併呑
修正版です。
敵兵の規模、およそ五万強。
銃器の類はなく、主力部隊は騎馬隊。
大公領と国境に隣接する大国は、武断で知られる王の下、兵士の士気も高いという。
だが。
こちらも持ってこられるだけ全ての大型兵器を、異空間から回収してくることに成功した。
兵力差はさほど問題にならないであろう。
大事なのは、いかに効率よく拠点を叩くか。
どの兵器をどこに布陣するか。
本来ならば、正確な拠点の位置や内部の様子の調査にも時間がかかるところだが、オレの異能の力があれば、それもさほど難しいことではない。
実際に送った斥候の情報と、自分が直接異空間を広げて見たものとを照らし合わせ、詳細な地図を作製した。
勝ち戦だが、無駄な損害は出したくない。
作戦は明け方から決行された。
戦車が一列に並び、騎馬隊を迎え撃つ。
戦車の弾を辛うじて逃れてきた敵兵を、後方に控える歩兵が小銃でバタバタと倒していく。
自走砲は次々と砲弾を放ち、城壁を破壊していく。
圧倒的な火気の数に、精鋭を誇った敵の騎馬隊も見る影もなかった。
本来持つべき兵器を配備された特科隊や戦車部隊などは、今回の戦闘から、ようやく本来の戦闘力を発揮できるようになった。
勝利は見えているが、前のめりにならないよう歩兵を自制させながら、一気に砦を落とす。
「圧勝だな」
私のつぶやきに補佐官が頷く。
小さく開けられた異空間の”窓”に映る補佐官の顔は、冷静な中にも余裕を感じさせるものがあった。
「当然の結果ですね。少し手加減しても良かったくらいです」
「手加減して無駄な損害を出したくないからな。圧倒的な戦闘力を見せつければ、残りの小国もそのうち手のひらを返すだろう」
「仰る通りです」
「それよりも重要なのは、そのあとの処理だ」
「段取りは整えてあります。閣下の肝いりの大臣方は個性的ですが、優秀ですから」
これまで小国を吸収するたびに、戦後処理を行ってきたが、今度はかなり広大な国家だ。
やり方は過去にやってきたことの踏襲ではあるが、規模が大きいだけに今までのようにすんなりとはいかないだろう。
「頼んだぞ」
オレの考えを見越したように補佐官は目を細めた。
「お任せください」
それからわずか2週間足らずで、大国の首都は陥落した。
当初の予想通り、しぶとく抵抗する構えを見せていた小国もすべて、軍門に下った。
これで、地理的には王国に匹敵するだけの領地になった。
だが、地理的に同じ条件になっただけでは意味がない。
今ある大公領内全ての制度を統一し、経済的にも、軍事的にも安定した領土を目指していかなければならない。
大公領全土で富国強兵を推し進めるのだ。
まだ王の首に手は届かないが、ようやく首根っこが見えた……そんなところだろうか。




