幼少編1
俺が完全に『夜久城オセロ』であるという認識を持てたのは、多分2歳になる頃だと思う。
おそらく、新生児の脳に前世の記憶というものは手に余る代物だったのだろう。
時間をかけて少しずつ認識できるようになった。
3歳になった今、最期に殺された記憶まで鮮明に思い出せる。
俺が異世界転生を認識して初めに思ったのは、不安でも恐怖でもなく、狂喜だ。
だって叶った。
念願の異世界転生が叶ったんだ!
よくある「神様との対話」とか「望んだチート能力を得る」なんて不思議体験はできなかったが、それでも俺が願ったのだから。
きっと、きっと何らかのチート能力があるに違いない。
そしたら今度こそ俺の人生を俺の思うままに歩んでみたい。
前世の俺は甘かった。
現状に甘んじて諦めていた結果が他殺だなんて、思ってもなかった。
ならば。
強く。
誰よりも。
俺の身体も精神も害されないように。
俺の自由が簒奪されないように。
まだ幼児の俺は適度にガキらしく振る舞いながら、まずは現状の把握に努めることにした。
まず、俺の今世の名前はオセロ・シルバー・ワイナイトというらしい。
オセロという名前自体が前世でもネタとしか思えないふざけた名前だったが、どういう理屈で引き継がれたのだろうか。
まさかこれが転生特典なんてふざけたことは言わないよな?
この世界では貴族は色に関するミドルネームを王から賜るらしく、シルバーである我が実家は国内有数の貴族らしい。
ありがちだが解りやすくていい設定だ。
しかし結構な伝統のある(自称)名家らしいが、数代前の当主が不敬を働いたのかなんなのか、王都から離れた領地に追いやられ現在必死で王国貴族諸侯に媚びを売っている。
俺は上に3人の兄と2人の姉、下に1人の弟がいる。
これは権力争いに巻き込まれる気配しかない。
前世の俺なら、ドロドロの貴族社会で頭角を現すのも面白いと思えただろうが、一度殺されてみると考えも変わる。
自由に振る舞うなら、なるべく生命の危機のないところがいい。
今後の展望を考えるにしてもこの世界の資料が欲しいところだが、まさか3歳児の俺が書庫で歴史書を読むわけにもいかない。
言葉は覚えたからそろそろ読み書きの練習もしたいと思うのだが。
現実的に考えて、幼少期から神童ともてはやされるのはよろしくない。
ただでさえ四男なのだ。
暗殺でも企てられたらたまらない。
幼児では反撃できず、ただ殺されるしかない。
幼児は幼児らしく暇を持て余すしかない。
そんな俺がワクワクとハラハラの中間の気持ちで待ちわびたのが、4歳の誕生日に行われる魔力適正検査だ。
異世界モノだと定番のイベントだろう。
ここで落ちこぼれか天才の烙印を押されるのがチート主人公の定番。
望んで転生したのだから、きっと最終的に最強の魔術師になれるはず。
属性とやらは多ければ多いほどいいし、強ければ強いほどいい。
この世界では魔力量と属性適正がそのまま出世にも関わる重要な要素だ。
魔力さえ認められれば、きっと護衛も厚くなる。
まずは、自力で行動できる少年期までの安全を確保したい。
不安要素はやはりテンプレートである落ちこぼれからの覚醒フラグだ。
一度落ちこぼれと認められたら四男である俺の価値などいかほどか。
なるべくなら安全に平和に餓えることなく生きたい。
現状、俺の兄姉で一番魔力が高いのが次男、次いで次女、長男、三男、長女と並んでいる。
魔力量は年齢と共に増加するが、その伸び幅は一定であることが多く、まずは4歳時点での才能を見るものだ。
逆に属性適正は生まれもった才能であり、生涯変わることはないとされている。
きっと魔力量は増えると信じているから。
かみさま、おれにさいきょうのぞくせいをください。
「なんと!オセロ様は、大変素晴らしい魔力をお持ちだ!これは、4歳時点での魔力量では国で1,2を争うほどの才能だ」
「さすが、わしとラクレアの息子だ。それで、属性は?」
「属性は……属性は、治癒、のみですな」
「――――実に残念だ、ラクレアに荷物を纏めるよう伝えろ。3日以内だ」
「はっ」
――――なんで?
これは、どういうこと?




