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恋人は、あまえた(元)優等生  作者: 七賀ごふん
幼馴染の成果

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22/27

#2



「あれって貴島君?」

「誰抱えてんのかな?」

「えっ……川音君じゃん!」


やっっっばい。

それはもう、史上最高に。この学校の伝説になりそうなほど、今の俺は注目されている。

体育館に繋がる外廊下を歩いて、校舎に移動する。月仁は俺を抱え、平然と真ん中を歩いた。

放課後なのは不幸中の幸いだけど……誇張ではなく、俺も月仁も学校では知られた存在。だから俺達を見つけた生徒は、皆興味津々で寄ってきた。


「お。貴島、川音のこと捕獲できた?」


現れるやいなや、都波も呆れた様子で腕を組んだ。隣にはクラスの女子達もいる。


「できたみたいだな。でも今度は展開進み過ぎな気が」

「まあまあ、都波君。無事くっついて良かったじゃん」

「最近の二人、ほんと見ててムズムズしてたから良かった〜。スッキリした!」


えっっ。


どう反応するのが正解だろう。

男が男を抱っこして現れたんだから、気持ち悪がるのが自然だろうに。彼らは落ち着き払い、むしろホッとしている。……っていうか、俺と月仁がひっついてんのが当然みたいな空気だ。


よく分からないけど、とにかく誤魔化さないと。


「いやいや……! 俺、外で転んで足挫いちゃってさ。立てなくて困ってたら月仁が運んでくれたん」

「抱っこしようか。って俺が訊いたら、してくれって言ったんだよ」


何て!!?

フリーズした。聞き間違いかと思って見上げたけど、月仁は「な?」と笑顔で覗いていた。


いやいや。な? じゃない!


「えーっ! 川音君、貴島君に甘えてたの?」

「わ〜! かわいい〜!」

「ち、違うよ!」


あらぬ誤解を受け、慌てて手を振る。しかし彼女達の熱は高まる一方で、全く落ち着く気配がない。

あぁ、もう!


「月仁、下ろせっ」

「ん? ……今は大人しくしといた方がいいと思うけど」


月仁はなにか言いつつも屈み、俺を下に下ろした。


散々恥ずかしい姿を見られてしまったが、これでよし。自分の席に足早に向かい、鞄を取りに行った。すると都波が不思議そうに首を傾げて。


「川音、足挫いてないじゃん」

「あれ。じゃホントに貴島君に甘えてたんだ!」

「ほあっ! ちっ違……っ!!」


しまった。ここから逃げ出したい一心で墓穴を掘った。

これじゃ何を言っても苦し紛れの言い訳に聞こえてしまう。


月仁は別次元を見てるけど、絶対笑いを堪えてるし。く……っ。


「もっもう帰る!! また明日!」

「バイバーイ、川音君」


一目散に教室から出ていった川音を見て、都波は吹き出した。


「川音のやつ、やっと素に戻ったって感じ?」

「……かな。じゃあ、俺も帰るよ」


月仁も鞄を取り、ゆっくり歩き出す。しかし立ち止まり、徐に振り返った。


「あいつ、頑張り過ぎて限界きたみたいなんだ。明日から甘やかしまくると思うから、改めて宜しく」

「すげえ宣言だな……」


どこまでも無表情を保ち立ち去る貴島に、取り残された都波と女子一同は顔を見合わせた。


「よく分かんないけど、おめでたい感じか」








断じてわざとではない。

なるようになったというか……成り行き上、というか。


人前で誰かに甘える日が来るなんて、夢にも思わなかった。


「月仁。おは!」

「深白。おはよう」


駅に着いてすぐ、大好きな彼の背中を見つけて声を掛けた。


今では正真正銘、恋人となった元幼馴染、……月仁。


恋人の特別フィルターみたいなものもあるんだろうか。

付き合うようになってまだ一週間だけど、日に日に月仁に惚れていくのが分かる。


かっこいいなんてことは、初めて会った時から知ってるのに。彼の関心を独り占めしてると分かった途端舞い上がるのは、もはや一種の病気だ。

「寝癖ついてる」

「わ。さ、さんきゅ」

手櫛で整えてもらい、学校へ向かう。


やー……眼福を通り越して、目が痛い。

月仁の笑顔とスパダリっぷりで胃がやられる。外でも距離が近いせいか、他校の女子からもやたら視線を感じる。


注目されるのは以前からあったけど、月仁といるともっとあけすけというか、わりと堂々と見られてるんだよな。さっき触られたときも「おぉ〜」みたいな歓声が聞こえたし。


「深白、良い意味できっちりしなくなったな」


月仁はわずかに口端を上げ、俺に振り返った。

彼の言う通り……朝は結構ぎりぎりだし、制服も着崩してる。ややずぼらなぐらいに変化した。


いや、退化か。夜更かしして月仁にモーニングコールしてもらうこともあるもんな。


「何か、力抜いたら一気に駄目駄目になったよ」

「あはは。別に駄目じゃない。今までが気を張りすぎてたんだろ」


校門を潜り、教室へ向かう。その道中も、月仁は俺の頬をついたりしていた。

「俺がいるんだから、それぐらいでいいんだよ」

「……お前は俺を甘やかし過ぎじゃない?」

「仮にそうだとして、何が悪いんだ? 恋人を可愛がるのは普通だろ」

「う。それは……確かに」

反論できない。もごもごしてると、一瞬だけ手を握られた。


「深白。今日もたくさん俺に甘えて」

「ふええ……」




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