分岐点
修正版です。
そろそろ頃合いだな。
オレは開いていた異空間の”窓”を閉じ、思案した。
隣接する北方の大国は、急速に小国を平らげていくこの大公領の存在に、脅威を覚えつつある。
王国の最果て、それほど栄えてもいなかった国境都市。
それが今までにないような軍隊によって、破竹の勢いで小国を次々とその支配下においている。
自ら進んで軍門に下ってくる小国もあり、今抵抗している小国は、かつての3割ほどにまでなっている。
戦わずして白旗を掲げた国には、領土こそ没収するが、新しい地位と役割を与えた。
もはや大公領の軍隊は、親衛隊の規模をはるかに上回る数にまでになり、今でも増え続けている志願兵の訓練と、この国で新たに生産した武器の普及も当初の想定以上に進んでいる。
親衛隊が各地で奮戦する間、オレはそれぞれの部署から報告を受けて指示を飛ばすことで忙しかったが、異能の力をさらに研ぎ澄ますことにもかなりの時間を割いていた。
こちらに本国部隊を連れてきたとき、オレが広げることが可能な異空間の大きさの限界から、大量の砲や戦車はあきらめざるを得なかった。
しかし、完全にあきらめたわけではなかった。
いずれこの国の王軍とも戦う日が来る。
そのためには兵士だけではなく、やはり元の世界の戦場に残してきた、強力な兵器は手に入れておきたかった。
だが、思ったより早くそれが実現できそうだ。
本国に残してきた武器の位置は特定できている。
戦車や砲を運ぶためには、かなり大きな空間を開かなければならない。
既にそれだけの空間を開くことはできたが、あとはどれくらい持続させることができるか……。
だが。
大国を相手にするのに、それがあれば、戦闘をかなり有利に進められる。
オレの目はもはや小国を眼中に入れていなかった。
北方の大国は「降伏するなら今だぞ」と言わんばかりに、戦争の準備を大々的に進めている。
大国は王都を直接敵に回したくないので、けん制しているのだ。
大公領に攻め入れば、王都から王軍がやってくる……少なくとも大国はそう考えている。
だから、早い段階でこちらに攻め込んでくることはないだろう。
しかし時間の猶予はあまりない。
大国が戦争の準備を整えてしまう前に、叩いておきたいからだ。
大国を叩いてしまえば、おのずと残った小国も従わざるを得なくなるだろう。
そうなれば、一気に勢力が拡大する。
これは一つの大きな分岐点になるだろう。




