表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋人は、あまえた(元)優等生  作者: 七賀ごふん
幼馴染の成果

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/27

#4



うわ──────。

恥ずかしい。恥ずかしくて五回は死ねる。


顔から火が出そうだ。また半泣きになってると、月仁は身を乗り出し、俺の頭を撫でた。

「お前はほんっ……とに可愛いな」

「だって……! 好きなんだからしょうがないだろっ」

「うんうん。しょうがない」

月仁は笑いながら俺の頬を撫でる。若干からかわれてる気がしてムッとしたけど、それに気付いたのか彼は真剣な表情になった。

「俺なんて、自分をコントロールすることに毎日必死だからな」

「コントロール?」

「可愛がり過ぎて嫌われるかもしれないから。二十四時間我慢してる」

それは俺以上にやばいかもしれない。

改めて、彼もものすごい葛藤をしてることに驚く。

でも最終的に痛感したのは……俺も彼も、もっと触れ合っていたい願望があるということ。


「好き過ぎるのも地獄だな。離れていたときの方が地獄なのにさ。……触れる距離にいるのに触っちゃ駄目、って罰ゲームみたい」

「うん。……わかる」


互いに見つめ合い、吹き出した。

想いは通じてるし、代え難い関係も手に入れたけど、全てが叶ったわけじゃない。まだまだ限られた選択の中から未来を見つけ、選び取る必要がある。

それでも月仁と一緒に考えられるなら、こんなに嬉しいことはない。


月仁といたら大勢に非難されて、彼にも迷惑をかけてしまうと思っていた。

でもそんなのは痛い勘違いで、周りの優しさを無視した思い込みだった。


驚きつつも見守ってくれる周りに感謝して、今日も“俺らしく”生きたい。

七年前の俺が見たらびっくりするだろうな。また月仁に甘えて、且つ奔放に過ごしていたら。



「月仁君、お疲れ様。もう上がって、深白と夜ご飯食べな」

「お疲れ様です。あ、でもご飯は大丈夫ですよ」


両親の店でバイトを始めた月仁も、だいぶ慣れたみたいだ。夕方からとは言え忙しい時間帯なので、二人はとても助かったと喜んでいる。

俺も嬉しくて、以前に増して店を手伝うようになった。

「遠慮しないで! 深白ー、これ裏に持って行って」

「おっけ。月仁、俺の部屋で食べようぜ」

「でも、いつも悪い」

「いやいや、作ったもん食べない方が駄目! ってことで、ほら!」

丼が乗ったお盆を片手に、もう片方の手を月仁に差し出す。

彼は少し微笑み、俺の手をとり、お盆にも手を添えた。

厨房に向き直り、母に声を掛ける。


「そだな。……ありがとうございます、頂きます」

「はーい」


季節はあっという間に変わっていく。

俺達の毎日も、同じのようで確実に変わっていた。

月仁は希望の大学を決めたし、俺も迷ったものの進学し、家を出ることに決めた。

やりたいことが見つかれば良いし、もし見つからなかったとしても、無駄にはしたくない。両親は俺に店を継いでほしいと思ってなさそうだし……とりあえず、行けるところまで行ってみることにした。


どこへ辿り着こうと、どんな景色を見ようと……月仁と共感できるように。


「ご馳走様でした」

「ご馳走さま〜。はー、幸せ」


空になった丼を端によけて、ベッドに腰をおろす。

月仁は口を拭いて、楽しそうに笑った。

「腹いっぱいになったら嬉しくなるの、お前の長所だよ」

「そりゃそう。腹減ってると全てに絶望する」

「はは。じゃあ常にお前の腹満たしとかないとな」

月仁は立ち上がり、ゆっくりと歩いてくる。体の向きを変え、よっとベッドに腰を下ろした。

今じゃ当たり前に馴染んだこの景色も、昔なら夢と同じだった。


「……腹だけじゃなくて、こっちも満たしてほしい」


だから俺は、何でもないこの距離と時間に脳を焼かれてるんだ。

月仁の掌を自身の胸に押し当てる。

上目遣いで見つめると、彼は困ったように笑った。


「お前って、無自覚でひとを狂わすよな」


呆れなのか何なのか、ため息もついている。

台詞を吐いたことは反省するけど、仕方ない。


月仁が好き過ぎて、俺はとっくにおかしくなってるんだから。


「ぶっちゃけ月仁の影響もでかい」

「そうかもな。じゃ、責任とるよ」


もう片方の手が触れ、繋がる。

心臓の音まで聞こえてしまいそうな距離で、彼は囁いた。


「卒業したら一緒に住もう」

「月仁……」


不意打ちにも程がある。もちろん! と叫びたかったけど、どこか手放しで喜べない自分もいた。


「え、と……冗談じゃないよな?」

「冗談でこんなこと言うか」


念の為確認すると、月仁は俺を膝に乗せて見上げた。

「昔みたいに離れたこと、まだ不安なんだろ? だからもう離れられない関係にする」

彼は悪戯っぽく笑い、俺の手を取る。


「どう? この提案」

「……イイ」


というか、最高。

驚きと喜びで呆然としてしまったが、遅ればせながら現実感が戻ってきた。


動かないけどまばたきだけは繰り返す俺を、月仁は笑いながら抱き締める。


「ありがとっ。大好きだよ」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