鉄の道
修正版です。
王都がようやく落ち着きを見せ始めるころ、オレは正式に拠点を王宮へと移した。
戦闘後すぐに見られた、慌ただしく街道を行きかう貴族たちの馬車の姿も今はない。
新たに登用しなおした役人たちも、大公領から引き抜いた役人たちの元、新たな制度に下がって立ち働いている。
相変わらずの人手不足ではあるが、それも今後は長くは続かないだろう。
大公領にいた大臣たちもすべて、王都へ移り住んだ。
「お呼びでしょうか」
執務室に入ってきたのは兵部卿だ。
彼を呼んだのは、今後新たに進める事業について話すためだった。
「兵士の様子はどうだ」
「は。大公軍におきましては、復帰できない者もおりますが、概ね通常通り動かせる状態にあります。国王軍の一部も編成に組み込み、今訓練中です」
「なるほど。……ところで、兵部卿。これから王都を拠点とする場合、国内だけでも兵を動かすのに日数がかかる」
突然の話題転換に、兵部卿は驚きを隠さなかった。
「……そうですな。馬があるとはいえ、徒歩の者も多いですから」
何が言いたいのか分からず、兵部卿はオレの顔を窺うように見ている。
「鉄道を敷こうと思う」
オレは一呼吸おいて、そう言った。
鉄道については、ずっと考えていたことだ。
この世界にはまだ存在しないが、異能の技術者を使って設計図を作らせる。
彼にはもう既に指示を出してあるが、協議の結果、蒸気機関車ならば今の技術で作ることが可能であろうということになった。
「鉄道……ですか。この国……この世界にはまだ存在しないものを新たに実現させるのですな」
ふうむと兵部卿はしばらく思案するそぶりを見せた。
「技術者とはもう話を進めている。まずは国内を網羅させる。そして、ゆくゆくは国外にも友好の証として、鉄道を通すつもりだ」
「なるほど……。表向きは、交通網の発展として使用し、有事の際には、兵士を大量に移動させる手段にするわけですな」
「そういうことだ。兵士の移動手段としての目的が第一だが、鉄道の整備によって国内の物流も大きく変わるだろう」
「劇的に変化するでしょうね」
「鉄道網の普請にあたっては、作業は造兵司にさせる。必要ならば、他の省とも連携して作業を進めよ」
「わかりました。……さっそくそのように致します」
国が動いてゆく。
この国にはない文明を知っているからこそ、できることがたくさんある。
本来ならば、この世界で少しずつ開発されていくであろうことを、オレは次々と異能者を活用して導入した。
この世界をオレが変えつつある……そう言っても過言ではないだろう。
この躍るような気持ちをどう表現したらいいのか。
オレはまだ前へ進む手を休めるつもりはない。
こんな楽しいことを、どうしてやめられようか。




