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幼少期5

残虐な描写があります

自由になった口でどうにか上着に仕込んだ護身用の短剣を抜き取る。

鞘から抜いた短剣を咥え、ゴロゴロ転がって遊んでいたロニアを呼ぶ。


「ロニア、こちらに来て後ろを向いてくれ」

「こー?」

「そうだ。そのまま、動くなよ」


細いロープはすぐに切れたが、ロニアがすぐに手を動かしたため腕が少しだけ切れてしまった。

普通の子どもなら我慢できるくらいの痛みも、ロニアには我慢できない。

やばい。

事態はさらに悪化する。


「手ぇいだいいいいいぃぃい!」


「なんだ、どうした!?」

「このガキ、縄切ってやがる!てめえ!」


すぐに男が二人駆けつけてきた。

片方の男が剣を咥えた俺の腹を容赦なく蹴り飛ばす。

その短剣を拾い上げ血走った眼で俺を見下ろした男が、唾を飛ばしながら怒鳴り声をあげた。


「ガキ、ガキてめえ、逃げるつもりだったな!? ナメやがって、クソ、足を切りゃ逃げれなくなんだろ!」

「おい、男のガキは絶対殺すなよ!」

「うるせぇよ!!!」


短気な男が短剣を構える。

動けない俺を見下ろす。

背筋に怖気が走った。体が震えて、歯の根が不思議と噛み合わない。

既に俺の視線は、目の前の男を見ていない。



そう、いつかと同じ。

俺の手足はガムテープで固められて、

そこまではよくあることで、

でもその日、

 を持った、

    が、

「   のせいで不幸になったから」

「    を幸せにしてください」

「 んでください」

「 」(かみさま)

「 」(おねがい)


「ありがとう」(つぎは、)



視界が真っ赤に染まるようなフラッシュバック。

自分でも気付かなかった傷は未だに鮮血を垂れ流している。


「あ…………?」


掠れた喉がどんな音を出したのか、俺にはよくわからない。

みっともない命乞いのような、意味のない謝罪のような、理解できない思考がグルグルと脳裏を占領する。

渦を巻く思考の淵に、名前を呼ぶ声が僅かに引っかかる。


「…オセロ?」


――――女の子の声。これは、だれだったか


「ブツブツ気持ち悪ぃんだよ黙れクソガキ!」

「きぃぃぃぃッッ!!!」


ただぼんやりと開かれていた視界に映る映像は、どうにもスローモーションに見えた。


俺の足に短剣を振り上げた男。

癇癪を起こして金切り声をあげるロニア。

全力で体当たりするロニアに尻もちをついた男。

その男の喉を全力で噛みつくロニア。


6歳の少女の顎では喉を噛み千切るまでには至らないが、男を怯ませるには充分な攻撃。

喉を抑え転げ回る男から短剣を奪い取ったロニアが、呆気にとられていたもう一人の男の腹を刺す。

硬直した男を突き飛ばして馬乗りになり、癇癪を起こしたままひたすら抜いて刺すのを繰り返す。


「キァァァァァァ!!」

「ぎゃ、ひぎっやめ、がぁぁぁああああ!」


この現実離れした惨劇に、ようやく俺の意識がこの薄暗い倉庫に戻ってきた。



「…ロニア」


呼びかけた声は思ったより小さな声だったが、気付いたロニアが振り返る。

体の前面は真っ赤な血でしとどに濡れそぼっている斑模様の少女は、俺の顔をみてニコリと笑ってみせた。


「オセロいじめたの、ロアがやっつけたげたー!」


――きっとロニアには、まだ人の死という概念が理解できていない。

善悪とか道徳とか倫理とかそんなものはなんにもなくって、ただ自身の幼い感性のままに自由に振る舞っている。

人を殺して血を浴びて、それでも俺を助けたって笑ってる。


はは、俺の憧れてたのってこういう生き方だったかも。

俺にはまだうまくできないから、ちょっと羨ましいなぁ。



「ロニア、俺の手と足の紐、切ってくれる?」

「いいよ!」


血まみれのドレスを翻らせて走り寄ったロニアが、乱暴に俺の手足を戒めるロープを切り落とす。

少し手が切れて血が出たが、俺もさっきロニアの手を切ってしまったからお相子だろう。


「ロニア、その短剣俺に返してくれる?」

「ヤダ、これロアの!」

「そうか。じゃあ、ロニアの短剣少しだけ貸してくれる?」

「んー、ちょっとならいいよ!」


ロニアの物になってしまった短剣を受け取り、痛む体にむち打ち立ち上がる。

俺たちの前には、喉を抑えながら立ち上がった男。


俺は俺の望むように生きるって決めたはずじゃないか。

ためらう必要なんてどこにもなかったんだよな。



振りかぶられた拳の軌道をくぐり、全身全霊で腹に短剣を突き込む。

男が必死に俺を殴るが、そんなもの痛くないと思い込む。

怯んだ隙に押し倒し、一度抜いた短剣を今度は心臓へ。

動かなくなった男から、ゆっくり短剣を抜く。

初めて殺した。

案外、簡単なもんだな。


血と脂で汚れた短剣を倉庫にある布で適当に拭ってロニアに返す。

さて、ここから脱出しようか。

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