幼少期3
さて6歳になった俺は、父が領主である街の下院学校に通うことになった。
現在の王は、働かなくても生きていける子どもに対して学校へ通うことを義務付けている。
ワイナイト家の子息である以上、学校に通っていないとなれば醜聞だ。
貴族専用の学校も近くの町にあるが登校が面倒なので平民と同じ学校に通うことにした。
父が何か言うかもしれないと思ったが、本格的に俺には興味がないらしい。
今の俺は、家名に泥を塗らないためだけに生かされているといっても過言ではない。
これが俺だから問題ないが、普通の子どもならグレるなり絶望なりしてるぞ。
ちなみに俺は家出も自殺の予定もありません。
親の脛はかじれるだけかじっておきたいので。
通い始めた学校は、中々居心地のいい場所だった。
何といっても、領主に見捨てられた子息、という俺の立場に、級友も先生も戸惑い接触してこないのだ。
学校の授業程度の内容はどうやら予習できているようなので、家から持ち出した本に布製のカバーを掛けて常に持ち歩いている。
授業を放棄し読書していても、指名や注意をする勇気ある先生は今のところいない。
学校が始まり1ヵ月もすると、慣れてきた子ども達の一部が横暴に振る舞うようになってきた。
貴族である俺を除けば、この年代で権力を持つのは、声が大きく体格のいい少年だ。
例に漏れずクラスのガキ大将が腰巾着をぶら下げて、あちこち威張り散らすようになった。
この世界に人権がどうだの子どもの権利がどうだのと言う奴はほとんどいない。
先生も面倒くさがって子どもたちの権力図に口を出したりしない。
この野放図っぷりに、猿山の大将はどんどんつけあがり、上の学年の生徒すら従わせるようになってきていた。
ちなみに、その馬鹿一等賞は調子に乗って俺にすら絡んできたことがある。
「おいお前、領主様のところの出来損ないなんだろ!出来損ないのくせに、貴族とか言って偉そうなんだよ!この教室から出てけ!」
こんなことを言われた気がする。
たしかその時は……
「出来損ないでも、俺は領主様の所有物だ。領主の所有物を貶した君について報告しなければならない。名前を言え」
こんな風に返したかな。
もちろんビビりまくったガキ大将達は慌てて逃げていき、それ以降俺に絡んでくることはなくなった。
……逃げれば済む、と思っているのかな?
確かに父が俺のために動くことはありえないが、俺が個人的制裁を加えるのはその限りではないぞ?
とはいえ6歳児の戯言にガチギレするほど幼い精神はしていないが。
このガキ大将一行の標的に選ばれたのは、同じクラスの女子だった。
ピンク色のふわふわツインテールと、親の趣味なのかヒラヒラフリフリのドレスのような服を纏い、外見だけならお人形のような可愛らしさのある少女。
しかし、内面には問題抱えまくりの問題児でもあった。
ともかく、言動が幼い。
授業をまともに聞いていたためしはなく、授業中は持ち込んだ積み木などに異常なほど集中している。
その集中を邪魔するととたんに癇癪を起こし泣きわめく。
体育の時間には砂の城を作ることに熱中し、悪戯で城を崩した同級生少女に掴みかかり顔中に引っ掻き傷を残したという話も有名だ。
場の空気など一切読めず、自分のやりたいことにだけ驚異的集中力を発揮、そして邪魔されると癇癪。
これが前世の世界であれば、しかるべきところに連れていけばしかるべき病名を宣告されただろうが。
この世界では、奇行に走る子どもは悪魔の落とし子と呼ばれ嫌悪されている。
そんな少女にガキ大将が目を付けないはずがなく。
クラスの空気は日に日に歪み過ごしにくくなっていたようだ。
俺はずっと我関せずの態度を貫くつもりでいた。
さっきまで。




