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硝煙のノア  作者: 真白シグマ
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第12話「 初めまして」

黒い無人機が『再構築』を始める。

「これが……城鐘(しろがね)の部長を倒した……」

「立て直しな、来るよ」

黄泉原(よみはら)先輩の忠告を聞いて、すぐさま横に跳んだ。その直後、双方から弾丸が飛んできた。

「トリックは極めて単純だ。携帯の電波を応用して俺の声を無人機から流しただけの事。機兵器(ノア)以外の電波はだいたい無視されるからな、逆手に取らせてもらったぜ?」

傭兵の機兵器は得意気にこちらへ歩み寄ってくる。

「ベラベラ喋りやがって、操作中に舌噛んでも知らねえぞ!」

と言いつつ俺は逃げる準備をする。

「はっ、逃げ腰に言われる筋合いは無えな。すぐ追いついてやる」

俺はブーストの出力を全開にすると同時に、DCSを切った。


「ん?DCS切るの?」

猛スピードで零を飛ばす俺に、黄泉原先輩が訪ねてきた。

「あー、片腕無い状態が気持ち悪いんで切りました。それに、猛スピードの中なら何も考えずにぶっ飛ばした方が楽です」

「なるほどね。だってさ、部長」

黄泉原先輩が部長に呼びかけた。

葉隠(はがくれ)、良く持ちこたえた。腕直せばもう一回やれるか?」

「やれますけど、どうやって?」

「高校所持機兵器が戦闘を行った時点で政府から支援部隊が向かっている。俺が時間を稼いでる間に合流しろ。くっ付けたらまた来い」

「了解!」

そこまで会話して通信を切った。


そして、真紅の機体が俺の横を通り過ぎる。


「ちっ、見失ったか……。しっかし腑に落ちねえな」

傭兵は独りごちる。

「と、言うと?」

「俺は確実にコアを狙ったはずだ。お前も見たろ?」

(ホロウ)を撃った際、彼の弾道は肩に向けたものでは無かった。彼は、あの場で沈めるつもりで弾丸を放った。

「……確かに、ロックオンサイトの中心にはコアがあった」

「外すはずが無い。完璧だった。なら考えられるのは1つ」

そこまで言って、傭兵は背中のキャノンを構えた。

「誰かが逸らしたんだ。恐ろしい程の精度でな」

キャノンの砲弾が瓦礫を吹き飛ばすと同時に、物陰から機体が現れる。

「はあ~……バレないと思ったんだけどなぁ」

長身のライフルを携えた機兵器が二機の前に立ちはだかる。

「そのマーク、国連軍(ユニオン)か」

「だったら?」

「関係ねえ。邪魔するなら誰だろうが潰すまでさ」


「部長、心強い助けだ。国連軍のシグナルが入ってきた!」

「マジか。俺いらないんじゃね」

「んなわけ無いでしょ。スカーレットの妨害は百人力、使わない手は無いよ」

「わーってるよ……ってオイ」

霧島が戦場に届く直前、ある事に気づいた。

「あの機体構成、まさか」

「……あのくっそ長いライフル、あの人しか無いね」

国連軍の機兵器を見て、二人は共通の人物を思い浮かべた。そして、スカーレットが戦場に降り立つ。

「久しぶりだな、八重(やえ)先輩」

「活躍は聞いてるよ。随分腕のいいハッカーになったらしいじゃん」

国連軍のマークを付けた機兵器に乗っていたのは、去年石波を卒業した「八重巴(やえともえ)」だった。

「先輩が来たんなら千人力だ。葉隠が来る前に仕留めちまうか?」

「調子に乗らない。黄泉原さーん、元気してた?」

「はいはい元気ですよっと。それより、呑気に構えてていいの?……そろそろ来るよ」

無人機と傭兵が戦闘態勢に移る。銃口は既に2人に向けられていた。

「俺がおもっきし撹乱する。八重先輩は蜂の巣にしてやってくれ」

「分かった。オペレーター?異論は?」

「無いです、このままぶち抜きましょう」


聖坂(ひじりさか)、どこへ行く」

士南(しなん)が部屋から出て行く聖坂に尋ねる。

「見回りだ。こんな事態だからな、何が起こるか分からない以上、用心に用心を重ねておくに越したことはない」

そう言って、聖坂は部屋を後にした。

「士南君、聖坂ってあんな口調だったか?」

機体のメンテナンス進捗を確認していた華間(はなま)が口を開いた。

「たぶん突然の事態でピリピリしているんじゃない?」

天堂(てんどう)、お前には聞いていないんだが」

「いいじゃん別に、俺だけのけものは嫌だよ?」

