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プロローグ

現世で死んで異世界転生もしくは異世界トリップといえば、現代のケータイ小説世代にとって最高の憧れだろう。


チート能力と現代知識をフル活用し、低能俺TUEEE主人公が悪者設定されたキャラクターをばっさばっさ切り捨てる。

席の近い友人キャラは主人公に次ぐチート性能で人格者、男女問わず主人公シンパ。

国の要職に就けば浅学垂れ流しの現代知識で賢者の如く振る舞い。

貴族を悪として断罪し、口当たりのいい正義感を振りかざして後先考えず爵位剥奪。


たとえば、落ちこぼれ貴族からの覚醒。

たとえば、正体不明のギルドSランク。

たとえば、オンラインゲーム世界の覇者ギルド。


記号化されたくっだんねー単純最強ヒーロー。

ばからしくって、ありえなくって、だけど最高に爽快。





俺のことを簡単に記号化してみるなら、知的クール、とかになるのかね。

普段から冷めた言動とサボり気味の表情筋とか、休み時間には常にカバーをかけた文庫本を読んでいるとか、特別仲のいい友人はいないとか。

だからといって根暗でもボッチでもなく、集団の中ではそこそこの発言力と存在感を持っている。

成績も良く、運動神経も容姿も人並み。

口数は多くないが勝手に認識されている『あいつはクールキャラ』という記号によって、何となく平穏に学生生活を満喫していた。


そんな俺の趣味が、まさかライトノベルとかケータイ小説で異世界俺TUEEE系小説を読み漁ることだなんて学校の奴らは想像もしてないに違いない。


特に好みなのは、倫理観のズレたダークヒーローのような主人公だ。

思うが儘に振る舞い自分の欲望を最優先し、その道中で他人を殺してみたり救ってみたり。

完全な世界征服系悪者主人公でも偽悪主人公でも、善人おバカ主人公よりも共感できてしまう。

人を殺してはいけません権力は悪ですみんなで楽しく世界平和!

そんな理想論者を捻り潰す自己中主人公なんて鳥肌ものだ。

俺にはできないことを簡単にやってしまう。

最高に爽快な作り話。



だってこの国は窮屈だ。

成人しなければ、与えられた居場所以外を選択する権利すらない。

ただでさえ学校しか居場所はないので、勝手に与えられたキャラクターを守るしか、クラスという集団に属することができない。


もしも俺が異世界トリップしたなら、とか。

ケータイ小説の読者なら考えたことはあるだろう?

いつの世も人が求めるものは自由と怠惰。

理想を実現する精神力と強さ。

思うままに振る舞ってみたい。

なんてさ、益体のない妄想。

今だって、平和な日本の小さいクラスの中ですら思うままに振る舞えないのにな。

憧れる分には自由じゃん。







だからさ、殺される瞬間には、かみさまおねがいって。

来世はファンタジー世界で自由に生きたいって。

願っちゃっても仕方ないだろ?



まさか叶うなんて思ってなかったけどさ。

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