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恋人は、あまえた(元)優等生  作者: 七賀ごふん
幼馴染の成果

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21/27

#1




ひそかに懸想した。胸の高鳴りを掻き消すように、月仁は告げる。


「好きだ、深白。友達としてとか、幼馴染としてじゃなく。恋人として、お前の傍にいたい」


触れ合ってる部分が熱い。とけそうだ。


深白は月仁の告白に耳を傾けながら、止まらない涙を拭った。


こんな月仁、初めて見た……。

俺と同じ。今にも泣きそうだ。でも力強くて、優しい声をしている。


月仁もずっと苦しくて、ひとりで堪えてたんだ。


「俺も……俺も、月仁が好き。大好きだよ。もう、絶対離れたくない……!」


何年も想い続けたひと。愛しくて大切なひと。

やっと言えた。


越えちゃいけない壁なのかもしれない。でも、俺達は同じタイミングで乗り越えた。


薄暗い倉庫室で、わずかに射し込む光を頼りに。

膝を立てて、月仁と唇を重ねた。


必死だったせいか、恥ずかしい気持ちはあまりない。嬉しくて、背中に添えられた掌が温かかった。

学校でなんてことしてんだ……とか。

月仁も同性愛者だったんだ……とか。

色んな考えが頭の中でぐるぐる回ったけど、大した力にはならなかった。


想いが通じた。全てはそこに辿り着き、集約される。


子どもみたいに泣きじゃくる俺を、月仁は何も言わずに抱き締めた。


「大丈夫」と、おまじないのように。


そういえば昔も泣く度に月仁に抱き締められ、襟をぬらしていた気がした。彼はもう忘れてそうだけど、今頃思い出して恥ずかしくなる。


何度か深呼吸し、ゆっくりと月仁から離れた(何故か彼の膝に乗せられてるけど)。


「ごめん。一回落ち着くわ」

「別にいいって。つうか俺も……」

「ん?」

「過去最高に荒ぶってる」


また息が当たりそうな距離。秘密を打ち明けるように、月仁は囁いた。


「お前のこと、めちゃくちゃに甘やかしたい」

「おま……っ」


思わず顔を手で隠す。

両想いになれたのは嬉しいけど、月仁はいきなり甘い台詞を吐き過ぎだ。

それともこれが普通なんだろうか。俺はまだ、そういう台詞は言えないのに。


彼は慣れきってるみたいだ。落ち着いてるのはいつものことだとしても、俺に拒絶されるかも、なんて不安は少しもなさそう。


自信がある、とは違うか。

やっぱり、俺を信頼してくれてるんだ。


「深白。したいこと全部言って」

「えっ?」

「いっぱいあるんじゃないのか? 一緒に遊びに行ったり、お揃いのもの買ったり」


頬に手が添えられる。それは温もりを確かめるように、俺の唇をなぞった。


「もっと、触れ合ったりさ」

「う……」


月仁が見せる笑顔は、破壊力が凄まじい。

女子達が虜になるのもよく分かる。ずっと見ていたいほど綺麗なのに、それが自分に向けられてると思ったら……とてもじゃないけど、平静ではいられない。


俺じゃなくても舞い上がるはずだ。だから俺がここでアホな発言をしても仕方ない。ということにしてほしい。


「……したい」


月仁の膝に手をつき、俯きがちに零した。


「毎日一緒に飯食いたいし、どこ行くにも一緒にいたい。ていうか、堂々としたい。お前はずっ…………と前から俺のもんなんだってことを、全校生徒に教えたい」

「ははっ! そりゃいいな」


あまりに暴君っぽいけど、これは不安の裏返しだ。

月仁を独占したい気持ちは確かにある。でも本当は、彼の隣にいられるか分からなくて、怖いだけ。


でもそんな弱さを隠すのはやめだ。全部晒して、伝えよう。これからも彼の傍にいる為に。


「月仁に触れたいし。あっ……甘えたい」


言った。

むちゃくちゃ恥ずかしくて卒倒しそうだ。


キュンとする告白のはずが、半泣きになってる。


「……引いた?」

「引くわけないだろ。甘えろって、俺が言ってるんだから」

「そうだけどさぁ……改めて言うのは勇気いる」


またグスグス鼻をすすりながら言うと、月仁は腹を押さえて笑った。


「確かにそうだな。よく頑張ったよ。偉い」

「何か取ってつけた感じだな」

「本音だって。お前はこうと決めたらやり抜く奴だし。変なところで男気あるからな」


俺のはだけた襟元を直し、前髪を整える。

月仁はふぅと息をつき、満足そうに呟いた。


「でも俺は、素直な深白が大好き」

「ん……」


せっかくの告白場所が倉庫室ってどうなんだろ、と思ってた。でも今はここで本当に良かったと痛感する。


俺は今、相当ニヤけてるはずだから。薄暗い場所で、少しはアホっぽさが薄れてることを願おう。


「わっ!?」


と思ったのも束の間。

入った時と同じく、再び抱き抱えられてしまった。

しかもそのままずんずんと歩き、月仁は外に出た。


「うわ……眩しい」

「ほんと……てか早く下ろせって!」


いきなりどうしたって言うんだ。

月仁の考えが分からず必死に訴えたが、なんと彼はそのまま歩き出した。


「おい、月仁!?」

「大丈夫。行こう? 深白」




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