どこからその情報を!?」

「さっきのヤツからだ。その話で俺たちは動揺して逃げられた。2人とも頭部破壊でまともに戦えやしねえ、救援を寄越してくれ。そんで、聖坂のとこには葉隠がいるんだってな」

「さっき葉隠くんから聖坂の事を聞かされたんだ。今も多分戦ってる」

「アイツの補助を全力でやってくれ」

「言われなくても」

霧島はそこまで聞いて通信を終了した。そして、速やかに救難信号を発信する。

「生きて帰ってこい、葉隠……!」



「この程度とは、所詮は高校生と言ったところか」

聖坂に変装していた男が操る機兵器は、多摩の乗るナックル、天堂の乗るイレイズ、王並の乗る量産機を相手にして余裕の立ち回りを見せていた。士南、華間、天堂を囲んでいた武装隊員は撃ち落とされたヘリの下敷きとなっていた。

「3対1でこれですか……俺たちが弱いのか、アイツが強すぎるのか」

「俺たちが弱いわけ無いっしょ。アイツがヤバいんだ」

「照準は完璧、なのに全部はじき返すなんて」

対する3人は既に疲弊(ひへい)している。戦えてあと数手というところだろう。

「……君らにいい知らせがある。先ほど侵攻していた私たちが雇った傭兵が撤退した」

「で、悪い知らせはなんだ?」

「話が早くて助かる。今現在、我々が雇った別の機兵器が零、バニシングと交戦している」

「……何かと言えばそんな事か。DCS持ちが2人、それに片方は聖坂だ。そう簡単には潰れないさ」

「ほう……この程度では動揺しないか」

「俺たちを煽るより、他に注意すべき事があると思いますが」

「ブロッサムとアイギスか。潜んでいるのは知っている。5人でかかってこい」

「別に潜んでいたわけではない。時間を稼いでもらった」

華間が乗るブロッサムが燃え盛る木々から巨大な(おうぎ)状の武器を持って現れた。

「N.W、零捌 扇王(せんおう)一閃(いっせん)!!」

扇状の兵器の先端に高密度のエネルギーが集中していた。

「N.W04、グングニル!!」

士南が乗るアイギスはブーストを蒸す槍を構えている。

「この力、受けてみろ!!」

「この槍で……貫いてみせる」

対して男は右手を掲げる。

「N.W0、アカシック」

その右手に大剣が握られた。


勝負の時が、近づく。


第13話 了

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