布石
修正版です。
競技会も終わり、国内は落ち着きを取り戻し始めていた。
国を手中におさめたオレは、次々と新たな改革に乗り出した。
まず、金融政策として、大公銀行をたちあげた。
この世界には個人の高利貸ようなものはあったが、大規模な銀行と呼べる 仕組みのものは存在せず、商業が発展しにくかった。
元手となる金が少ないからだ。
そこで、しっかりとした構想がある者には、大公銀行から金を貸し出す制度を作った。
すると、瞬く間に国内だけでなく、国外にも大公銀行から金を借りた商店、小売店が爆発的に増えたのだった。
金を貸し出す際には、低金利である条件として、定期的に地域の情報も提供するように義務付けた。
これで各地の詳細な情報が、続々と手に入る。
小さな小売店だけでなく、大規模な財閥にもまとまった金額を貸し出すようにしたため、議員たちをはじめとした有力な商人たちは益々大きな商売に手を出せるようになり、国内外でも類をみないほどの大きな組織となった。
大きくなればなるほど、銀行の存在がなければ商売が立ち行かなくなってゆく。
こうして、大公銀行は商業全体の根幹にまで根を張り続け、議員たちをはじめとした商売人たちまでもが、銀行を通じて益々オレに逆らえなくなってゆくのだ。
製造業においても、大きな梃入れを行った。
以前であれば、物作りにおいて、一人の職人が最初から最後まで手掛けるのが当たり前だった。
しかし、それでは時間がかかりすぎるし、全ての過程における技術も必要になる。
それを母国でのやり方に倣い、生産、組立、仕上げ等、各工程毎に分かれて作業を行うようにした。
そのようなやり方を工廠だけでなく、工芸品や繊維製品を製作する過程にもこれを導入した。
初めは戸惑いの声も上がったようだが、雇用が増えたことに加え、やり方も慣れてくると、女性でも簡単な作業で安定した収入が得られるので、人気の職業になった。
作り上げられた製品は、品質も良く、品物の質自体も安定しているため、高級品として国外でも多く流通するようになった。
もう一つ。
初期の頃から大公領内で行っていた学校制度をさらに発展させ、式部省主導の下、国内全土で義務教育制度を導入した。
もはや無料ではなく、所得に応じた金額を支払うようにさせたが、かつての身分などは関係なく通える。
最初は読み書き、算術、礼儀作法などから始まり、年齢が高くなると、宣伝卿が作り上げたオレを祭り上げるための新たな歴史、精神教育なども教え込んだ。
新たな歴史を教え込んでいくことで、子供だけでなく、子供の親たちまでもが洗脳されてゆくのだ。
また軍隊教練も初歩的なものだが、一部導入された。
こうやって育った子供たちが、ゆくゆくはオレを支える強力な軍人として育つだろう。
こうしてオレは、着々と強力な軍隊を支えるための土台を作っていったのだった。




