出発
作者の実話に基づく恋愛ストーリーです。
あなたはどこにもいない…。バスから見おくるあなたの手を振るすがたが小さくなっていく。
最後のキス。突然何も考えずにあなたにしがみついたっけ。でも、本当に短かった時間。あの日なんて来ないって信じたかった。いつも泣いてて、あなたと離れるなんて考えれなかったよ。
四月の桜が咲き誇る早朝五時。重いスーツケースを抱え、バス亭へ向かう。
いつも通ってた道がいつもと違う。次第に朝日が昇ってく。あたりには、眠たそうな目をしたオジサンが犬を連れて散歩している。
すれ違い様に、おおきな荷物をじっと見ってオジサンはぺっと痰を吐く。
まだ、私も眠くて足下がふらっとする。バス亭まであと五分かなっ。息もまだ白い。
階段がさらに私の体力を奪おうと待ち伏せか。いやになってくる。
でも、まだこんなの始まったばかりじゃないか。留学は今日から正確には明日イギリスに着いてから、約4ヵ月。
一段一段掛け上がると高速バスのハイウェイが見えて来た。朝なのに車が忙しく走っていた。
バス亭に目を向けるとだれかの姿が見えた。
え。信じられなかった。彼がいるなんて。
そう。
そこにいたのは、あの昨日キスを交わししばらく会えないねっと、抱き締めあった彼じゃなくて…
今朝出会った痰のオジサンが犬と待っていた。
まもなくするとバスが来て、荷物を乗せ階段を上がる。
後ろを振り返ると、私の名前がどこかから聞こえた。
しかし、相変わらず風景は変わらない。あのオジサンはまだこちらを見ている。あの犬なんてどこを見ているかわからない。
もう一度、
ミキ…と
はぁい??
紛れもなく、力也の声。最後に、会いたい!だけどどこだろう??
つづく。