「はあ、話が進まないな」

士南が呆れていると、天堂が再び口を開く。

「でもさ、いくら部長さんが死んだとしてもこんな穴だらけの訓練やるかな」

「……何を」

「俺だったら一気に4人テストするにしても、仮機体を用意して試させる。俺でさえ思いつくことを聖坂がやらないとは思えないんだ」

「つまり、私たちの機体を動けなくした上で石波の破壊を?」

「それだけじゃない。俺たちが適合者だという情報も割れた。そういう事だな、天堂」

「そう言う事。これは向こうに先手取られたね」

士南は立ち上がり、扉を開いた。

「追うぞ」

3人は聖坂を追った。


「ちっ、赤い方は電子戦型かよ!カメラが役に立たねえ!」

傭兵はスカーレットの撹乱の策に見事にかかってしまう。たかが高校生にしてやられた怒りからか、声を荒げる。

「落ち着け。何のためにオペレーターがいると思う」

「なら方角を教えろ、お前もさっさと帰りたいだろ?」

「お前から見て10時の方向だ」

傭兵は背のキャノンを勢いよく放った。

「っぶね!……千里眼でも持ってんのか?」

「普通に考えてオペレーターの指示でしょうよ。私も良くやるじゃん」

「意外に早く対策されたね。無人機の方は封じたから取り敢えず緑色の方をやっつけるよ」

八重は黒い無人機を早々に撃ち抜き、スカーレットの反対側に回る。これで傭兵は挟み撃ちになる。

「はあ……絶体絶命か」

「ここで諦めてどうする。報酬を貰うまで働くんじゃなかったか?」

「言ってくれるな。片や国連軍、片や電波ジャック。片方だけならまだしも、揃っちまうとお手上げだ」

そう言って、傭兵は武器を捨てる。


「降伏、か。捕らえるよ」

「了解」

2機は傭兵に近づく。そして、あと数歩というところだった。

「降伏、とでも思ったか?」

「「!!?」」

2機は咄嗟に後ずさる。その瞬間、傭兵の機体が『青色に』包まれた。

「アレは……DCS!?」

「……非適合者が使うとどうなるか、知らないわけじゃねえだろ。そこまでして金が欲しいか」

「それが仕事なんでね……くっ」

「明らかに無理してるな。機能停止させるよ」

「させねえぞ」

傭兵は足元の武器を蹴り上げて手に取る。そして、先刻よりも格段にレベルアップした機動で攻撃を開始した。

「2人とも、持久戦に持ち込んで!相手のコンディションは最悪だ、自滅を狙って!」

敵の猛攻の中、黄泉原が作戦を伝える。

「サラッとエグい作戦提案してくるな……だが」

「それしか無さそうね!」

猛攻を繰り広げる傭兵相手にはスカーレットが演算をするには集中できず、八重が落ち着いて狙撃できる環境ではない。ならば、パイロットの限界を待つのが最適解だ。


「……司令」

「何かトラブルか?」

「雇った傭兵がDCSを繋ぎ、作戦を見失った。作戦失敗だ」

「まあ待て。この程度、想定の範囲内だ。追加の傭兵を送ってある」

「実力の程は」

「そいつの数倍はある」

「了解、作戦は続行でよろしいか」

「ああ。データの回収が最優先だが、石波がこの状況ならデータの回収はいつでも可能だ。機体へのダメージ、又は破壊ができれば上出来だ」

エスカのオペレーターは本部との連絡を切る。

「相変わらず人使いが荒い方だ」


「馬鹿な」

葉隠が補給部隊との合流地点に到着したが、そこには酷い惨状が広がっていた。

「どうなってんだよ、補給部隊が……全滅?」

補給部隊の残骸の中心に一機の機兵器が立っていた。

「零か。それに手負いとは、随分ぬるい仕事が回って来たものだ」

その機体が零の方向を向く。

「残念だが、ここで消えて貰う」

「ちっ……DCS、起「いやー待たせてゴメンっス。修理が長引いて援軍に来るのが遅くなっちゃってね」

葉隠がDCSを起動する直前に白に金のラインが入った機兵器が両者の間に割り込んだ。

「その機体、まさかアンタ……」

白い機兵器の装備は、『ブレードのみ』という、ひどく特徴的なものだった。

聖坂卿染(ひじりさかきょうぜん)だ。『はじめまして』だな、葉隠幹人(はがくれみきと)


校門に立つ男に、天堂が話しかける。

「……こんなところで何を監視するつもりだ?」

部屋を出た男を追った3人は、城鐘高校の入り口にたどり着いた。

「……待ってたよ、3人とも」


第12話 了

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