八将の乱③処分
修正版です。
深夜。
親衛隊の一部が特務隊の指揮下に置かれ、彼らはそれぞれの屋敷を急襲した。
黒く武装した彼らを乗せた何台もの高機動車が、静かに邸宅の近くに停まった。
そこからばらばらと降り、足音も微かに、素早い動きで邸宅を囲んでいく。
合図を送ったところで、正面と裏口から突入。
何も知らされていない寝静まった邸内を瞬く間に制圧し、将軍を初め、邸内にいた全ての人間が射殺された。
全てが闇の中、大きな騒ぎになることもなく、迅速に行われた。
「なかなか思い切った処分をなさいましたね」
太政大臣が声をかけてきた。
謀反となれば、兵部省だけの問題ではなくなってくる。
空席となった軍団長と将校たちの人選は兵部卿に任せてあるので、そのうち報告がくるだろう。
「小さな波紋でも、いずれは大きいものになる。今のうちに粛清せねば、規律が緩み続けるだろう。大公軍はまだ怖れを知らぬ。軍規を乱す者はどのような末路をたどるのか……。これで愚かしい行動に出る者も減ろう」
「はい。大公軍は未だ負けを知りませんから。勝利に酔いすぎたのかもしれません。独力で得た勝利ではないというのに」
全ては軍内部の問題として、処理された。
何も知らずに出勤してきた他の者たちは、事実を知らされて震え上がったという。
「兵部卿の統率能力に対して、疑問視する声もあがっておりますが」
「どうせ親衛隊あたりから出たのだろう」
「ご推察通りです」
「やつらも少々勘違いしているな。親衛隊はあくまで部隊だ。兵部省の上位機関ではない。彼らにそんなことを言う権限などない」
「はい。どうも競争意識が強すぎるようですね」
「面倒なことになる前に、お前の方で手を打っておけ」
「は」
戦争における軍隊は、オレにとって駒だ。
だが、人というのは本来、駒のように動くものではない。
それぞれが好き勝手に夢想し、勝手に妬み、怯え、裏切る。
そういう性質を持っていると分かった上で、人を感情を持たない駒の如く統率していかなくてはならない。
今の段階で兵部卿を他の者に変えるつもりはない。
しかし、次に同じようなことが起これば考え直さなければならないだろう。
兵部卿もそれは感じているはず。
大臣といえど、不変的な地位など、どこにもないのだ――このオレも含めて。
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