「多数派に属する」「権威者の発言に同調する」ことは正しいか?
人間とは、非常にうつろいやすい生き物である。我々は常に自己判断を迫られるが、あなたはその自己判断を、何をもとに下しているだろうか?
価値観やものの考え方、といったものは、生まれて直後にはまっさらな状態である。まあ、
DNAや体質によってある程度は偏りがあるかもしれないが、私は基本的には、まっさらな
白紙状態であると考える、だから極悪人の子供であろうと、きちんとした教育者のもとで、
きちんとした考え方を教えれば、ちゃんとした人間になると思うし、逆に、天皇陛下の子供であっても、極悪人に育て上げられれば、そういった考え方に偏ってしまうと思うのだ。
つまり、私は、思想というものはDNAレベルで組み込まれているとは考えていないわけです。
さて、我々はそういった、まっさらな白紙の状態から、さまざまに色づけされていく、そしてある程度の年数が経過していき、個性、性格、価値観、そういったものが、その人のキャラクターとして完成していくわけだ。
その中で、我々が判断する基準は培われていくわけだが、その判断に迷った時、あなたはどうするだろうか?一つに「多数派に属する」というのがあるのではないだろうか?多数決で物事を決めることは、ありとあらゆる場面であると思う。確かに多数派に属するのは安心するだろう。しかし、こういった事例があるのをご存じだろうか?ある地下にある映画館で
急に地震が起こった。電気が消えてパニックになり、観客は脱出を試みた。ここである1人の観客が、2つある非常口のうち、近くの非常口にかけこんだ。ここで奇妙な現象が起こる。非常口が2つあるにも関わらず、皆、その最初の1人が駆け込んだ非常口に殺到したのだ。その結果、もう一方の非常口はすいているにも関わらず、最初の1人が駆け込んだ非常口がぎゅうぎゅうの状態になり、多くの人間が脱出できずに死亡したのだ。空いている方から逃げれば助かったのに。同じような事例で、トンネル内でバスが地震により事故にあい、
右か左か逃げ分かれた。煙にまかれてしまい、どちらに逃げたらよいかわからない状況で、多数派は全員焼け死んでしまい、少数派の方が生き残ったのだ。
判断を多数派にゆだねても正しい結果が得られるとは考えないように、自分の頭で判断することが大事だ。
もうひとつには「権威者の発言に同調する」がある。つまりこれは立派な人が言ってることは正しい。
という判断基準である。しかし、これもまた多くの人々が思考停止してしまっているケースが多い。これは実例をもとにお話ししよう。私があるグループディスカッションを行った時の話である。私以外のメンバーは大卒がほとんどでしかも半数が東大やら早稲田や慶応やら、非常に偏差値が高いメンバーである。私自身は高卒で、しかもその高校は偏差値は非常に低い。
これらのメンバーで「砂漠で遭難をした時いかに行動すべきか」というテーマでディスカッションが行われた。そこでは、何が必要で何が必要ではないか、助けを待つべきか、それとも歩いて、人を探すべきか、などが議論されたのだが、私は、助けを待ち、体力を温存することが大事だと述べたが、他の方々は、人を探すという判断をした。また、持ち物の中に
塩の塊があったのだが、私はそれを不要であると判断したのだが、他の方々は、塩は絶対に必要であると判断し、もっていくという結論を出した。これはグループディスカッションであるので、正しい答えを導き出すことよりも、協調性を問う問題なのだ、しかしこの話にはちゃんと正しい答えが用意してあって、結論を言うと、私の出した答えが正しかったのだ。
しかし、誰も私の意見には同調しなかった。つまり高卒のしかも名も知れぬ高校出の私の
意見と、東大出のエリートの意見、どちらを聞くかは、もうあらかじめ皆さんの中で決まっていたのではなかろうか?私は、「学力が高い=頭がいい」とは思ってはいない。学力が高いとは、「記憶力が高い」というだけの話である。本当に頭がいい人というのは、考える力があるかどうかではないのか?私は数学の授業でも先に「公式」を丸暗記して答えを出すことは嫌った。我流でもなんでもいいから、自分の頭で考えて、答えを導き出すように試行錯誤した。そのあとで、公式をつかう。考える力はそうやって養われていくものではないか。
砂漠で塩が必要だと答えた彼らも、おそらくどこかでそういった、知識を聞きかじっていたのだろう、しかし、私は直感的に、塩はいらないと思った、今一番必要なものは水であり塩ではない、確かに長期的には塩分が必要なのだろうが、この状況では塩分を必要とする段階の前にその前に死んでしまうのだ。
今回のケースでは、私一人だけが生き残ることになる。多数決で決めたことが正しい判断であると盲目的に考えてはいけない。だからもし、自分で考えて「これは違うんじゃないかな?」と思ったら、「多数派に属する」「権威者の発言に同調する」これらを安易に選択しないようにしたほうがいい。