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殺人ダウト

黒と白の境界線を考えるんだとしたら

何を基準として考えれば良いんでしょうね

気分としては、最悪の一言につきるだろう。

非日常なんてものに憧れてはいたが、こんな形で脱するという

展開を、望んではいなかった。と思う。

 しかし、その気持ち悪さが落ち着き、冷静さを取り戻すにつれ、最悪な

気分や後悔より――この後、どうやって隠そう。という気持ちが勝っていた。

 幸い(というにはあまりにも状況が状況だが)ここは路地の奥で、恐らく

このことに気がついている人間はいないだろう。

問題は、死体これをどうするか、という事だった。

このまま放置すれば、すぐにばれてしまう。しかし、この手のものを

処理しうる手段など、一般人の自分が持っているわけも無い。

 今みると、凄惨な死に様であった。

いや、そもそも自分がやったのだから、そういうのがどうかとは思うのだが

これは随分だと思ってしまう。一人は原型を留めていないし、その隣のは

目玉がない。一人は指が殆どないし、一人は今も首からかなりの量の

出血がある。凄惨という言葉が、なにより似合った光景だった。

自分に、こんな事が出来るはずは無かったのに。

 靴についた血を、軽く地面にこすり付けて落とす。が、あまり取れず

やはりシミが残ってしまう。……この靴は早めに捨てたほうが良いだろう。

大体のドラマで、血のついた服が証拠として見つかる、という場面があった

が、何故か服に血は一滴もついていないようだった。

(何でだ……?)

 不思議に思うが分かるはずも無い。

正直に言ってしまえば、自分は殺した時のことを、殆ど覚えていなかった。

殺されかけ、とっさに出した手がナイフを奪い、相手の目に突きつけていた。

覚えているのはそこまでで、気がつけば回りは血の海。その真ん中に

呆然と立ち尽くしていた。

手には、しっかりと殺した時の感覚を残して。

 色々と思考をめぐらすが、何にも行き着かなかった。

「あぁー。俺も終わりかねぇ」

返答は、当然の如くなかった。

「……でも、俺悪くなくね?」

カタカタと

「そうそう、俺じゃない。俺じゃない」

自分の中の常識が

「君達が悪いんじゃん」

壊れていく

「この俺に」

パズルのピースのように

「得物なんざ、向けちまうから」

剥がれていく

「その通ぉぉぉぉぉぉり!!」

今をあきらめかけていた自分の鼓膜を、知らない声が

強く叩いた。とにかくでかかった。

「!!?」

見られた。と、とっさにナイフを構えるがそこに人の影はない。

「へー、ずいぶんと派手にやったんだねぇ」

その気の抜けた声が、自分の背後から聞こえる。

どうやら、この状況を確認し笑っているようだった。

「誰だ?」

あえて振り向かずに、余裕たっぷりに言ってみせる。

こんな状況で、平然と笑っていられる奴が、一般人な訳が

ないだろう。

「ねえ君」

質問は無視かい、と突っ込みたかったが

さすがにそんな余裕はなかった。

静かに後ろを振り向くと、少年のかぶっている

フードの奥から、紅い色がこぼれた。

「ちょっと俺様と世界を壊してちゃあ見ませんか?」

確かな言葉と、その紅色に魅せられ――


ああ。と、妙に冴えた頭で



もう戻れないと知った










ノロノロと連載

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